2007年07月05日

夜露死苦現代詩




都築響一という名前には見覚えがある。
誰だったかな、と思ってネットで調べてみると、
TOKYO STYLEという写真集を出した人だということがわかった。

TOKYO STYLEは、東京で暮らす個人の部屋を撮影したもの。
きれいでもおしゃれでもないの部屋ばかりで、
他人の暮らしを覗き見しているような
不思議な気持ちになる本でした。

さて、その都築響一が、今度は現代詩を語っている。

前書きでこう書く。

「現代詩は行き詰って、難しくすることで生き残ろうとしている。
でもね、芸術は落ちこぼれに救いの手を差し伸べる
命綱だったはずだ。」

そして、子どもたちが夢中になっているエミネムのヒップホップや、
神社に吊り下げられる素人の俳句や、
痴呆老人のつぶやきにこそ、リアルな詩がある、と言う。

いいなあ!こういう感性。

著者は、死刑囚の俳句、エロメディアのコピー、
餓死した老女の日記、
パソコン携帯の変換ミスなどにも「詩」を見出す。

たとえば、暴走族の特攻服。
あれ、いろんな言葉が書かれてますが、
彼らのルールでは「他人のフレーズをパクること」が
最大のタブーなのだそうです。

申し訳ないけど、
漢字の勉強をまじめにしたとは思えない(ごめんなさい)
子どもたちが、懸命に、オリジナルな、
心をつかむ言葉を考えて苦悩してるなんて、
これはすごいことじゃないか。

そうやって考えた「詩」を、刺繍するんだけど、
一文字100円、大きい文字になると1000円という、
けっこうなお金がかかる。

しかも、警察の取り締まりも厳しくて、
刺繍をする業者には指導が入ることもあるのだという。

15やそこらの人生を賭けて必死で考え、
なけなしのお金を握りしめて作った晴れ着も、
卒業式に着て行けば教師に取り押さえられる。

そのくだらなさに、著者は芸術を見出している。

天からもらったこの命
咲いて散るのが我人生
一生一度の青春を
地獄で咲かせて天で散る

シュールだ。

感情を動かす言葉。
崩れる心をつなぎとめる言葉。
それを探すものが詩だとすれば、現代詩は死んではいない。

いいです。この本。
私は好き。




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posted by momo at 08:49| Comment(0) | TrackBack(0) | たまには教養系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月03日

LA QUINTA CAMERA〜5番目の部屋




ポップなイラストのような画面。
白が多くて、洗練された印象を受ける。

舞台はイタリアのとあるアパート。
住人はみんな独身の中年男である。

家主のマッシモ、
街角で歌を歌っているルーカ、
トラックドライバーのアル、
ストライプスーツに口ひげ、個性的なチェレ。

部屋が5つあるので、ひとつあまったその部屋に、
留学生を受け入れている。

デンマーク人のシャルロット、脚本家だというおばあちゃんなど、
留学生も個性豊かで、いろいろな出会いと別れがある。

アパートを舞台に繰り広げられる一話完結の短編マンガ集だ。

ある日、アパートに短期で部屋を借りたいという男がやってくる。
イラストレーター志望。
彼女とともにこの町にやってきて、
二人で住める部屋を探しているのだという。

ルーカはその日も街角で笛を吹いていた。
ルーカを写真に撮りたいという女の子が現れ、二人は仲良くなる。

アパートに帰ったルーカは、
イラストレーター志望の男とも親しくなり、
男はルーカの絵を描き始める。

ルーカは彼女に恋をしている。

でも、彼女はイラストレーターの恋人だった。

あっけない恋の終わりに、ルーカは服を着たままシャワーを浴びる。

彼女とのこと、忘れようとしてるんだろうなあ。
でも、彼女と過ごして楽しい気分になった思い出も、
全部忘れたいのか?と、マッシモが問う。

泣きながら「ううん。」と言うルーカ。

とってもシンプルで、後味のいいお話が納められている。

実はこのオノナツメという漫画家さんのことは、
このメルマガの読者の方にメールで教えてもらいました。

シンプルな絵、独特の優しい世界観に、
人気が集まっている漫画家さんだそうです。

これは、はまる人ははまりそう。
雨降りの午後、
ゆっくりとコーヒーなんか飲みながら読むには最高の本です。



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2007年07月02日

夕凪の街桜の国




この夏、田中麗奈さん主演で
映画化されるコミック

コミックといっても、A5サイズの薄い本です。

原爆をテーマにした本ですが、
終戦の年を描いたお話ではありません。

2部構成。

1部。

原爆の落ちてから10年後の広島
原爆に会った皆美は今も、
生き残ったことへの自責の念を抱えて生きている。

恋をして、幸せになってもいいと思ったそのとき、
原爆による後遺症で死の床につく。

死ぬ間際、原爆を落とした誰かにむかって問う、
「『やった! またひとり殺せた』とちゃんと思うてくれとる?」
という言葉が重い。

2部。

皆美の弟、旭は疎開してたため被爆しなかった。
広島に戻り、そこで知り合った女性と、東京転勤を機に結婚する。

やんちゃな姉七波と、優しい弟凪生という、
二人の子供にも恵まれるが、妻は原爆の後遺症で死亡。

成長した七波は、父旭が
普段と違う行動をとっていることに気がついていた。
電話代が急に高くなり、休日はどこかへ出かけている。

ある日後を追うと、父は長距離バスに乗っていた。

そこで出会った幼馴染の女性と、七波はバスに乗り込む。

バスが着いた先は広島。
そこで父は、いろいろな人を訪ねて歩いていた。

途中で父を見失った七波は、
幼馴染の女性が凪生と結婚をしようとしていたが、
彼女の両親に反対されていることを知る。
凪生の原爆の後遺症を心配してのことだ。

東京に戻り、帰宅途中の電車の中で父に会う七波。
父は、七波に、広島で死んだ姉のことを
知っている人に話をききに行ったのだ、という。

淡々とストーリーが進む。

ラストシーンも、七波が父に、
「凪生、結婚するかもよ」と言うと、
父が、
「そんなことよりお前のほうが心配だ。
おれの合コン仲間紹介してやろうか?」などと、
明るい最後である。

にも関わらず、感動と、とても悲しい感情が残る。

戦争が、原爆が、生き残った人たちの生活にも
影を落としているのがひしひしと伝わってくる。

何がこの人たちの幸せを奪ってしまったんだろう。

しみじみと考えさせられる一冊。
これは読む価値大の一冊です。

絵もきれいなので、男性にも女性にも安心しておすすめできます。




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