芸術家、岡本太郎氏のエッセイ集。
テーマに沿って書かれたものでははく、
いろいろな雑誌などに発表したものを集めた本のようだ。
母のこと、パリへ留学していたときのこと、身辺雑記と、
内容はさまざまである。文章の長さもさまざま。
今日は岡本太郎の母、
岡本かの子氏についてのエッセイを紹介してみようと思う。
岡本かの子は、息子の分析によると童女のような人だったらしい。
純粋、無邪気、幼稚。
世の中を生きていくには困難な性格だったと何度も書かれている。
かの子氏の小説を読んで、
彼女を母性の人だったと言う人が多いそうだが、
実際にはまるで違っていた。
彼女は子供の育て方などまるで知らない人間だったという。
自分が勉強をするために、
子供(岡本太郎)をたんすにひもでくくりつけたりしていたそうだ。
風邪をひいて熱を出しても介抱などせず、
後から太郎がそれを問うと、
「だって病気している太郎なんて、汚くて嫌だわ」
と答えた。
しかし太郎は母を慕っている。
母は母親ではなかった。
だが、一人の女性であり、無邪気な子供であり、
生身の女性と深く関わってきたという思いが
太郎氏にはあるのだという。
そんな母を支えたのは父であった。
「この娘は普通ではないから、結婚するなら一生面倒をみてくれ」
と言われて、かの子氏を嫁に迎えた父。
彼は画家であったが、生活のために漫画を描き始めた。
かの子氏はそれを疎んじ、夫婦の仲は険悪になったこともあった。
だが、父は現実をうまく裁き、
かの子氏が小説家として大成することを支えていたようだ。
父はかの子氏を観音菩薩としてあがめるようにしていた。
普通の親子関係とは違う、芸術家岡本かの子を支え続けた
濃密なつながりが文章から伺える。
かの子氏は後年、
「岡本かの子はパパ(自分の夫)とわたしの間から生まれてきた子よ」
と言っていたそうだ。
岡本太郎氏というと、「
芸術は爆発だ!」という言葉が印象にあるように、
かなり個性的な方のように思える。
しかしさらに、彼の母というのがすごい人物で、
そのことに私は感動を覚える。
まあ、なんとも教養のない言い方で申し訳ないが、
太郎氏が普通に思えるくらい、かの子氏はとにかくすごい。
その母への思慕と冷静な分析。非常に面白かった。
もちろん、後に続くパリでの話、
身辺雑記も独自の感性が見られて楽しめる。
特に食べ物の話は、生き生きとしていて読んでるだけで
お腹が減ってくるくらいでした。
一気に読み上げるという風の本ではないけど、
あっちを開いて、こっちを開いて、
あてのない散歩をしているような気分になれる。
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