著者は、大学卒業後、市役所の福祉課で働いていたことがある。
現在は児童相談所勤務。福祉課在籍中は、
生活保護ケースワーカーの仕事をしていた。
生活保護110番というウェブサイトをボランティアで立ち上げ、
さまざな相談に乗るうちに、
現在の生活保護が抱える問題点に注目するようになる。
ウェブサイト開設から6年、寄せられた相談件数は約3500件。
そのうち半数以上が20代、30代の女性からのものだった。
生活保護を実際に利用しているのはお年寄りが多い。
若い人では母子家庭が大半である。
助けを求めてサイトに相談を寄せる若い人たちは、
いったいどうしているのか。
生活保護を行政の視点から見ると、
それは「補足性のもの」でなけれはならない。
健康で文化的な生活を送るのに足りない生活費を、
生活保護でまかなう。
できる限りの努力を受給者に求めた上で、というのが大原則になる。
そのため、資産がある、働ける、扶養してくれる家族がいる、
などの場合は申請をしても通らない可能性が高い。
相談に来る人に、窓口で厳しく対応し
別の方法を考えさせるやり方を、水際作戦と言う。
かつて、好景気の頃は若い人たちは
この水際作戦の対象となっていた。
しかし現在、実際に働けない若者、
働いても低収入しか望めない若者はいる。
彼らに対して自己責任という言葉が叫ばれるが、
それは適切なのだろうか。
一番の被害者は、若者本人だけではなく、
その子供たちなのである。
生活に追われて保護が受けられない子供、
虐待を受ける子供が出てくる。
彼らは非行に走ったり、必要な教育を受けられなかったりする
可能性がある。
そうすると、治安などの将来的なコストが
またかかってくるわけだ。
そこで著者は、一時的な生活保護によって
若者の生活を立て直し、
将来の社会的コスト増に対応すべきだと主張している。
現在、生活保護の使命が、
「困っている人を助けること」であるために、
困っている人の定義に混乱をきたしている。
であれば、保護して後の自立率を基準として入れてみてはどうか、
という考えだ。
いろいろな若者の実例が出てくるんだけど、なあ。
悲惨だなあ、と思う。
現場にいた方の書かれたものなので、生活保護のしくみ、
役所の対応の仕方など、とてもくわしい。
また、生活保護に依存して生きている、
いわゆる「悪い受給者」のことも書かれている。
だが、問題点をあげるだけではなく、
解決法も提示しているという意味では良い本である。
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