2008年06月26日

サイゴン・タンゴ・カフェ





中山可穂という作家を、
知ってはいたけど手に取ったことがなかった。

読んでみようという気になったのは、
メールをやりとりしている方に教えてもらったからです。

今まで私は、どこか今の小説をバカにしていたところがある。
あざとい感動量産型、映像化を見据えた娯楽型。
楽しいけれど、それなり、それなり、と考えていたのだ。

ああ、違うんだな、と思った。
こういう小説を書いている人はいるんだな、と思った。

人の狂気、恋愛、読んでいて、
現実から乖離しそうになる緻密な文章。

寡作な作家さんだそうですが、
なるほど、こういう文章を書くというのは身を削ることだろうと得心がいく。

タンゴをモチーフにした短編5編。この作品に2年を要したそうだ。
本日は、表題作になっているサイゴン・タンゴ・カフェをご紹介。

雑誌記者の孝子は、取材のためにベトナムのハノイを訪れていた。
仕事を終えて、
しばらくは有給休暇をとって旅を楽しむつもりである。

そのカフェを見つけたのは偶然だった。

ハノイの市街にある、小さなカフェ。
タンゴの曲がかかるその店のオーナーは、
日本人の小説家の女性だった。

彼女、津田穂波はもう20年そこに住んでいるという。
日本からは失踪するようにして消息を経っていたが、
今でもコアなファンを持っている。

孝子の上司も、かつて穂波を担当していたことがあり、
その行方をずっと追い続けていた。

穂波は、美しい恋愛小説を書くが、寡作な作家であった。
長く筆を折っていたが、
ある日、狐塚という女性編集者が彼女の元を訪れる。

穂波は同性愛者であった。そのことは世間に公表してある。
そして狐塚も同じセクシュアリティであることを穂波に告白する。

穂波は狐塚の中に美しい湖があると言い、
狐塚はその湖で穂波を憩わせてあげたい、と言う。

こんな恋愛の表現があるだろうか。

編集者と作家として、人間として、二人は愛しあい、
一つの作品を生み出す。

しかし、その後狐塚は編集者であることをやめ、穂波は失踪する。

狐塚は、編集者としての洋々たる未来を捨てたわけであり、
穂波にしても、
作家としての新境地を拓いたばかりの出来事であった。

さまざまな憶測が飛んだが、二人はこの20年、
ついぞ文学界に姿を見せることはなかった…。

タンゴを踊ることで愛情を交換する。

この作家がどうしてタンゴに惹かれたのかは私にはわからないが、
しかし、恋愛小説にタンゴの味付けというのは、
非常に深いものだとわかった。

まあそれにしてもあれですわ。

文章そのものが美しい作品なので、
本当はこういうあらすじの紹介って野暮なのよね。

ぜひ、本を手にとってご堪能くださいませ。







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posted by momo at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 話題の小説系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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