遅ればせながら、やっと読みました。
表紙には、青と黒を背景に男の横顔が描かれている。
イラストは漫画家のオノナツメ氏。
およそ時代小説らしからぬ装丁の本書、
売れに売れているらしい。
物語は豊臣秀吉の備中高松城攻めから始まる。
秀吉がこの時とった戦法は水攻め。
人工で作った堤を決壊させ、城下を水で沈めるというものだ。
それを見守る石田三成は、その華麗さにいつかは自分も、
との思いを強くする。
その後信長が討たれ、秀吉は天下統一に乗り出す。
八年かけて九州と四国を平定し、
いよいよ北条一族の勢力下にある関東にその手をかけた。
北条氏の配下にある城を押さえよ。
三成には武州忍城平定の命令が下された。
忍城には変わった男がいた。当主成田氏長のいとこ、長親だ。
のぼう様と呼ばれている。でくのぼうの略だ。
この長親、農作業が大好きだ。
百姓の手伝いをしたくてたまらないが、
体ばかり大きくて不器用な長親の手伝いは邪魔なだけ。
子供にまで「お侍、まじめにやれ」といわれる始末だ。
三成の大群が忍城を囲んだとき、
城内では降伏するものと話し合いができていた。
戦っても負けるのだ。
だがしかし、三成の送った使者は無礼千万、
のぼうこと長親は開戦を宣言する。
戦う武士たちの個性がすばらしく、
この作品を生き生きとさせている。
気性が荒いが女子供にめっぽう優しい和泉、
魔人と恐れられるほどの槍の達人丹波、
才走った、しかしどこか愛嬌のある靭負。
そして、男たちに負けないほどの腕を持つ甲斐姫の存在が鮮やか。
最初の攻撃を見事撃退した忍城を、
三成は水攻めにすることにした。
百姓を駆り出して堤を築く三成。忍城は絶体絶命だ。
そう、そこでのぼうこと長親が動くのである。
単身で三成軍の前に進み出て、自ら討たれようとする。
軽んじられながらも愛されている長親。
彼が討たれたら百姓たちは黙ってはいまい。
長親を乗せた小船が、堤によってできた湖を走る。
三成は長親を射よと命じた…。
良質のエンターテイメント。
司馬遼太郎の歴史小説と比較しているレビューがアマゾンにあったが、
そもそもそれは間違いである。
目指すところが違う。
司馬遼太郎もすばらしいが、
現代にはこういう小説の方がマッチしていると私は思う。
壮大な歴史ロマンよりも、
弱者の意地、誇り、一矢報いる様の方が、
共感を寄せやすいのではないか。
スカッとする小説を探している方、そんな方にぜひ。
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