清子、46歳女性。
5年前、夫と二人で乗っていたクルーザーが難破し、
無人島にたどり着いた。
太平洋の孤島。タロイモやバナナの野生種が生い茂り、
餓えからはまぬがれることができた。
その数ヵ月後、日本人の若者23人が島に流されてきた。
与那国島でアルバイトをしていた若者だが、
その過酷な労働条件を嫌って逃げてきたのだという。
そしてさらにその三年後、中国人の集団が流れ着いた。
密航の途中、捨てられた男たちだった。
日本人と中国人は島の東西で住処を分け、
日本人が住む場所をトウキョウ、
中国人が住む場所をホンコンと呼ぶようになった。
そんな状況下で暮らす人間たちの様子が描かれた小説。
これは実際にあった、「アナタハン島事件」を
モチーフにしているという。
孤島に住むたくさんの男とたった一人の女。
アナタハン事件は戦時中に起こったが、この小説は現代劇である。
太平洋の孤島に流された清子やその夫が、コーラが飲みたい、
ジャムの付いたパンが食べたいと願うくだりがある。
さて。
法律の支配がない場所で、女性一人で暮らすなんてどれだけ心細いかと思う。
まして清子の夫はとっくに亡くなっているのである。
しかし清子はこの状況を楽しんでいる。
何しろ、若い男たちが皆、自分をあがめ、奪い合っているのだ。
清子の夫はカスカベという名前の男に殺されたが、
それでも清子はカスカベに求められることがうれしかった。
が、孤島生活が長くなると、
次第に若者たちは清子に関心を示さなくなった。
清子の夫はくじ引きで決められる。
最初は皆が立候補したものだが、
5年目になると候補者が5人しかいなくなった。
男性同士で夫婦生活を送るものも出始め、
いびつな形で孤島の生活は安定を見せ始める。
清子はある日、中国人の集団とともに島を脱出しようとする。
しかし、島の周囲には強い海流があり、失敗してまた島に流された。
裏切り者として周囲からはじき出される清子だが、
その体には子どもが宿っていた。
中国人のリーダーの子かもしれないのだが、
清子は日本人集団の中でその子どもを生もうとする。
そんな中、また島の均衡を破る出来事があった。
フィリピン人の若い女性が流されてきたのだ。
彼女らは、生活力のある中国人集団を頼り、
乗ってきた船で再び脱出を試みる。
双子を産み落とした清子は、決死の覚悟でその船に乗り込んだ。
男女の双子は、男子は住民に奪われ、
女の赤ん坊だけが清子とともに船に乗ることができた…。
とまあ、こんな感じのあらすじなのだけど、
この本の面白いところは、小さい閉鎖された島で
どんどんおかしくなっていく人間模様にある。
少ない集団にとけこめず、
狂気の様相を見せながら一人で暮らす男。
記憶喪失を装った気の弱い男がやがて島民のリーダーになる様。
孤島にありながら文化的な暮らしを楽しもうとする日本人と、
野豚を捕まえる生活力旺盛な中国人。
アマゾンのレビューは芳しくなかったけど、
私はけっこう楽しんで読めました。
清子のしたたかで身勝手な性格が、
それほどいやみには感じませんでした。
娯楽として読めばそれなりに面白い、かな。
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