2008年11月25日

東京島







清子、46歳女性。
5年前、夫と二人で乗っていたクルーザーが難破し、
無人島にたどり着いた。

太平洋の孤島。タロイモやバナナの野生種が生い茂り、
餓えからはまぬがれることができた。

その数ヵ月後、日本人の若者23人が島に流されてきた。
与那国島でアルバイトをしていた若者だが、
その過酷な労働条件を嫌って逃げてきたのだという。

そしてさらにその三年後、中国人の集団が流れ着いた。
密航の途中、捨てられた男たちだった。

日本人と中国人は島の東西で住処を分け、
日本人が住む場所をトウキョウ、
中国人が住む場所をホンコンと呼ぶようになった。

そんな状況下で暮らす人間たちの様子が描かれた小説。

これは実際にあった、「アナタハン島事件」を
モチーフにしているという。

孤島に住むたくさんの男とたった一人の女。

アナタハン事件は戦時中に起こったが、この小説は現代劇である。
太平洋の孤島に流された清子やその夫が、コーラが飲みたい、
ジャムの付いたパンが食べたいと願うくだりがある。

さて。

法律の支配がない場所で、女性一人で暮らすなんてどれだけ心細いかと思う。
まして清子の夫はとっくに亡くなっているのである。

しかし清子はこの状況を楽しんでいる。
何しろ、若い男たちが皆、自分をあがめ、奪い合っているのだ。

清子の夫はカスカベという名前の男に殺されたが、
それでも清子はカスカベに求められることがうれしかった。

が、孤島生活が長くなると、
次第に若者たちは清子に関心を示さなくなった。

清子の夫はくじ引きで決められる。
最初は皆が立候補したものだが、
5年目になると候補者が5人しかいなくなった。

男性同士で夫婦生活を送るものも出始め、
いびつな形で孤島の生活は安定を見せ始める。

清子はある日、中国人の集団とともに島を脱出しようとする。
しかし、島の周囲には強い海流があり、失敗してまた島に流された。

裏切り者として周囲からはじき出される清子だが、
その体には子どもが宿っていた。
中国人のリーダーの子かもしれないのだが、
清子は日本人集団の中でその子どもを生もうとする。

そんな中、また島の均衡を破る出来事があった。
フィリピン人の若い女性が流されてきたのだ。

彼女らは、生活力のある中国人集団を頼り、
乗ってきた船で再び脱出を試みる。

双子を産み落とした清子は、決死の覚悟でその船に乗り込んだ。
男女の双子は、男子は住民に奪われ、
女の赤ん坊だけが清子とともに船に乗ることができた…。

とまあ、こんな感じのあらすじなのだけど、
この本の面白いところは、小さい閉鎖された島で
どんどんおかしくなっていく人間模様にある。

少ない集団にとけこめず、
狂気の様相を見せながら一人で暮らす男。

記憶喪失を装った気の弱い男がやがて島民のリーダーになる様。

孤島にありながら文化的な暮らしを楽しもうとする日本人と、
野豚を捕まえる生活力旺盛な中国人。

アマゾンのレビューは芳しくなかったけど、
私はけっこう楽しんで読めました。
清子のしたたかで身勝手な性格が、
それほどいやみには感じませんでした。

娯楽として読めばそれなりに面白い、かな。








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