2010年10月29日

南の子供が夜いくところ







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南の子供が夜いくところ  恒川 光太郎
¥ 1,470   角川書店(2010/2/27)

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こ、これはすごい。こんなお話を日本語で読めることに感謝。

南の島、トロンバス島を舞台にした短編集。それぞれ独立はして
いるが、重なっている設定もあるので最初から読んでいくのが正
解か。

とにかく最後の「夜の果樹園」は最高、傑作、圧巻。これ一本だ
けでも読む価値はある、ありすぎる。お釣りがくるくらいだよ!

ああ、迷うな。これを紹介してしまったら、ショートケーキの苺
だけ先に食べてしまうようなものだ。グラビア雑誌の袋とじを開
けて見せてしまうようなものだ。

しかし本書の魅力はこの一冊に凝縮されていると思う。そして、
私の短文程度では本当のよさは伝わらないのだとも思う。よし、
いっちゃえ…!

(本日も普通にネタばれなので、読みたくない方は以下ご注意)


・夜の果樹園

破産した男。離れて暮らす子供に会いに、トロンバス島を訪れた。
バスに乗って向かうが、どうやら路線を間違えたようだ。

下りた場所には奇妙な人間がいた。頭部がフルーツでできている
のだ。彼もいつしか犬になっていて、頭がマンゴーでできた女の
飼い犬にされそうになる。

逃げ出した。逃げた場所で赤ひげの小鬼に出会う。赤ひげが言う
には、彼ももともとは人間であったが、ここに迷い込んでこのよ
うな姿かたちになってしまったのだそうだ。

彼も小鬼になった。赤ひげとともにフルーツ頭の人間を襲う。食
らう。えもいわれぬ充実の味がした。美味だった。

赤ひげは人を殺して逃げてきたのだそうだ。人に戻りたくないか
と問えば、悲しい顔で「その話はしないでくれ」と答えた。

小鬼になった男は、一人で戻ろうとしたことがある。案山子が立
つ畑を、一晩中さまよった。案山子が指す方角を、ひたすらめざ
して歩いたのだ。

だが朝になってみると、彼は元いた場所に戻っていた。「散歩は
楽しかったかい」と案山子に言われて、からかわれていたことを
知る。

小鬼の男が暮らす場所に、願懸けに来る女がいた。妹を殺してく
れと熱心に祈っている。小鬼は願いをかなえてやり、女の夫と
なって家族を持った。

どれだけの日が過ぎただろう。小鬼はいつかフルーツ頭の人に
なっていて、それが当然だと思い始めていた。だがある日、仕事
から帰った彼は、無残に殺された家族の死体を目にしてしまう。

食われたのだ。かつて自分がフルーツ頭を狩ったように、別の小
鬼に食われてしまった。絶望した男はついに…。


すごいよねえ。すごい、すごいわ。不思議が不思議のままで、現
実の世界にリンクしている。現実を壊す力を持っている。

この本を読めてよかった。出会えてよかったこの一冊、って感じ。

こういう、現実の根本が揺るがされる幻想小説って、日本では珍
しいんじゃないかな。専門家でないので、その辺はよくわからな
いんだけど。

中南米の幻想小説のテイストがあるように思う。マジックリアリ
ズム、とかいうやつだね。常識人には到底ない発想で、世界をぐ
るりと変えて見せてくれる。

もっと本を読まなあかんな、という気持ちにもさせられた。小説
はやっぱり素晴らしいなという気持ちにもなった。

奥が深いわ。














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posted by momo at 07:44| Comment(2) | TrackBack(1) | 話題の小説系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつもメルマガ楽しみにしています!
恒川 光太郎さんは、「夜市」も抜群に面白かったです。未読であればぜひお勧めいたします。
さっそく図書館で予約しました。(購入せず申し訳ありませんのちのち買うかもしれませんので<(_ _)>
モモさん絶賛なので、ほんとに楽しみです!!!
Posted by 紺 at 2010年11月01日 22:34
こんにちは。同じ本の感想記事を
トラックバックさせていただきました。
この記事にトラックバックいただけたらうれしいです。
お気軽にどうぞ。
Posted by 藍色 at 2012年12月11日 23:27
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「南の子供が夜いくところ」恒川光太郎
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Tracked: 2012-12-11 23:25
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