2011年04月21日

リアル・シンデレラ







−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

リアル・シンデレラ  姫野 カオルコ
¥ 1,785  光文社 (2010/3/19)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

表紙のイラスト。若い女性の裸の絵だ。乳房も、陰毛もさらけ出
している。小さな灯りを掲げ、伏し目がちに立っている。よく見
ると両の乳房はわずかに形が違っていて、ありのまま、女の姿を
描き出そうとしているように見える。

シンデレラの物語に違和感を抱く女性ライター。彼女は上司から、
かつて本当にシンデレラのようであった女性がいた、と知らされ
る。ライターは追う。関係者の証言を元に、その「リアルシンデ
レラ」、倉橋泉の生涯を探ってゆく。

倉橋泉。名はせんと読む。彼女は1950年4月29日、諏訪の「たから」
という料理屋で生まれた。母親は泉があまり好きではなかった。
ゴールデンウィークのはじめだから、誕生日も祝ってはもらえな
かった。

両親の愛情を一身に受けたのは、下に生まれた妹の深芳(みよし)
だ。体が弱かった深芳は、父母にかわいがられ、美しい娘に育った。

小さい頃から深芳の世話をさせられた。だが泉は、文句も言わず
に引き受けた。

泉は変わった子で、笑顔をあまり見せなかった。笑いはするのだ。
だがその前にぎゅっとこぶしを握り締めて、ぐふ、とくぐもった
笑い声をもらす。母からも、奇妙な子だと思われていた。

成長した泉は、高校進学のために諏訪を離れ、松本のとある名家
に住まうことになる。奥様から徹底的に礼儀作法をしつけられた。
習ったことは、大学ノートに書き付けておくのが泉の習性となっ
た。

戦前からの名家である。大きな会社を経営している。奥様は息子
と、泉を結婚させるつもりでいた。だが泉の母親は、その縁談を
喜ばなかった。

そして息子も。彼は泉の妹、深芳と恋に落ちていたのだった。

深芳は駆け落ちして恋を成就した。東京へ逃げたそのときに、世
話をしたのが冒頭に書いたライターの上司である。

その上司が、泉と深芳に関して、このような証言を述べている。

深芳は「オカイさん」と呼ばれていた。お粥さん、がなまってつ
けられたあだ名。ガールのスタンダード、とっても女の子らしい
女の子だった。

泉は違う。声をかけられない「ホーリーさ」、つまり、侵しがた
い神聖さがあった。美しい人で、気軽には触れがたい何かがあっ
た。

だが深芳は、御曹司と破局する。若い、突発的な恋だった。

泉も一度結婚をした。深芳の見合い相手だった男性とだ。しかし
こちらも破局を迎え、泉の夫は「たから」で働いていた奈美とい
う女性と再婚する。

そのころ「たから」は、泉の尽力もあって、立派な旅館に様変わ
りしていた。泉は客をもてなし、無農薬野菜を育てながら、夫と
結ばれた奈美を懸命に盛り立てる。奈美は女将の地位にあった。

幼い頃、泉は不思議な客に出会ったのだという。消えてなくなり
たいと願う泉に、それは傲岸不遜なのだと説いた。人一人、消え
ても世の中は変わらない。お前ごとき、懸命に生きるほか何がで
きるのかとその客は言った。

また客は泉に、わらじの編み方を教えた。片方だけのわらじを、
泉の手の中に残した。

泉はずっと、他人の幸福だけを願って生きてきた。報われること
はなかった。誰も泉を真に愛し、受け止める者がいなかった。

いや、いることはいた。泉のことを理解した男性はいた。だが泉
は、その心に気づくことがなかった。いつもいつも、人の幸せだ
けを願っていたから。


ラスト、悲しすぎるよ。こうじゃなきゃ、いかんのかな。

寓話とするには泉の周りがリアルすぎ、しかし泉だけがやたら人
間離れしている。

仙人を描いた話は私にはあわない。人でいい。もがき、あがいて
誰しもみんな幸せになってほしい。










こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
平日日刊・メルマガだけの前フリも好評です♪
http://www.mag2.com/m/0000176248.html


posted by momo at 08:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 話題の小説系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。