2006年11月20日

名もなき毒




宮部みゆきの最新作。
今日はねたばれ気味なので、
読みたくない方は飛ばしちゃってください。すみません。

冒頭は、青酸カリによる無差別殺人事件。
コンビニの飲み物に混入されていたというものだ。

主人公は中年の会社員、杉村。
彼は大企業の社内報の編集部員だ。

彼の妻は、その会社の会長の娘。
とはいえ、彼女は経営に関与することはない。
その代わり、会長の援助の下、
経済的には不自由ない暮らしを営んでいる。

杉村は、最近まで編集部で働いていた
原田という女性の生い立ちを追っていた。

というのも、彼女は大変なトラブルメーカーで、
やめた後も、いじめやセクハラのせいだと
会社を訴えようとしていたからだ。

根も葉もないうそ、毒になる言葉を吐きつける
原田の過去を追っていた彼は、私立探偵に会いに行くことになる。

そこで、青酸カリの事件で亡くなった老人の孫に出会う。

現代社会の毒を描いた作品、ということですが、
この本にはさまざまな毒が出てきます。

等身大の自分を許容できなくて、
ほかの誰もが幸せそうに見えて、すべてを壊そうとする原田。

やりきれない不幸から逃れようともがく少年。

高度成長期に、いろんな工場が残した土壌汚染。

いろいろな見えない毒が絡み合って、ということなんですが、
こうやってあらすじを書いているとすんごく書きにくい。

独立している事件が二つあって、
それが本の中で同時進行で進んでいく、という形式です。

まず、原田の件。
彼女は、幼いころからうそをつき続け、
兄の結婚を破滅においやる。
仕事をしても、ありもしないキャリアをでっち上げ、
やがて自滅していく。

最後まで、人を恨むばかりで、
自分を何者かにしようという現代にはありがち(なのか?)
な破綻した人格です。

彼女の破壊行動が向かう先は、一見恵まれていそうな杉村。
会社への脅迫もすべてはそれが目的だった。

さて、青酸カリ事件ですが、孫の女子高生とともに犯人を追う杉村。

老人と交際していた身寄りのない婦人が犯人としてあがるが、
彼女はビルから飛び降りて死んでしまう。

女子高生の解説したホームページに寄せられた
「すみません」というメールから、
杉村はコンビニで働いていた少年に目をむける。

彼は、かつて彼の両親が工場を経営していた土地に住んでいて、
幼いころから体が弱かった。

寝たきりの祖母を抱え、どうしていいかわからず…。

そろそろやめておかないと、これから読む方に申し訳ないですね。

しかし。
しかし。

私は思うんだけど、これが新人作家の作品だったらここまで
評価されただろうか。

いや、評価はされるだろう。
ぐいぐいひきつけれられる内容、毒を描こうとした意欲作。
でも、一言こう付け加えられるはず。

「書きたい毒を盛り込みすぎて、本筋が見えにくい。
特に土壌汚染の話などはどうしても必要とは思えない」


お話としては面白いので、お時間のあるときに、いかがでしょうか。



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posted by momo at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 話題の小説系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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