2007年02月27日

氷の海のガレオン




主人公の杉子は11歳。小学校に通う女の子だ。

父は「何の仕事をしているのかわからない」人。母は詩人。
そんな両親と、両親が集めた本から杉子は言葉を覚えた。

学校にいるほかの子供と、自分の言葉が違う。
私の言葉は彼女たちに通じない。

そんな風に感じる杉子は、休み時間は本を読んですごし、
教室移動ですら集団でしかできない」女の子たちに
さめた視線を送っている。

こんな始まり方のお話です。
私がこの本を最初に読んだのは、
まだ小学生くらいだったと思う。

当時、あまり理解できなかったんだけど、
とっても印象に残ってた。

それが文庫で再販され、本屋に並んでいたときは即買いでした。

集団にうまく溶け込める人というのが、
私はうらやましくてしょうがない。

大人になって、それなりにこなしているつもりだけど、
やっぱりどこかひやりとする。
そんな気持ちを、この小説はうまくすくいとってくれます。

さて、孤高の存在でいたかった杉子に、
いじめられっこのまりかちゃんが
友達になろうとして近寄ってきます。

一人でいると変な目で見られてしまうから。
そんな理由だけで近寄ってくる彼女を疎ましく思う杉子。

でもさ、一人でいることが、
集団からはみ出しているということと同じである学校生活で、
杉子にこびるまりかちゃんの気持ち、
私わかるなあ。

学校生活にうんざりしている杉子ですが、
新しくきた音楽の先生に次第に心を開いていきます。

彼女も、杉子と同じ、
集団から少しはみ出した個性を持っていたから。

杉子には兄と弟がいます。
兄も弟も、学校生活にはなじめない。
弟は空手を習って、理不尽と戦っていきますが、
兄は学校を中退してしまう。

そんな兄弟を持つ母親は、自分もかつて、
集団になじめなかった人間の一人であり、
子供たちがその苦労をしていることに心をいためています。

個性的な両親を持つということは、幸せなことかもしれない。
山田詠美風にいえば、「人間として上等」な
子供たちかもしれない。

けれど作者は、孤独でよしとしていた杉子も、
実は心の奥底では「普通の子供がうらやましい」と
感じている様子を描き出します。

頭がよくて、ちょっと大人びている子。
こんな杉子の孤独、悩みをきれいに描き出してます。

音楽の先生が、杉子の母親に相談に来る場面がいい。

子供を授かった先生だが、
自分のような人間が子供を産むことが怖い、
と悩みを打ち明けます。

それに対し、母も、杉子の兄を産んだとき、
同じ気持ちであったことを話します。
私の言葉で話しをしてあげようと誓ったこと、
強い子になって欲しいと願ったこと。

どこであれ、集団というのはある意味閉鎖的で、
異質なものを受け付けない。

異質であることを自覚し、どこかで孤独をかみしめていた
かつての子供、そして現在もそうである大人の方に。

これは心からオススメできる一冊です。



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posted by momo at 11:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 話題の小説系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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