読んでみました。
単行本は2年ほど前に出ていると思うのですが、
映画化にあわせて文庫本になったみたいです。
主人公咲子は、東京で旅行代理店に勤めている。
身内は郷里の徳島に残る母だけだ。父はいない。
もともとは東京神田の生まれ、
ちゃきちゃきの江戸っ子だという母、龍子。
その母は、徳島で夜の店を営んで咲子を育て
老いてからは店をたたんで
自分で選んだ介護ホームに入居した。
病院でトラブルを起こしたという知らせを聞いて、
咲子が徳島へ帰ると、
やつれてはいたものの、聡明な母には変わりがなかった。
よく聞いてみると、生意気な看護士を叱り飛ばしたのだという。
また、看護士のぐちにつきあって失言をした医師にも
龍子は胸のすく啖呵をきってみせた。
喧嘩っ早くて情に厚い龍子。
若い客にはただ同然で飲ませてやっていたことから、
地元の名士と呼ばれる人たちに慕われている。
「神田のお龍に生意気なことを言うな。」と、
上司に諭され、医師は龍子に頭を下げた。
そんなこともあって、咲子と医師はしだいに親密になっていく。
母は、結婚せずに咲子を産んだ。
大好きな人の子供を産んだから、幸せだった。
咲子は私の命だったと母は言う。
その母が、癌に犯され余命がいくばくもないことを知って、
咲子はどうしようもないほど打ちのめされる。
そして、母が、死後献体を希望していることを知って、
強く動揺する。
やがて、阿波踊りの日がやってくる。
母のたっての願いで、
母を阿波踊りの会場に連れて行く咲子と医師。
そこで、母は、ひとりの男性とすれ違う。
車椅子に乗っている80歳くらいの男性。
死を覚悟した母から渡された、
母の大好きな人の面影を残すその男性と、
母は視線をあわせることもなく、毅然としてすれ違った。
龍子の毅然とした生き方、江戸っ子らしいキップのよさがいい。
また、背景にある阿波踊りの風景が美しく想像される描写もいい。
ただ、叱られた人がみな、
龍子のファンになってしまったりするあたり、
ちょっとご都合主義かなあと思わなくもない。
献体という重いテーマを選んでいるので、
こんなこというと人でなしみたいでいやなのだが、
少々あざとい気がするのは私がすさんでいるからか。
颯爽と、一生をかけて愛を貫いた
一人の女性の姿には感動を覚えるが、
一歩間違えると相当安っぽい話になる可能性もある。
まあ、小説家が書いたものならあれだけど、
さだまさしだからいいか、ってところでしょうか。
ワンパターンなんだよ、なんていいながら「男はつらいよ」
をみて、最後に感動してしまえる私のような人向けの一冊。
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