井形慶子さんというと、
おしゃれなイギリス生活の本を書く人、というイメージがある。
だからこの本を見たとき、
今までの本と違う分野なので少々驚きました。
占いの世界を深く掘り下げた、筆者の体験からなるレポート。
筆力があるので小説のように読める。
ミスター・パートナーという雑誌を創刊して、
4人から始めた事業は、
もはや30人ほどの社員を抱える会社になった。
著者はその社長である。
昔、仕事で知り合ったサワダという男性から、著者に、
占い師の取材を行ってほしいと依頼が来る。
それは、サワダ氏が私財を投資して始めた企画であった。
正体は偽って、架空の人物「けい子さん」として、
サワダ氏が選んだ3人の占い師にコンタクトを取る著者。
折りしも、会社はその頃、転換期に入ろうとしていた。
情熱をもって始めた創業期の人間と、
指示待ちで責任感のない新人たちとのあつれき。
いろいろな問題を占い師に相談する。
占い師たちは、お互いにはその存在を知らない。
口裏を合わせているわけではないのに、
その言っていることは3人とも同じである。
しかも現実にも合致していた。
右腕的存在の、トドロキくんが会社を辞めたいという。
ともに創業時から仕事をしてきた大切なパートナーだ。
何度も衝突するものの、占い師たちはみな、
「彼はあなたから離れることはないから安心して。」という。
トドロキくんは会社を辞めるが、
付き合いが切れることはなかった。
他にも、部下のことや一緒に仕事をする編集者のことを相談し、
次第に占い師たちのアドバイスに傾倒していく著者。
占いがいい、悪い、ではなく、彼女らとのやり取りを通して
ある程度人の運命が決まっているもの、ということをにおわせる。
同時に、占いを悪用する人たちの様子も描かれている。
最終的に、占いだけに頼るのではなく、
自分で運命を切り拓いていくという終わり方にはなっている。
会社の創業期から安定期に入った頃の、
働く人たちの意識に揺れる起業家の
迷いの5年間の物語でもある。
サワダ氏の失踪、著者の見た不安の塔の夢など、
ラテンアメリカの小説みたいな幻想的な描写もなかなか。
私は、最後まで読んで明るい気持ちで本を閉じることができました。
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