2007年08月10日

夜にそびえる不安の塔




井形慶子さんというと、
おしゃれなイギリス生活の本を書く人、というイメージがある。

だからこの本を見たとき、
今までの本と違う分野なので少々驚きました。

占いの世界を深く掘り下げた、筆者の体験からなるレポート。
筆力があるので小説のように読める。

ミスターパートナーという雑誌を創刊して、
4人から始めた事業は、
もはや30人ほどの社員を抱える会社になった。
著者はその社長である。

昔、仕事で知り合ったサワダという男性から、著者に、
占い師の取材を行ってほしいと依頼が来る。
それは、サワダ氏が私財を投資して始めた企画であった。

正体は偽って、架空の人物「けい子さん」として、
サワダ氏が選んだ3人の占い師にコンタクトを取る著者。

折りしも、会社はその頃、転換期に入ろうとしていた。
情熱をもって始めた創業期の人間と、
指示待ちで責任感のない新人たちとのあつれき。
いろいろな問題を占い師に相談する。

占い師たちは、お互いにはその存在を知らない。
口裏を合わせているわけではないのに、
その言っていることは3人とも同じである。
しかも現実にも合致していた。

右腕的存在の、トドロキくんが会社を辞めたいという。
ともに創業時から仕事をしてきた大切なパートナーだ。

何度も衝突するものの、占い師たちはみな、
「彼はあなたから離れることはないから安心して。」という。

トドロキくんは会社を辞めるが、
付き合いが切れることはなかった。

他にも、部下のことや一緒に仕事をする編集者のことを相談し、
次第に占い師たちのアドバイスに傾倒していく著者。

占いがいい、悪い、ではなく、彼女らとのやり取りを通して
ある程度人の運命が決まっているもの、ということをにおわせる。
同時に、占いを悪用する人たちの様子も描かれている。

最終的に、占いだけに頼るのではなく、
自分で運命を切り拓いていくという終わり方にはなっている。

会社の創業期から安定期に入った頃の、
働く人たちの意識に揺れる起業家
迷いの5年間の物語でもある。

サワダ氏の失踪、著者の見た不安の塔の夢など、
ラテンアメリカの小説みたいな幻想的な描写もなかなか。

私は、最後まで読んで明るい気持ちで本を閉じることができました。



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posted by momo at 11:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 世間話、時事ネタ系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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