舞台は京都。
大学院生の主人公は、後輩である黒髪の乙女に恋をしている。
この恋を、「何とか外堀から埋めていくべく」悪戦苦闘する姿と、
乙女の不思議ぶりを描いた恋愛ファンタジー。
森見さんは独特の文章を書く方で、これが好きになれるか、
どうかでずいぶんとその評価が違ってくると思う。
文章を少しを引用してみます。
「たとえば、手近な人間のほっぺへ、やむを得ず鉄拳をお見舞い
する必要が生じたとき、人はこ拳を堅く握りしめる。
親指は拳を外からくるみ、いわば金具のごとき役割を果たしている。
しかしここで、いったんその拳を解いて、
親指をほかの四本の指でくるみこむように握りなおしてみよう。
こうすると、男っぽいごつごつした拳が、
一転して自身なげな、
まるで招き猫の手ののような愛らしさを湛える。」
これが、乙女の得意とするおともだちパンチである。
こうすれば、余分に人を傷つけず、
自分を守ることができるのである。
やや長くなりましたが、こういう書き方にシビレてしまった方、
次へ行きましょう。
ケッ、いまどきもったいぶった、回りくどい洒落かましてんじゃ
ねえ、という方、あなたは間違っていません。
売れている本だからといって、全てが自分に合うわけじゃないし。
私も、実はこういう文体苦手なんですよ。
さて、内容を。
四章に分かれている。不思議な事件に巻き込まれる乙女と、
それを追いかける主人公という構成。
一章。
知り合いの結婚パーティに出席した主人公と乙女。
乙女は一次会で帰ってしまい、
バーで錦鯉を養殖していた男に出会う。
竜巻で鯉を失い、春画を売りに行こうとする男に絡まれる乙女。
それを助けに来た羽貫さんと樋口さん。
樋口さんは天狗であると言い、
空を飛ぶ不思議な芸を見せる。
成り行きで、先斗町に三階建ての電車で現れる李白さんと
飲み比べをすることになる乙女…。
二章。
乙女は昔なくした絵本を探しに古本市へ。
それを追いかけて古本市へ来た主人公は、
古本の神様という少年に出会う。
乙女の本を取り返すべく、
李白老人の供する悶絶激辛火鍋に挑む主人公。
不思議な絵本「ラ・タ・タ・タン」は果たして乙女の手に渡るか。
三章。
学園祭である。
乙女の姿を探して校内を歩く主人公。
そこで、一度しか会ったことのない女性に再会するまで
パンツをはきかえないというパンツ総番長に出会う。
ゲリラ的に行われる演劇。錦鯉のぬいぐるみを背負って歩く乙女。
象の尻。
舞台の上で、主人公は乙女に愛の言葉を…。
四章。
京都にひどい風邪が流行する。羽貫さん、錦鯉センターの男、
知り合った人間のお見舞いに奔走する乙女は、
その風邪のおおもとが李白老人であることを突き止める。
幻の風邪薬を手に入れ、李白老人の元へ向かう乙女。
そして、やはり風邪に倒れた主人公は、
夢と現実の間で乙女と共に竜巻に巻き込まれ…。
奇想天外。
ファンタジーである。
私は「千と千尋の神隠し」のイメージで読んでいました。
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