2005年、日本人がイラクで武装勢力に殺された。
その日本人は、イギリスのハート・セキュリティ社で働いていて、
イラクには警備員として派遣されていた。
ハート・セキュリティ社は、PMCと呼ばれる種類の会社である。
今、イラクに展開する米軍は
PMCといわれる民間企業なしでは組織として機能しない。
PMC。プライベート・ミリタリー・カンパニー。民間軍事会社。
本書では、いまや各国の軍事活動に
なくてはならないものであるPMCの実態、
活動を詳細にレポートしている。
戦争と経済活動の関係としてみるのも大変興味深い一冊である。
PMCは主に後方支援に携わる。
たとえば、米軍の食料補給は、
ケロッグ・ブラウン・ルート社が全面的に請け負っている。
物資の搬送(武器弾薬も含む)、
非政府組織や公共施設の警備、
新兵の訓練から果ては捕虜の尋問なども、
PMCが仕事として「受注」しているのが現状だ。
捕虜の尋問に関しては、
もともとこれは敵の情報を知る大変重要な仕事で、
本来は訓練を受けた専門家があたるものであるという。
だが、軍の人手不足、いい加減な新規参入会社の受注などの
「素人による」尋問が、
問題の捕虜虐待事件に結びついたと本書では述べられている。
イラクでは今、PMCバブルの真っ最中なのだそうだ。
なにしろ、仕事はあふれるほどある。
そのため、知識や経験のない人間が簡単に会社を設立し、
仕事をしている例も数多く報告されている。
だが、もともとはPMCは
軍のエリートたちが除隊後に始めたサービスであったそうだ。
アメリカに利するゲリラ組織を援助するヴィネル社。
若王子氏誘拐事件の解決に暗躍したコントロール・リスクス社。
戦闘まで請け負うエクゼクティブ・アウトカムズ社。
元デルタ隊員というエリートだけを採用している
トリプル・キャノピー社。
これらの会社の活躍も記されているが、
PMCが海兵隊員を助けたというエピソードなどを読むと、
どっちが本来の軍隊なのかわからなくなってしまう。
実際に、給与面でも、訓練の内容でも
軍隊より民間企業の方が各段にいい。
そのため、もっとやりがいのある仕事を求めて
軍を辞める軍人は大変多いそうだ。
もっとも、恵まれているのは先進国の人間だけで、
安い給与で働かされている発展途上国から集められた兵士、
ではなく警備員の実態も報告されている。
最後に、PMCが行う
危険地域を取材するジャーナリストのための合宿の様子が
述べられていて、
ここまで至れりつくせりなのかとため息をついた。
また、マスコミをコントロールして
世論を誘導する企業もあると知り、
現在の戦争は単なる兵隊の殺し合いではないことも実感させられた。
戦争と一口で言っても、
それが大規模な経済活動であることを改めて確認させられる。
そして、それをビジネスにしてしまう民間企業の貪欲さにも
感嘆、脱帽してしまう。
その強さ、したたかさ。
勝者はいったい誰なのか。
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