失踪して3年、野田功一の消息は、
事故死したことで家族に知れることになった。
彼に関った人間、母、妹、弟、婚約者。
彼らはいまだに過去から解放されていない。
彼が何を考えていたか、どうして失踪したか、
そして自分は彼の死にどう対峙するのか。
空白の3年間の、功一の足跡をたどることでその答えを探そうとする。
功一は、一定の場所にはとどまらず、
風来坊のように日本を旅していた。
婚約者は丹沢にやってくる。
まじめで、仕事熱心だった功一。映画がきらいと言っていたはず
なのに、そこで彼は、映画が好きだと話していた。
和歌山の温泉には妹が訪れる。
功一たちの父は、借金の保証人になって失踪していた。
父の代わりに大学をやめ、働いてくれた兄、。
そんな兄は、この温泉の人たちの記憶に、
やはり優しい人として残っていた。
弟は、兄がしばらく滞在していた老姉妹の家を訪れる。
映画監督になりたい夢を持っていた兄を、
否定した自分のせいだと彼女らに告白する。
母は、功一が最後に会った人物、夫の元を訪れる。
もう他の女性と暮らしている父に、功一は言った。
「おれはあんたを許さない。でも、今のあんたは認める。」
周りの人間は、父親のせいで夢をあきらめた功一に
同情と負い目に似た感情を持っている。
だが、功一はそう思われることを是としていたのか。
あとがきがいい。少し長いですが抜粋してみます。
「世の中に、どれほどの人が、
思い通りの満足いく人生を過ごすことができるのだろう。
人生の収支は死んでみないとわからないが、
赤字でも黒字でも、他人が決算するものではない。
さまざまな事情で人生の計算を狂わされ、
不本意な道を歩む人につい同情するのは自然な感情だが、
それ以上の憐憫を抱くのは傲慢だ。
しあわせ、ふしあわせの収支は、
その人の心の中でつけるしかないのだ。」
最後、皆それぞれに功一の死を昇華し、未来に向かう。
夢をあきらめたとはいえ、それなりに平穏な生活を送る功一の
失踪を描くことで、不本意な人生そのものと、
それを歩まざるを得なかった人間の苦悩を描いた作品。
絵はシンプルと言えばシンプルだが、雑ともいえる。
ですが、それなりに人生を経てきた大人であれば、
きっと胸に響く何かがある一冊。
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