好き、嫌いが分かれそう。
今回の直木賞受賞作品。私は好き。
主人公は腐野花。くさりのはな、と読む。
冒頭は花の結婚式から。
エリートサラリーマンの美郎と結婚するのだ。
花の結婚式に出席する親族はただ一人。
父親の淳悟だけである。
遅刻してきた父にすがって泣く花。
ここで、花が震災の被害者であり、
家族を失った人間であることが明かされる。
当時9歳だった花を、27歳だった淳悟が引き取って育てたのだ。
美郎にとって、花は不思議な人物であった。
おっとりしたお坊ちゃんである美郎は女性に人気がある。
だが、花はそんなことを全く意に介さないようであった。
むしろ、偉大な父を持っている美郎に
同情しているようにすら見える。
花とデートを重ね、送っていった美郎は、
花をいつも迎えに来る淳悟に、
そして二人が住んでいるぼろぼろのアパートに、
淳悟の膝に顔をうずめて眠る花に、強烈な印象を受ける。
淳悟はもともと、北海道で海上保安官をしていた。
花が家族を失ったのは奥尻島を襲った地震と津波によるものだ。
美郎も父を海で失っており、厳しい母親に育てられたせいか、
親の愛情を知らない人間である。
父を失った折、親戚である花の実家で暮らしていたことがあり、
実は花の本当の父親は淳悟なのである。
淳悟に引き取られた花には、町の人の同情が寄せられた。
親を失い、仕事で何日も家を空ける海上保安官の家で
小さな女の子が暮らしているのだ。
中でも親切に声をかけてくれるのは、
町の名士である大塩さんである。好々爺で、人望も厚い。
大塩さんは、ある日、淳悟と花の秘密を知ってしまう。
年の差を越えて、養子縁組であるとはいえ
親子関係にある二人が、肉体を重ねていることを知るのだ。
別の親戚に預けようと、花を説得する大塩さん。
花は彼を、流氷の海に突き落とす…。
淳悟と花は東京に逃げ、追ってきた警察の男も殺害する。
都会の片隅でひっそりと生きる二人であるが、
花は結婚し、淳悟の元を離れる。
新婚旅行から戻った花は、
淳悟が亡くなったことを知らされる。
暗い、救いようのない内容。
読んでいて楽しい気分になることはない。
それは保証します。
淳悟のゆがんだ愛情を受け入れる花をグロテスクとも、
彼女と結婚してしまった男を不幸とも思えるし、
読みようによっては非常に不快を感じさせる内容でもある。
ただ、におい立つような文章がいい。描写がいい。
くらくらと、腐っていくような感じがなんとも言えない。
雨の日にひっそりと読みたい一冊。
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