惜しくも受賞を逃したが、
前回の直木賞の候補作品だったそうだ。
北海道を舞台にした短編小説5編。それぞれ独立した作品だけど、
主人公が前の小説の登場人物と関わりがあるという設定なので、
最初の作品から読んでいくことをおすすめします。
・ちりちりと…
堀口誠はもう帰るまいと決めていたはずの故郷に戻って来た。
函館で事業を営んでいたが、共同経営者の友人に裏切られ、
破産しての帰郷だった。
自殺を思うが、父親が5千万近くの金を持っていることを
知人に聞かされる。
母と妹を亡くして以来、父は山奥の小屋で隠遁生活を送っている。
留守中に忍び込み、母と妹の墓に隠していた金を見つけるが、
戻ってきた父親に銃で撃たれてしまう。
・みゃあ、みゃあ、みゃあ
母親と二人暮しの美恵子。彼女は以前、堀口の父の愛人だった。
母は痴呆が始まっており、口汚く美恵子をののしる。
居酒屋で働く美恵子は、
以前から土屋という男に言い寄られていた。
笑顔が爽やかな土屋に惹かれた美恵子は、
ある日彼に体を預ける。
しかし、母の存在を知った土屋は、
美恵子と交際することはできないと言う。
交際を断られ、施設に入ることを拒否する母に疲れた美恵子は、
飼っていた猫を箱に入れて川に流す。
・世界の終わり
土屋智也。父の女癖が原因で、母と妹は出て行った。
犬のレオだけが心の支えである。
雅史という男に、半ば脅されて買わされたスクーターに乗って、
智也は町外れの開発予定地に出た。
そこでレオが骨を見つける。
骨を探すことに熱中する智也。夜中まで探していたところ、
警官に尋問され、ナイフで刺し殺してしまう。
智也は、骨を集めることで、世界の終わりがくると信じていた。
・雪は降る
知恵遅れの少年、智也にスクーターを売りつけたことを、
雅史は後ろめたく感じている。
しかしそのおかげで手に入れた車で、
憧れの先輩、美穂を函館まで送っていくチャンスに恵まれた。
どこか憂鬱そうな美穂。バッグに赤い色の何かがついている。
途中で入ったコンビニで、
雅史は美穂の弟が何者かに刺殺されたことを知る。
・青柳町こそかなしけれ
安衣子の夫、保はギャンブルが好きで
たびたび安衣子に暴力をふるう。
親友の恵理も同じような境遇で、
恵理は交換殺人を言い出すまでに追い詰められていた。
ある日、恵理の大事にしていた犬を、恵理の夫が殺してしまう。
彼を殺して、代わりに保を殺すから。
そう泣く恵理の言葉を聞いて、保は心を入れ替える。
犬の葬式の日、来なかった夫に激怒した保は、
彼をなぐって入院させてしまった。
犬を殺したことも、暴力をふるわれていることも、
恵理は警察には言わなかった…。
主人公たちは皆、人生に絶望している。
その苦しみとか、やるせなさとか、
作者はそういうことが書きたかったようだ。
どれを読んでもため息が出る作品ばかり。
ここからは勝手な感想です。馳ファンは回れ右?!
正直に言うと、人間の絶望と焦り、
あがきを描いた短編集というなら
鷺澤萌の「F」の方をおすすめしたい。
破産(ちりちりと)、老人介護(みゃあ、みゃあ、みゃあ)、
近親相姦(雪は降る)と、ありがちなんだよなあ。
おまけに、雅史と美穂の会話。違和感があるんだよなあ。
若い子は携帯の電源のことを「バッテリー」とは
言わないと思うのよこれまた…。
同じ、年老いた母を背負う娘の話にしても、
車で京都まで墓参りに連れて行ったらすべてうそだった、
という話が鷺澤Fにはある。
最後のどんでん返しが、あちらの方が鮮やかな気がする。
すみません。生意気で。
ただ、不夜城以来、多分だけど馳氏に寄せられてる期待、
暴力とアンダーグラウンド満載の作品をどうぞ!ってなところから、
別の境地に行こうとしている感じはする。
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