「社会起業家」という言葉が近年注目されている。
アメリカの有名大学では、
社会起業家精神のコースが設けられているそうだ。
しかし、社会起業家は単なるビジネスパーソンではない。
不屈の精神を持って、
新しいアイディアで世界を変えていく人間だ。
文字通り、まわりの人たちの考えを変え、政府を動かし、
ビジョンを実現していく改革者である。
本書では十人の社会起業家と
彼らを支援する組織のことが書かれている。
そのうちの一人、ファビオ・ロサについて少しご紹介。
1982年、大学を卒業したばかりのロサは
ブラジルのパルマレスという村を訪れる。
その村の主な収入源は米作りだったが、
パルマレスは水に乏しい土地だった。
井戸を掘ろうと思うが、動力になる電気が通っていない。
ロサはある日、格安の材料でできる発電設備があることを知った。
農民を説得し、市に新しい部門を設け、
国立経済社会開発銀行(BNDES)の
融資を受けられる約束を取り付ける。
電力会社の妨害を受けながらも、2年後には一世帯辺り
400ドルで電気が引けるようになった。
400世帯が電気を引き、その75パーセントが送水ポンプを購入した。
発電施設を導入した農家は、
月の収入が50ドルから200ドルにはねあがった。
仕事を求めて都市部に出て行った人も戻ってくることができた。
順調に見えた事業だが、91年にはブラジル経済が混乱し、
BNDESからの融資がストップしてしまう。
政府に頼ることをやめたロサは、
STAアグロエレトロという営利企業を立ち上げ、
ソーラーシステムを販売することに決めた。
さまざまな困難をものともせず、
ロサは現在でも貧しい地域の人々に電気を届ける仕事をしている。
他にも、低収入の家庭の子供を大学に行かせるプロジェクト
(アメリカ)、
障害者が人間らしく生きられる施設を作った女性(ハンガリー)、
エイズ患者をケアする運動(南アフリカ)など、
社会的に意義のある活動をしている人たちがいる。
それらの社会起業家を支援する組織に、
アショカというものがある。
アメリカの環境保護庁出身の、
ビル・ドレイトンという人が作った組織だ。
アショカはフェローと認定された人たちに
固定給としてお金を援助する。
支給期間は3年ほど。
人に融資するのでその使い道は問わない。
それだけに、選考は慎重を極めたものだ。
創造性、起業家にふさわしい性格、アイディアの中身、
倫理観が基準となる。
一番高いハードルは、
二番目の起業家にふさわしい性格という項目だそうで、
たいていはこれで振り落とされてしまう。
情熱、物事を成し遂げる力はもちろん、
彼らがふさわしいと認定する条件は、
「世界を変えることができる人」というものだ。
営利ももちろん追求しながら、
世界を変える仕事をしている人が世の中にはこんなにもいる。
いいもんですな。
週末に読むのにふさわしい、希望とパワーをもらえる一冊。
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