2008年03月04日

夜想・貫井 徳郎




交通事故で妻子を失った雪藤は、
いまだその痛みから立ち直れずにいる。
仕事場でもミスを連発してばかりだ。

そんなある日、雪藤は不思議な女性に出会う。
落とした定期入れを拾ってくれた天美遥。
彼女は雪藤のことを何も知らないはずなのに、
あなたがかわいそう、と言って泣いていた。

数日後、遥の働く喫茶店を訪ねた雪藤は、
遥が不思議な力を持っていることを知る。
人の物に触っただけで、
持ち主が何を考えているのかがわかるというのだ。

共感を寄せてくれた遥に信頼を抱く雪藤。
同僚の女性を通して知り合った雑誌の編集者と、
彼女を会わせることにする。

遥は両親を亡くしていた。医師だった父の志を継いで、
人の役に立つことがしたいと考えていた遥。
金儲けなどには興味がないが、マスコミを通じて訪れる人に、
遥は真摯に対応する。

遥の能力は本物だった。やがてたくさんの人が集まり、
彼女を支たいという人が自然に集団を作り始めた。

宗教などではない。雪藤はそう思うが、
だんだんと宗教団体の趣を帯びてくる遥の支持者たち。

会の運営には経費がかかる。持ち寄りで済むはずもなく、
訪れる人からお金をとる、
また、スポンサーを得ることなどもしながら
だんだんと会はまとまっていく。

会社をやめ、「コフリット」という名前のついた
集団のまとめ役になる雪藤。
彼の他に、笠置という男もいつの間にか
コフリットにやってきて、重要な発言をするようになった。
雪藤は、如才ない笠置に信頼を置くことができない。

美しい遥の容姿だけに惹かれてやってくる人間。
会を大きくするために間違った手段に走る若者たち。
そんな人間が、雪藤は許せない。

雪藤にとって遥は、自分を救ってくれた神であった。
純粋な思いは結果、
まわりの誰に対しても不信感を抱くことにつながっていく。
孤立する雪藤。

そして最後は一気に破綻へなだれ込んでいく。
破綻劇の鍵を握る人物は、
最初から伏線が張られているのでこれは読んでのお楽しみ。

遥の失踪、雪藤の落胆。

しかし作者は、最後に優しい結論を用意してくれている。

人は弱いな。寂しいな。
そんなことを感じさせてくれる。読み応え十分。

感情を動かされたい、
小説の世界にどっぷりはまりたいという人がいたら、
最近では一番おすすめなのがこの小説。






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タグ:貫井 徳郎
posted by momo at 16:07| Comment(0) | TrackBack(1) | 話題の小説系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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