カート・ヴォネガット。
ドイツ系アメリカ人で、作家として活躍した。
代表作にスローターハウス5などがある。2007年4月に永眠。
本書が遺作となる。エッセイ集。
外国人らしい皮肉とユーモアにあふれた文体で、
環境のこと、戦争のこと、アメリカを評論している。
厳しい文章だけど、根底に人間らしさというのか、
優しさが光っていて、言葉のひとつひとつが大変「きれい」だ。
速読、濫読で、がさつな本の読み方をする私だけど、
この本にはじっくり時間をかけてしまった。
そしてそれを後悔していない。
貴重な時間をありがとう、と思える。
代表作、スローターハウス5は著者自身が経験した
ドレスデン空襲を基に描いたものだ。
「1968年、スローターハウス5を書いた。
わたしはこのときようやくドレスデン大空襲を書けるくらいに成長したといっていい。
ヘミングウェイの書いた兵士の帰還を読むと、
故国に戻ってきた兵士に戦争体験を語らせるのがいかに残酷かということがよくわかる。
戦争について語らない理由は、とても語れるものではないからだ」
また、ヴォネガットは石油を大量消費するアメリカにも警鐘を鳴ら
している。
「わたしはタバコ会社を訴える。
まだ12歳のときからタバコを吸い始めた。
そしてもう何年もの長きにわたって、
タバコ会社はパッケージに書いてわたしを殺してくれると約束した。
ところがわたしはもう82歳だ!この嘘つきどもめ!
しかし、本当は我々は燃料中毒なのだ。
そして現在、我々の指導者たちは暴力的犯罪を犯している。
それは我々が頼っている、
なけなしのドラッグ(=石油)を手に入れるために」
他にも、誠意や思いやりのない政治家、指導者に、
彼は厳しい批判を浴びせていく。
表題の国のない男、というのはドイツ人移民の子として、
やや離れた視点からアメリカを見ているということだろう。
しかし、彼は皮肉な世捨て人ではない。
私が好きなラッダイトの一遍では、彼が人とのかかわりを愛しているのがよくわかる。
ラッダイトとは新しいものが大嫌いな人間のこと。
パソコンが嫌いなヴォネガットは、
原稿が仕上がると封筒を一枚だけ買いに文房具屋に出かける。
そこで気にいりのものを買って、郵便局の列に並ぶ。
さまざまな人を登場させ、ニューヨークの風景を切り取った
すてきなエッセイになっている。
彼の直筆の文字がデザインされた版画も収録されている。
非常に洒落た一冊。プレゼントにもいいかも。
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