あたしは、不倫に破れて自暴自棄になっていた。
死んでやる!
深い絶望を感じたそのとき、目の前がぴかっと光って気を失った。
目が覚めるとそこにあったのはおかめ顔。
しかもあたし、十二単なんて着ちゃってるし、
ギネスに乗りそうなロングヘア。
どうやら平安時代にタイムスリップしてしまったみたい!
高校の頃読んだ源氏物語を思い出して、
なんとかやり過ごすしかない。
だけどあたし、源氏物語きらいだったのよね。
光源氏なんて、子供を自分好みの女に仕立て上げるロリコン色魔野郎じゃない。
そんな話、どこがいいんだか。そう思ってたはずなのに、
なんとこの世界では、あたし、源氏物語の作者なのよね。
いや、作者というのはちょっと違う。書いているのは香子さま。
彰子さまというお姫様の家庭教師をされている方。
あたしは、その香子さまにネタを提供する、
いわばブレーンってところ。
こんなお話。「あたし」の一人称で、
現代女性の目を通して源氏物語の裏側をさぐるというものだ。
有名な夕顔、葵の上、末摘花のお話の、現代版パロディ解釈といったところ。
今回は末摘花のエピソードを。
末摘花といえば、鼻の赤い、ユニークな顔立ちが有名。
ところが、あたしが実際に会ってみた末摘花は華奢で色白、
かわいらしい少女だった。
貧乏で恥ずかしがりや。
その彼女には位の高い男性が言い寄っている。
この時代、男性の経済的援助がなければ女性は生きていくことができない。
それならば、恥ずかしがりやの姫君のかわりに、
あたし、人肌脱いじゃおう。
奮闘するあたしだが、末摘花には他に愛する人がいた。
それは、そばで控えている葛野という女性である。
そう、少女は、男性と契りを結びたいとなど思っていなかったのだ。
しかしそれでは彼女の生活はどうなる?
一計を案じたあたしは、少女に入れ知恵をする。
男性が訪れた夜、色白の彼女の花を冷やして赤くし、
そのおかしな顔を見せた。
不器量な女性にびっくりしたものの、憐れに思った男性は
末永く彼女の面倒を見てやることにした。
そうして、末摘花のお話は、
香子さまの手によってユーモラスに仕立て上げられたのだ。
さまざまな恋愛に直面し、「あたし」自身も成長する物語。
ラスト、現代に戻ったあたしは思う。
死んでやるなんて間違ってる。人は死ぬのだ。
気を失っていた間、案じてくれた人たちのためにも、
死がやってくるまであたしは生きる。
文体が口語調なので気楽に読める。
「あたし」のバイタリティに元気をもらえる一冊。
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