2008年05月21日

被取締役新入社員





俺はとにかく冴えない男だ。
ガキの頃からいじめられっこだった。
大人になっても変わらず、仕事もうまくいかない。

そんな俺が一流の広告代理店の社員募集に応募した。
ただの社会見学のつもりだった。それがなんと、採用。

それも月給20万、年棒3000万という破格の扱いだ。

え?おかしいだろって?

俺の待遇は、表向きは一般社員。その実は被取締役、
とりしまられやくという役職。

広告代理店にはエリートが集まっている。
皆自信過剰で自己主張が強く、
いじめられ役が必要だと経営者は判断した。

つまり俺の仕事は皆のストレスのはけ口になること。
名前も、羽ヶ口信男に変えられた。

一週間に最低3度は遅刻し、叱られ、
皆にバカにされるのが俺の仕事。
いつものことだからへっちゃらだ。

だが、俺にいじわるをしない人間が二人いる。
好青年を絵に描いたような三木と、
沙紀ちゃんというかわいい女の子だ。

偽善者面したいやなやつらだ。

ま、他の人間が俺の悪口で結束を固めたみたいなのでいいとしよう。

社内を十分に不快にさせた俺は、
外の人間にも接するようになった。
俺の失敗を補うべく、部内の結束はさらに高まる。順調だ。

しかし運命ってのはわからないもので、
俺を気にいってくれるクライアントが現れた。
俺の適当で不器用な広告案が、なぜだか大ヒットしてしまう。

こりゃあまずい。被取締役としての仕事にならない。
いじめられるべき人間が、
いつの間にか引っ張りだこの広告プランナーになってしまうなんて。

またいじめられっこに戻るべき時に、俺は大きな仕事を回される。
それは、「いじめ撲滅キャンペーン」のCM制作だ。

悩んだ。だがいじめられてきた俺だからこそ、できる仕事がある。
役職を守るよりも、この仕事を成功させたい。
俺はそう考えた。

そんな俺に、好青年の三木があることを打ち明けた。
「俺も昔、いじめられっこだったんだよ」

三木の協力を得て俺が考えたのは
「いじめられっこだって世にはばかる」というコンセプト。

過去にいじめられていた人が、
世の中にはたくさん活躍している。
いじめを受けた過去は消せなくても、
それをばねにしてがんばっている人がいることを伝えたい。

このCMは大成功。
俺は生まれて初めて達成感というものを味わった。


TBS・講談社 第1回ドラマ原作大賞受賞作。

おかしくて、最後は思わず涙ぐんでしまう。
失敗、成功、自己の成長という構成はまさに王道。

ついでに沙紀ちゃんとのロマンスもこの小説の王道ぶり(?)に
拍車をかける。

もうめっちゃくちゃありがちなパターンなんだけど、
被取締役というのが面白いじゃありませんか。

読後感良し。
こういう小説につける文句はございません。







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posted by momo at 12:18| Comment(0) | TrackBack(1) | 話題の小説系 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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