俺はとにかく冴えない男だ。
ガキの頃からいじめられっこだった。
大人になっても変わらず、仕事もうまくいかない。
そんな俺が一流の広告代理店の社員募集に応募した。
ただの社会見学のつもりだった。それがなんと、採用。
それも月給20万、年棒3000万という破格の扱いだ。
え?おかしいだろって?
俺の待遇は、表向きは一般社員。その実は被取締役、
とりしまられやくという役職。
広告代理店にはエリートが集まっている。
皆自信過剰で自己主張が強く、
いじめられ役が必要だと経営者は判断した。
つまり俺の仕事は皆のストレスのはけ口になること。
名前も、羽ヶ口信男に変えられた。
一週間に最低3度は遅刻し、叱られ、
皆にバカにされるのが俺の仕事。
いつものことだからへっちゃらだ。
だが、俺にいじわるをしない人間が二人いる。
好青年を絵に描いたような三木と、
沙紀ちゃんというかわいい女の子だ。
偽善者面したいやなやつらだ。
ま、他の人間が俺の悪口で結束を固めたみたいなのでいいとしよう。
社内を十分に不快にさせた俺は、
外の人間にも接するようになった。
俺の失敗を補うべく、部内の結束はさらに高まる。順調だ。
しかし運命ってのはわからないもので、
俺を気にいってくれるクライアントが現れた。
俺の適当で不器用な広告案が、なぜだか大ヒットしてしまう。
こりゃあまずい。被取締役としての仕事にならない。
いじめられるべき人間が、
いつの間にか引っ張りだこの広告プランナーになってしまうなんて。
またいじめられっこに戻るべき時に、俺は大きな仕事を回される。
それは、「いじめ撲滅キャンペーン」のCM制作だ。
悩んだ。だがいじめられてきた俺だからこそ、できる仕事がある。
役職を守るよりも、この仕事を成功させたい。
俺はそう考えた。
そんな俺に、好青年の三木があることを打ち明けた。
「俺も昔、いじめられっこだったんだよ」
三木の協力を得て俺が考えたのは
「いじめられっこだって世にはばかる」というコンセプト。
過去にいじめられていた人が、
世の中にはたくさん活躍している。
いじめを受けた過去は消せなくても、
それをばねにしてがんばっている人がいることを伝えたい。
このCMは大成功。
俺は生まれて初めて達成感というものを味わった。
TBS・講談社 第1回ドラマ原作大賞受賞作。
おかしくて、最後は思わず涙ぐんでしまう。
失敗、成功、自己の成長という構成はまさに王道。
ついでに沙紀ちゃんとのロマンスもこの小説の王道ぶり(?)に
拍車をかける。
もうめっちゃくちゃありがちなパターンなんだけど、
被取締役というのが面白いじゃありませんか。
読後感良し。
こういう小説につける文句はございません。
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