2008年06月10日

人間は瞬間瞬間に、いのちを捨てるために生きている。






芸術家、岡本太郎氏のエッセイ集。
テーマに沿って書かれたものでははく、
いろいろな雑誌などに発表したものを集めた本のようだ。

母のこと、パリへ留学していたときのこと、身辺雑記と、
内容はさまざまである。文章の長さもさまざま。

今日は岡本太郎の母、
岡本かの子氏についてのエッセイを紹介してみようと思う。

岡本かの子は、息子の分析によると童女のような人だったらしい。

純粋、無邪気、幼稚。
世の中を生きていくには困難な性格だったと何度も書かれている。

かの子氏の小説を読んで、
彼女を母性の人だったと言う人が多いそうだが、
実際にはまるで違っていた。

彼女は子供の育て方などまるで知らない人間だったという。
自分が勉強をするために、
子供(岡本太郎)をたんすにひもでくくりつけたりしていたそうだ。

風邪をひいて熱を出しても介抱などせず、
後から太郎がそれを問うと、

「だって病気している太郎なんて、汚くて嫌だわ」

と答えた。

しかし太郎は母を慕っている。
母は母親ではなかった。

だが、一人の女性であり、無邪気な子供であり、
生身の女性と深く関わってきたという思いが
太郎氏にはあるのだという。

そんな母を支えたのは父であった。

「この娘は普通ではないから、結婚するなら一生面倒をみてくれ」
と言われて、かの子氏を嫁に迎えた父。

彼は画家であったが、生活のために漫画を描き始めた。
かの子氏はそれを疎んじ、夫婦の仲は険悪になったこともあった。

だが、父は現実をうまく裁き、
かの子氏が小説家として大成することを支えていたようだ。

父はかの子氏を観音菩薩としてあがめるようにしていた。

普通の親子関係とは違う、芸術家岡本かの子を支え続けた
濃密なつながりが文章から伺える。

かの子氏は後年、

「岡本かの子はパパ(自分の夫)とわたしの間から生まれてきた子よ」

と言っていたそうだ。


岡本太郎氏というと、「
芸術は爆発だ!」という言葉が印象にあるように、
かなり個性的な方のように思える。

しかしさらに、彼の母というのがすごい人物で、
そのことに私は感動を覚える。

まあ、なんとも教養のない言い方で申し訳ないが、
太郎氏が普通に思えるくらい、かの子氏はとにかくすごい。

その母への思慕と冷静な分析。非常に面白かった。

もちろん、後に続くパリでの話、
身辺雑記も独自の感性が見られて楽しめる。

特に食べ物の話は、生き生きとしていて読んでるだけで
お腹が減ってくるくらいでした。

一気に読み上げるという風の本ではないけど、
あっちを開いて、こっちを開いて、
あてのない散歩をしているような気分になれる。








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2008年06月05日

歴史Web―日本史の重大事件がホームページになった!




先に言っておくけど、
関西では「アホ」というのはほめ言葉なのである。
そして、この本を作った人はアホである。

いやあ、めっちゃ面白かった。アホすぎ。筋金入りである。
しかもなんと、勉強になるアホ。

こんな矛盾をやってのけるなんて、
お主ただもんじゃないのう!ほめてつかわす!

もし2000年前から日本にインターネットがあったら、という設定。

日本史上のさまざまな事件をホームページにしています。
有名人のブログもあるという凝りようがすごい。

大化の改新を、弐ちゃんねるユーザーはこう論ずる。

名無しさん 大化の改新キターーーーー!
名無しさん まあ我々庶民には、見てて面白いけどねwwwwwwww

清少納言の枕草子は「枕のぶろぐ いとをかし」。
もちろん、「紫の部屋」なるブログもあって、
そこでは源氏物語が連載されている様子。

このブログってのがなかなか楽しくて、
楠正成のブログタイトルは「ごんたくれ」。

「われ、こら源氏!なにさらしてけつかる!」という記事が笑える。

また、戦国時代には明智光秀もブログを書いていたようだが、
ある日を境に「管理者により削除されました」となってしまう。

光秀の首級もアップされているようだが、
刺激が強いので元服前の童は見ないようにとの注意書きがされている。

江戸時代になると世の中が安定してきたことが見て取れる。
大江戸とらべるなる旅行会社のホームページでは、
ご当地美食と温泉つきのツアーが案内されている。行ってみたい!

井原西鶴は好色一代男をネットで発表したが、なんと課金制。
「おいらん浮世草子!うえぶ官能小説!」なんてあおっておいて
購入ボタンがあるんだもんなあ。
じらすなよ〜!

お買物も楽しそうで、
「値段どっとこむ」なるサイトでは、
太平の世に眠っている武具を高価買取、販売している。
今で言うリサイクル武具のショップなわけだ。

私が一番笑ったのは新撰組のくだり。

業務拡張のため隊士を募集しているのだが、学歴・門閥不問、
出身藩不問。新撰組は京都守護職御預なので安心です!
なんて書いてる。

同じページで「沖田総司の無料壁紙」を配布してるのは、
土方さんの作戦なんでしょうか。

歴史なんて小難しいことのように思えるけど、
その時代を生きていたのも私たちと同じ人間。

その喜怒哀楽が、この面白おかしい本にはいっぱいつまっていて、
書いた人の想像力と共感力には素直に脱帽。

笑える本ですが、知識も身につく。
中学生、高校生の勉強にも役に立つと思います。

世界史バージョンの続刊希望!









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2008年06月03日

愛について




ドイツで25年間読まれ続けている
ベストセラーなんだそうだ。

なんかこう、哲学的であり、実践的な話もあり、
愛情についてつらつらと書いてある。

実は読みながら、何度かうとうとしてしまった本なのだけど、
こういう雨の多い時期にゆったりと読むのにはいいかも。

私たちは、愛というとどうしても誰かとの関係、
主に恋愛関係を思い浮かべがちです。

でもこの本では、まず一人で考えてみよう、と書かれています。

愛を育むのにいちばん大切なのは「愛する心」。

愛するということは所有したいということとは違う。
相手に対し、やさしさ、思いやり、注意深さ、
尊敬の念を持つことだ。

このような状態のときに、ただ相手を愛することができる。
相手の考えや行動を変えたり、
制限したいという気持ちにはならないはずだ。

所有したい、つまり嫉妬の心は恐れから生じる。
相手を失うかもしれないという恐怖だ。

恐怖に恐れずに向き合い、取り除くことが大切だ。
自然にわきあがってくる愛情に心を傾けることができる人は、
自分の愛で幸せになれる人である。

うーん。深いなあ。
恋愛中に、相手の行動ばかりに気を向けていると
かえってこちらが消耗してしまうことはよくある。

相手の好きなところばかり考えていたほうが、
精神衛生にはいいってことかな。

子どもの頃は、親から無条件に愛されることを欲する。
だが、残念なことに世の中の子どもが皆
それを満たされているとは限らない。

条件付で愛された子どもは、
大人になっても相手からの評価を求めがちだ。

そして、相手の共感を求めて行動することは、
相手から操作されることにもつながっていく。

見返りを求めずに愛することは、
自分の自立にもつながることなのである。


恋愛指南書ではない。ドイツ人らしい、
もうただひたすらに愛について考え抜いたという感じの本。

寝る前に読むとゆったりと眠れそう。







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2008年05月08日

知っておきたい天使・聖獣と悪魔・魔獣




いや、好きなんだ、こういう本。

キリスト教を中心に、
世界に伝わる天使、悪魔、想像上の動物についてまとめた本。
イラスト豊富。
ファンタジー小説を書いてる人(いるかな?)には
きっといい資料になると思います。

外国の映画なんかでも、
こういうキリスト教の知識はごく自然に会話の中に出てくるし、
知っているとけっこうおもしろいことが書かれている。

それでは、有名どころの神さま、
悪魔の名前とその解説を少しご紹介。

天使というのはキリスト教、西洋文化の影響が強い考え方である。
神の使いであり、神そのものではない。

天使の代表格と言えるのは、ミカエル、ガブリエル、ラファエル、
ウリエルの四大天使。

中でも人気ナンバーワンはミカエル。
戦う正義の味方のイメージが強いそうだ。

ガブリエルはキリストの誕生を告げた天使、
ラファエルは治療を担う。
ウリエルはちょっと厳しい一面があって、
罪人を業火で焼いてみたりする。

東洋で天使の概念に近いのは飛天という神だ。
日本の天女のような姿をしている。
他にも梵天という仏の使いがいる。
イスラム教にはジブリールという名前の天使が存在する。

神話の中の動物についても説明がある。

キリスト教圏でメジャーなところではやはりペガサス、ユニコーン。
ペガサスは羽が生えた馬で、ユニコーンは角が頭に生えている。

一方東洋ではガルーダという神鳥がいる。
インドネシアの航空会社にもその名前が使われているが、
もともとはヒンズー教の神様だったそう。
今では仏教、イスラム教徒の間でもガルーダはあがめられている。

神の鳥は日本にもいて、
ヤタガラスという三本足のカラスがそれだ。
勝利のシンボルとされており、
サッカー日本代表のエンブレムにそのデザインが施されている。
知らんかった!

悪魔の中でも有名なルシファーは、もとは天使であった。
ミカエルの双子の弟という説もある。
有能な彼は神にそむいて悪魔となり、
地獄の王と目されているが、
その名前は「光を運ぶもの」という意味である。

発明が得意な悪魔ベルフェゴール、牛の顔の悪魔バフォメット、
快楽を求める女性リリス、男女の仲を取り持つというフルフル。
悪魔も多彩だ。

どうです?ファンタジー小説や映画、ゲームが好きな方は
絶対に楽しいはず。
書店で見かけたらぱらぱらやってみてください。







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2008年04月16日

国のない男・カート・ヴォネガット





カート・ヴォネガット。
ドイツ系アメリカ人で、作家として活躍した。
代表作にスローターハウス5などがある。2007年4月に永眠。
本書が遺作となる。エッセイ集。

外国人らしい皮肉とユーモアにあふれた文体で、
環境のこと、戦争のこと、アメリカを評論している。

厳しい文章だけど、根底に人間らしさというのか、
優しさが光っていて、言葉のひとつひとつが大変「きれい」だ。

速読、濫読で、がさつな本の読み方をする私だけど、
この本にはじっくり時間をかけてしまった。
そしてそれを後悔していない。
貴重な時間をありがとう、と思える。

代表作、スローターハウス5は著者自身が経験した
ドレスデン空襲を基に描いたものだ。

「1968年、スローターハウス5を書いた。
わたしはこのときようやくドレスデン大空襲を書けるくらいに成長したといっていい。

ヘミングウェイの書いた兵士の帰還を読むと、
故国に戻ってきた兵士に戦争体験を語らせるのがいかに残酷かということがよくわかる。
戦争について語らない理由は、とても語れるものではないからだ」

また、ヴォネガットは石油を大量消費するアメリカにも警鐘を鳴ら
している。

「わたしはタバコ会社を訴える。
まだ12歳のときからタバコを吸い始めた。
そしてもう何年もの長きにわたって、
タバコ会社はパッケージに書いてわたしを殺してくれると約束した。

ところがわたしはもう82歳だ!この嘘つきどもめ!

しかし、本当は我々は燃料中毒なのだ。
そして現在、我々の指導者たちは暴力的犯罪を犯している。
それは我々が頼っている、
なけなしのドラッグ(=石油)を手に入れるために」

他にも、誠意や思いやりのない政治家、指導者に、
彼は厳しい批判を浴びせていく。
表題の国のない男、というのはドイツ人移民の子として、
やや離れた視点からアメリカを見ているということだろう。

しかし、彼は皮肉な世捨て人ではない。
私が好きなラッダイトの一遍では、彼が人とのかかわりを愛しているのがよくわかる。

ラッダイトとは新しいものが大嫌いな人間のこと。
パソコンが嫌いなヴォネガットは、
原稿が仕上がると封筒を一枚だけ買いに文房具屋に出かける。

そこで気にいりのものを買って、郵便局の列に並ぶ。
さまざまな人を登場させ、ニューヨークの風景を切り取った
すてきなエッセイになっている。

彼の直筆の文字がデザインされた版画も収録されている。
非常に洒落た一冊。プレゼントにもいいかも。






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2008年03月06日

小説を読みながら考えた




「バカの壁」で有名な養老先生が、
小説を読みながら考えたことをつらつらと書きつづっている。

「ミステリー中毒」という本の第二弾なんだそうだけど、
ミステリー小説の書評集だと思って読むと
ちょっとがっかりするかも。

この本では、養老先生はファンタジー小説を
よく好んで読んでいる。

しかし、先生は言う。
ファンタジーなんてバカみたいだ。
現実にありえないドラゴンや魔法使いや騎士などを、
大人が書いて読んでいるなんてバカバカしいことこの上ない。

と言いつつ、「時の車輪」シリーズをアマゾンで一気に買い、
「バーテミアス」を読み、
「シャナラの剣」をかばんに入れて旅行に出かける。

養老先生は、旅行先で読んだ本を破る。
帰りの荷物が軽くなるように、
読み終えた部分を破って捨ててしまうのだそうだ。

これには私は非常に感銘を受けた。
ファンタジーを読むのは暇つぶし。
こういうスタンスは非常に心地よい。

先生の目には、テレビのニュースや現実も、
ある意味ファンタジーに見えるらしい。

ライブドアの堀江社長は会社の時価総額にこだわっていたが、
自社の株価がいかにあがったとしても
自社株を売るわけにはいかない。

つまり、時価総額が高かろうが安かろうが、
現実にはカネにならない。ファンタジーなのである。

そもそも金そのものがファンタジックなもので、
あんな紙切れに価値を見出すのは人間の幻想だ。

養老先生がこういう価値観を持つのは、
この本にも何度か出てくるが、
終戦のときに経験したことが大きいのだと思う。

戦時中によしとされていたものが
すべて封建的の一言で切り捨てられ、
憎めと教えられていたアメリカの文化を諸手を上げて迎え入れる。

価値観が180度変わった経験を持つ先生は、
マスコミの報道すら真実を伝えているとは考えていない。
伝えるものの利益になる情報を流す。
これを当然だと考えている。

少し話は戻るが、先生が本を捨てるのには
「読書はくだらない」というほかにもう一つ理由がある。

それは、本棚に虫の標本箱をしまいたいからだ。
大きさがちょうどいいのだそうだ。

読書はすばらしい、マスコミは正しい、北朝鮮は危ない、
個性は大事、お金がすべて…。
こんな現代のファンタジーから逃れたい方に。

孤独であるが、確立した個とはこういうことかと考えさせられる。




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タグ:養老 孟司
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2008年02月27日

日本語を書く作法・読む作法




新聞や雑誌に発表したエッセイをまとめた一冊。
阿刀田氏は、日本語の現状に危機感を抱いておいでだそうで、
日本語を書く、読むことをテーマにしたものが多くなっています。

阿刀田氏の原稿はすべて手書きなのだそうだ。
必ず、原稿用紙に鉛筆で書く。

鉛筆で書くというのは案外辛い仕事である。
寒い時期には紙の冷たさで軽いしもやけを起こすことすらある。

だからこそ、簡単に書くわけにはいかず、
頭の中で練りに練ったものだけを書いていくことになる。
氏は文章はなるべく短くしたいと思っているそうだが、
紙に書く作業が大変なことが関係しているともいえる。

ワープロ、パソコンなどで文字を書いていると、
どうしても文章が甘くなるような気がする。

また、手書き原稿では推敲のあとを見ることができる。
作家の思考がのようなものかを知る資料になるのに、
キーボードで書かれがものにはそれがないのが残念だ。

手書きの効能として、氏は漢字についても述べている。

山と石で「岩」、木が二つで「林」など、
漢字の成り立ちには意味がある。
手で書くことでこそ愛着がわくのではないだろうか。
そうかもしれないなあ。

今、日本では英語の早期教育が叫ばれている。
しかし、氏は小学校で英語を教えることには反対だ。

日本語は特殊な言語である。英語とは構造が違う。
その論理構造が違う言葉を、
幼い頃から叩き込む必要などないと氏は言う。

日本語は豊かな言語なのである。
そのいい例として、言葉遊びが多彩なことが挙げられる。

能登地方に伝わる遊びで、段駄羅というものがあるが、
氏は最近これを知って大いに気にいっているそうだ。

甘党は ようかんが得手 よう考えて 置く碁石

俳句と同じ五・七・五のリズムで、七のところが
同じ読みの言葉になる。

ようかんが得意(得手)というのと、
よく考えてというのを同じ言葉でかけてしゃれているというわけだ。

後半では、美しい日本語を書く作家を数名あげて
その代表作を解説してくれている。

夏目漱石、芥川龍之介、志賀直哉、半村良、松本清張、
井上ひさしなどの作家たちだ。
中でも、中島敦に関しては
その早世を惜しむ言葉を述べているが、
僭越ながら私も大賛成させていただきたい。
34歳か。早すぎるよ。

面白い本だった。
ただ、やはり、私の未熟な感覚には少し、
いや、失礼なのは重々承知なんだけど、
お年を召した方の文章だな、という印象が。

高村薫という作家がいるが、彼女は、
キーボードがなければ小説など書かなかったと言っている。
手書きとは違うリズムに、
彼女は創作意欲を維持することができたのだそうだ。
といって、彼女の作品が、
文章の甘い雑なものだとは私は思わない。

言葉は進化する。それは乱れであるかもしれないが、
現実である。

と、言いつつ自分にも思い当たることがあった。
私がケータイ小説で目が滑ってしまうのは、
老化の始まりなのかもしれないな。




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2008年02月15日

自分の体で実験したい




これは!久々の大ヒット。人間ってすごい!
好奇心と謎の解明への情熱にひたすら圧倒され続ける。

科学の進歩には実験が不可欠。
その実験を、自分の健康をものともせず
自分自身の体で試してきた科学者たちの記録。人体実験の記録だ。

ジョージ・フォーダイス博士は
人の体がどれだけの熱に耐えられるのかということに関心があった。

1770年代、体温計はあったもののおもちゃのような代物だった。
体温は通常36.7度くらいが平均だと知られていたが、
なぜその温度なのかはわからない。

博士は自分の体を使って、人体と熱の関係を解明しようとした。

蒸気のたちこめる部屋にこもり、まず摂氏32度で5分間過ごす。
次は43度、49度と温度をあげてみた。

心拍数が1分間で145回、普段の倍である。

実験終了後、自分の足で歩くことができず、
家までイスに座ったまま運んでもらったというから、
消耗の度合いが知れようというもの。

さらに実験はエスカレートし、
今度は四人の紳士が仲間に加わった。

服を着たまま65度と72度の部屋に入った。
身に着けた金属製品は触れないくらい熱くなっている。
なのに、人体は36.7度、平熱のままだ!

そのとき、自分の体に触れた一人が
「横腹が死体のようにつめたかった」と記述している。

そりゃあそうだろうよ!

最終的に、彼らは92度の高温にまで耐える。
ここまで来るとおかしいとしか言いようがない。

それでも好奇心は止まらない。また4人加えて合計9人。
今度は127度まで挑戦した。
卵はゆで卵になり、肉はステーキになるほどの高温なのに
人の体は平熱から変わらない。

人の体の熱が平熱と変わらないのは、汗のおかげなのだそうだ。
体内に水分があるうちは、人体は一定の温度に保たれる。
(もし彼らが十分に水分を摂っていなかったらと
考えると恐ろしい)

とにかく、身を挺した実験のおかげで
医者たちは病人の体温に気を配るようになった。
私たちが体温計を使って体調を知ることができるのも、
ひとえに彼らのおかげなのである。

他にも、消化のしくみを知るために
食べ物を木の筒に入れて飲み込んだ男、
自分の体に麻酔をかけまくった男、
炭鉱夫のために一酸化炭素を13回も吸い込んだ男の話などが
書かれている。

ちなみに、一酸化炭素を吸った男の家の家訓は
「耐えろ」というものだったそうだ。

それぞれ独立している話なので、どこから読んでもかまわない。
笑いながら、顔をしかめながらゆっくり堪能できる一冊。

感動はする。スゴイと心から思う。だけど理解はできない。
奇人変人列伝としても大変おもしろい、とにかく最高の一冊。




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新人賞を狙える小説プロット実戦講座




昨日ご紹介した万城目学さんは、
鹿男あをによしがデビュー二作目なんだそうだ。

書けもしないのにえらそうに言うのもなんだけど、
デビュー作だけで消えていく作家さんの多いこと多いこと。

そう考えると、万城目さんの今後がとても楽しみというものです。
楽しい小説、いっぱい書いてくださいな!

まあでも、チャンスをつかまなければ二作目も何もないのである。

小説指南の著作が多い若桜木氏の本。
とりあえず新人賞を受賞しようではないか、というもの。

若桜木氏の通信講座を受講している生徒さんとの対談方式。

この方の書く本はけっこうシビアで、小説を書かない私でも、
どんな風に作家さんが小説を組み立てているのかがわかるようで
とてもおもしろい。

新人賞を受賞するのに必要なことは、何をおいてもまず斬新さ。

作品は、選考委員の目に留まるまでに
下読みと言われる人たちにまず選別される。
その際に、ありふれた作品だとまず、
次の段階に進むことができないのだそうだ。

下読みの段階では、一作にそれほど時間をかけることができない。
いきおい、最初の数ページで落とされることもあるそうなので、
とにかく最初から目を引く設定、書き方をしなければいけない。

しかしがら、ストーリーの展開は
凝ったものを目指さない方がいい。
まずは時系列で書いていくこと。

うんちくを織り交ぜるのもよい。
確かに、知らないことが書かれていると
気になるのが人の性ですねえ。

これ、それ、彼、彼女などの代名詞を多用しない。

主人公が苦労するようにする。
(主人公に都合のいい展開にしない)

さらに、直接的というか即物的ですが、
主人公に走らせることも
お話に動きを持たせるテクニックのようです。

また、気をつけたいのがタイトル。

宮部みゆきの「理由」、東野圭吾の「手紙」。
それぞれ有名な作家さんの本だからこそ評価されるものの、
新人賞の応募でこれではインパクトがなさすぎる。

確かに、山崎ナオコーラの「人のセックスを笑うな」。
これはおもしろいのはタイトルだけという
体たらくでしたしねえ。
タイトルで目立つというのは有効なテクニックみたい。

小説、読むのが好きな方にもおすすめ。
こんな風にお話は作られていくのだという
舞台裏を見る思いになります。




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2008年02月14日

生物と無生物のあいだ




文系の私には難しかった。
でも、飽きなかった。

文章がとても読みやすい。
単調でなく、例えも上手。
著者の研究時代のこともよく書かれていて、
学者の世界の大変さも垣間見せてくれる。

生物学に関する読み物といった感じの一冊。

さて、生物学なんてぜんぜん詳しくない私だけど、
DNAという言葉くらいは耳にしたことがある。

今では誰もが知っているそれが、
発見されるまでには熾烈な科学者たちの競争あった。

DNAの構造を解明し、ノーベル賞を受賞したのは
ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックという
二人の学者である。

しかし、彼らにヒントを与え、
そのことを知らないまま亡くなった女性がいるのだ。

彼女の名前はロザリンド・フランクリン。
彼女は、DNAにX線をあてて解明するための研究をしていた。

フランクリンは上司とうまくいっていなかった。
そしてその上司が、あるときワトソンに一枚の写真を見せる。

それこそが、ノーベル賞受賞のヒントとなるDNAのX線写真であった。

それまでにも、
遺伝子の本体がDNAであると示唆していたエイブリー、
DNAを構成する4つの文字の質量が
同じであることをつかんでいたシャルガフなど、
ワトソンとクリックのいわば踏み台になった人たちがいることも
興味深かった。

さて、二人が解明したDNAだが、
それがらせん状の形態であることも、私たちは知っている。

なぜらせん状で対になっているかというと、自己複製を行うためだ。
互いに補完しあい、複製しあって
情報を安定的に保持しているのである。

私たちの体は、目には見えないが日々生まれ変わっている。
病気になったり、ストレスで傷ついたたんぱく質は、
日々取り除かれ、新しく作りかえられているのだそうだ。

マウスにプリオンタンパクを欠損させる実験を行った話がある。

牛の脳にあるプリオンタンパクに異常が生じると狂牛病になるが、
それではこのマウスはどうなったのか。

結果、プリオンタンパクがなくても健康に、
寿命を生きたそうである。
DNAにより、ない「部品」を補う働きがあったのだそうだ。

が、異常プリオンを組み入れたマウスは
異常行動を見せて死んでしまった。
部品がないほうがいっそ長生きできたのである。

中身の部品の全くないテレビが写っているのに、
一つ部品が壊れたテレビは動かない。
こんな不思議なことが、生命体にはある、と著者は書いている。

生物とは、生命とは、と思って読み始めるとやや肩透かし。
それについては、「生物とは自己複製をするものである」とあるが、
あまりそれに関する記述はない。

ただ、複雑な体のはたらきを知ると、生物って奥深いとは思う。




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2008年01月11日

楽しいロンドンの美術館めぐり




早稲田大学エクステンションセンターの
人気講座なのだそうだ。

小難しい文章ではない。わかりやすくて、ちょっとセレブな(?)
観光ガイドを読んでいるような気分になります。

それにしてもロンドンには
たくさんの博物館や美術館があるんですね。
そんなことも知らなかった私はただ驚くばかり。

これらの博物館ができたのは、18世紀、
ヨーロッパで興った啓蒙主義の影響であるらしい。
世界の文化や美術、歴史を知らしめるための努力には
ひたすら頭が下がる。

ナショナル・ギャラリー、テイト・ブリテン、
ウォレス・コレクション、レイトンハウス、
ギルドホール美術館など、
ロンドンにある博物館、美術館はほぼ本書で紹介されている。

その中で、有名な(私が知っているほどだから有名なんだろう)
ものをご紹介。

まず、やはりここは大英博物館でしょう。

大英博物館の基礎は、18世紀、
医師であるスローン卿によって築かれた。
彼は自分の収集物を、「珍にして奇なり。」と書き残している。

世界の珍しいものを集めた、というコンセプトなのが
なんだか面白い。

この博物館は250年の歴史を持ち、収蔵物の数は700万点近く。
その大部分は倉庫に眠っているそうだが、
それでも15万点の収蔵物が展示されているそうだ。

これだけの展示物がありながら、
この博物館は入場料が無料である。
また、リーディング・ルームという資料室があるのだが、
現在はすべての来館者が入ることができる。

ロゼッタ・ストーンや死者の書、
パルテノン神殿の大理石彫刻群など、見るべきものは多い。

この大理石の彫刻をエジプトから運ぶため、
私財をなげうち、そのために妻を失った貴族がいたそうだ。

人間のコレクションに対する情熱と、
それによって救われた美術品を考えると、
なんともいえない気持ちになる。

また、ナショナル・ギャラリーには
貴重な絵画がたくさん展示されている。

これはもともと一個人のコレクションだったようだ。
紆余曲折を経て、ギャラリーの設立から7年後に
ようやく名実ともに国営、つまりナショナルな美術館として
議会に承認される。

ここにはダ・ヴィンチ、レンブラント、ラファエロ、
ゴッホなどのヨーロッパの有名な画家のコレクションが、
バランスよく収蔵されている。

そして、ここも入場は無料なのだ。すごいや、イギリス!

紅茶でも飲みながら、うっとりとページをめくると、
非常に豊かな気分になれる。こんな本は貴重。




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2007年11月30日

センセイの書斎




壮絶というか、うらやましいというか。

小説家、評論家、文学研究者、古書店…。

さまざまに本に関わる仕事をしている人たちの書斎を
文章とイラスト入りで紹介している。

妹尾河童さんが
「河童の覗いたトイレまんだら」という本を書いているが、
まさにあんな感じ。
イラストの精密さも妹尾さんに似ている、と思う。

登場する人物は(敬称略)、

林望、萩野アンナ、静嘉堂文庫、
南伸坊、辛淑玉、森まゆみ、小嵐九八郎、
柳瀬尚紀、養老孟司、逢坂剛、米原万里、
深町眞理子、津野海太郎、石井桃子、佐高信、
金田一春彦、八ヶ岳大泉図書館、小沢信男。
品田雄吉、千野栄一、西江雅之、清水徹、
石山修武、熊倉功夫、上野千鶴子、粉川哲夫、
小林康夫、書肆アクセス、月の輪書林、
杉浦康平、曾根博義。

皆それぞれ、個性が出ていておもしろい。

だんとつに汚いのは佐高信氏の書斎。
床中に紙が散らばっていて、
どうやって資料を探しているのか謎。

整理が見事なのは通訳者の米原万里氏。
辞書とファイルがぎっしりで、情報が整理されている。
この方、本一冊書くのに
資料が段ボールひとつ分必要なのだそうだ。

森まゆみ氏の書斎には小さな台所がついている。
テーマを決めると10年は追いかけるそうだ。

今、研究している林きむ子の生原稿を
大事そうに手に取るイラストがある。

小嵐九八郎氏は、書いた小説を革命仲間から
「もう書くな」と言われ、家にいられなくなったそうだ。

以後住所不定で放浪しているそうで、今の住まいは17ヶ所目。

一部屋を段ボールが埋めつくし、
その中には自宅に送る本がぎっしり…。

養老氏の書棚の上には虫の標本がすらり。

千野栄一氏はスラブ語学者なのだが、
チェコ語の本をたくさん所有されている。
装丁がきれいで楽しいのだそうだ。

本の読み方が凄まじいのが逢坂剛氏。
びっしりとふせんをはって、それにピンク・青・水色のペンで
細かく文字を書き込んでいる。
洋書が多いのも特徴。

こうやって見ていると、本の整理の仕方だけではなく
その人の本に対する考え方も見えてきて楽しい。
うわべだけではなく、
血肉になる読書というのはこういうことなんだろうなあ。

書店で見つけたらぜひ手にとってぱらぱらめくっていただきたい。
本好きならうらやましくて絶叫しそうになることうけあい。




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2007年11月26日

間違えると恥ずかしい日本語500




コンビニで思わず手にとって、
ぱらぱらページをめくると恐ろしくなって
そのままレジに持っていってしまった。

言葉には気をつけているつもりなんだけど、
意外と知らないこととか、
間違っていることがたくさんあることに気がついた。

ふう。教養がないのが明るみになるな。
と思ったらこれが誤用。正確には「明るみに出る。」

このように、間違って使われることが多い日本語を、
常識以前、入門、常識、初級、中級、上級、最上級と
分類して説明してくれている。

・脚光を集める。 正解は「脚光を浴びる。」

・体調をこわす。 正解は「体調を崩す。」

・口数が減らない。 正解は「口が減らない。」

この辺は常識以前なので、
本好きのみなさんなら簡単にクリアでしょうか。

初級になると、私も時々使ってしまう言葉がある。

・感心しました。 
これは目上の人には使わない。
正解は「敬服しました。」

・この親にしてこの子あり。 
元来は子供が立派なのは親が立派だから、という意味。
だらしがない親子をさす場合は、「親が親なら子も子」が正解。

・前人未到の秘境は存在しない。 
正解は「人跡未踏の秘境。」
前人未到は誰も出したことのない記録などに使う。

上級。

・味あわされる。 
正解は「味わわされる。」

・肉迫する。 
広辞苑でも最近は認められているが、正確には
「肉薄する。」

・塩を多いめにいれる。 
「塩を多めにいれる。」
これ、実は私も使っていました。

じっくり活字で読むと間違っているのがわかるけど、
意外にこういう言葉を使う人は多い。
達人レベルではこうだ。

・喧々諤々(けんけんがくがく)
本来は
「喧々囂々・侃々諤々(けんけんごうごう・かんかんがくがく)」 二つがまじっちゃったわけですね。

・願わくば。 
これ、間違いなんだ。正解は「願わくは。」

・いやがおうにも。 
正解は「いやがうえにも。」

他にも、×泥試合→○泥仕合、×恩の字→○御の字、
×正真証明→○正真正銘、×自我自賛→○自画自賛、など、
漢字の誤用もある。

ペーパーバッグ。軽い本なので
かばんの中に一冊いかがでしょうか。




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2007年07月21日

夜露死苦現代詩




都築響一という名前には見覚えがある。
誰だったかな、と思ってネットで調べてみると、
TOKYO STYLEという写真集を出した人だということがわかった。

TOKYO STYLEは、東京で暮らす個人の部屋を撮影したもの。
きれいでもおしゃれでもないの部屋ばかりで、
他人の暮らしを覗き見しているような
不思議な気持ちになる本でした。

さて、その都築響一が、今度は現代詩を語っている。

前書きでこう書く。

「現代詩は行き詰って、
難しくすることで生き残ろうとしている。
でもね、芸術は落ちこぼれに救いの手を差し伸べる
命綱だったはずだ。」

そして、子どもたちが夢中になっている
エミネムのヒップホップや、
神社に吊り下げられる素人の俳句や、
痴呆老人のつぶやきにこそ、
リアルな詩がある、と言う。

いいなあ!こういう感性。

著者は、死刑囚の俳句、エロメディアのコピー、
餓死した老女の日記、
パソコン携帯の変換ミスなどにも「詩」を見出す。

たとえば、暴走族の特攻服。
あれ、いろんな言葉が書かれてますが、
彼らのルールでは「他人のフレーズをパクること」が
最大のタブーなのだそうです。

申し訳ないけど、漢字の勉強をまじめにしたとは思えない
(ごめんなさい)子どもたちが、懸命にオリジナルで、
心をつかむ言葉を考えて苦悩してるなんて、
これはすごいことじゃないか。

そうやって考えた「詩」を、刺繍するんだけど、
一文字100円、大きい文字になると1000円という、
けっこうなお金がかかる。

しかも、警察の取り締まりも厳しくて、
刺繍をする業者には指導が入ることもあるのだという。

15やそこらの人生を賭けて必死で考え、
なけなしのお金を握りしめて作った晴れ着も、
卒業式に着て行けば教師に取り押さえられる。

そのくだらなさに、著者は芸術を見出している。

天からもらったこの命
咲いて散るのが我人生
一生一度の青春を
地獄で咲かせて天で散る

シュールだ。

感情を動かす言葉。
崩れる心をつなぎとめる言葉。
それを探すものが詩だとすれば、現代詩は死んではいない。

いいです。この本。
私は好き。



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2007年07月05日

夜露死苦現代詩




都築響一という名前には見覚えがある。
誰だったかな、と思ってネットで調べてみると、
TOKYO STYLEという写真集を出した人だということがわかった。

TOKYO STYLEは、東京で暮らす個人の部屋を撮影したもの。
きれいでもおしゃれでもないの部屋ばかりで、
他人の暮らしを覗き見しているような
不思議な気持ちになる本でした。

さて、その都築響一が、今度は現代詩を語っている。

前書きでこう書く。

「現代詩は行き詰って、難しくすることで生き残ろうとしている。
でもね、芸術は落ちこぼれに救いの手を差し伸べる
命綱だったはずだ。」

そして、子どもたちが夢中になっているエミネムのヒップホップや、
神社に吊り下げられる素人の俳句や、
痴呆老人のつぶやきにこそ、リアルな詩がある、と言う。

いいなあ!こういう感性。

著者は、死刑囚の俳句、エロメディアのコピー、
餓死した老女の日記、
パソコン携帯の変換ミスなどにも「詩」を見出す。

たとえば、暴走族の特攻服。
あれ、いろんな言葉が書かれてますが、
彼らのルールでは「他人のフレーズをパクること」が
最大のタブーなのだそうです。

申し訳ないけど、
漢字の勉強をまじめにしたとは思えない(ごめんなさい)
子どもたちが、懸命に、オリジナルな、
心をつかむ言葉を考えて苦悩してるなんて、
これはすごいことじゃないか。

そうやって考えた「詩」を、刺繍するんだけど、
一文字100円、大きい文字になると1000円という、
けっこうなお金がかかる。

しかも、警察の取り締まりも厳しくて、
刺繍をする業者には指導が入ることもあるのだという。

15やそこらの人生を賭けて必死で考え、
なけなしのお金を握りしめて作った晴れ着も、
卒業式に着て行けば教師に取り押さえられる。

そのくだらなさに、著者は芸術を見出している。

天からもらったこの命
咲いて散るのが我人生
一生一度の青春を
地獄で咲かせて天で散る

シュールだ。

感情を動かす言葉。
崩れる心をつなぎとめる言葉。
それを探すものが詩だとすれば、現代詩は死んではいない。

いいです。この本。
私は好き。




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2007年06月26日

インド式計算暗算ドリル




「今のIT産業は1と0の二進法を使っている。
だから、0を発明した我々に、特許料を払うべきだ。」

これはインドのIT大臣のジョーク

今、インドでIT産業が目覚しい発展を遂げているのも、
インドの人たちが数学に優れた人種だからだという。

インドの小学校では、
99×99までの九九を教えているともいう。

そんなインド式の計算方法をご紹介。
日本とは考え方がぜんぜんちがう。

苦手だった計算が、
まるでゲームのようにできてまうという、
とてもおもしろいやり方です。

もっともよく使う、1000の引き算をやってみましょう。
1000円札を出しておつりはいくらか、簡単に計算できます。

1000−269を暗算してみます。

百の位は、足して9になる数字を見つける。
この場合、9−2なので、7。

十の位でも、足して9になる数字を見つける。
9−6で、3。

一の位は、足して10になる数字。
10−9で、1。

順番に出た数字を並べて、答えは731です。
え、と思う間に解けちゃいます。

次は、2×2がポイントの掛け算。

25×18=

これ、簡単に暗算できます?
インド式を使えば楽勝ですよ。

考え方は、この計算の中に「10倍」を見つけること。

この計算式を分解すると、
5×5×2×9であることがわかると思います。

そして、順番を並べ替える。

5×9×2×5、つまり5×9×10なわけです。

そうすると、日本人なら小学生でもできる
九九で解ける計算式が浮かび上がります。

うーん。
そこにたどり着くのが難しい気もするけど、
覚えてしまえば楽にできるようになる気もする。

こんな考え方もあるのか、と思わされる。
一週間のはじまりに、頭の体操にはとてもいい一冊です。

インド式計算ドリルという本もありますので、
興味のある方はぜひ、ご覧になってみてください。




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2007年06月11日

おとぎ話の生物学




著者は、自称道草研究家という
ちょっとユニークな農学博士。

おとぎ話に出てくる生き物に関するウンチクをまとめた本。

カメと競走して、途中で眠ってしまい、勝負に負けたウサギ。
なぜ、ウサギは途中で眠くなってしまったのか。

秘密はウサギの耳にある。
ウサギは汗腺の発達が悪いので、
耳に風をあてて血液を冷やしている。
速く走ったために、耳に風を受けることができず、
オーバーヒートしてしまったのです。

これがカメの策略なのだから、
ウサギはかわいそうなことこの上ない。

また、海の底の竜宮城で300年も過ごしたという浦島太郎。

時間の経過は、体の大きさによってちがう。
ハツカネズミとゾウでは、
ゾウの方が時間の進み方はゆっくりである。

以上から、浦島太郎は竜宮城で巨人になっていた、
と著者は考えている。ほほう。

子豚が狼に襲われる三匹の子豚では、
日本古来の狼について語られる。

日本では、狼は決して恐れられる生き物ではなかったという。
狼の語源は大神。日本人にとっては敬うべきものだったのだ。

何しろ日本狼は、西洋の狼とちがって小柄である。
中型犬くらいの大きさで、夜道で狼に会っても、
「お犬どの、どうか油断なく鹿を追ってくだされ」と
挨拶する地方もあったという。

送り狼という言葉がある。
現代では、男性が女性を送って乱暴を働く、
という悪い意味で使われているが、
もともとはちがうらしい。

狼は、自分の縄張りに入った人間を監視するために
人間の歩く後をついてくる。
人間が逃げたり、転んだりしない限り襲ったりはしない。

狼がいるので他の生き物も近寄ってこないし、
人間にとってはしごくありがたい、
安心できることであったのだそうだ。

大して役には立たないかもしれないけど、
知ってるとおとぎ話が深く感じられる。
まさにおとぎ話トリビア満載。

週末です。
ご家族との話題にもなかなか面白い一冊ではないでしょうか。





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2007年06月06日

ヤバい経済学




アメリカに経済学ブーム
巻き起こした本、と説明にある。

世の中で起こる事象を、経済学的な観点から説明した本。
社会学?と思うような事柄も多い。

目の付け所がいい。

相撲の力士と八百長の可能性。
ヤクの売人はなぜママと団地に住んでるの?
中絶率と犯罪率の関係は?

こんな、ちょっとダークな事柄に、
この経済学者は目をつけて研究する。

さて、いろいろなテーマの中から面白かったのをひとつご紹介。

不動産屋さんとク・クラックス・クランは同じ、というもの。

ク・クラックス・クラン(以下KKK)は、
アメリカの白人男性の結社。
白い頭巾と衣装で、
アフリカ系アメリカ人をリンチにかける、
というイメージのあるあの集団です。

実際にはそれほど暴力的な組織ではなく、
白人以外の人種を嫌いな白人男性の、
いわば「秘密クラブ」のようなものであった。

それを取材し、明らかにした
ジャーナリストの話が書かれている。

彼はKKKに潜入し、といっても、
入団するには15ドルほど支払って
例の衣装を購入するくらい。

KKKは暴力沙汰とは程遠く、
実際には大人の男が集まって秘密の言葉で話し合ったり、
儀式をして楽しむ「オタク集団」だったのです。

彼はその秘密の言葉を、
なんとアニメ番組のスーパーマンの製作スタッフに教えます。

自分たちの「秘密基地での儀式」がアニメになって、
全国で暴露されてから、KKKは脱退者が続出。

カッコイイと思ってやってたことが、
子供たちにまねされるようになってしまうと、
とたんにカッコワルク思えてしまったわけですね。

情報を独占し、出し惜しみするという点で、
KKKと不動産屋は同じ商売の仕方をしている。

売り手の情報、買い手の情報を管理することで
商売が成り立つ不動産業。

これが消費者同士で情報を共有されてしまうと、
不動産屋さんの商売は成り立たなくなる、という理論。

お勉強になる本ではない。読み物として、楽しく読める一冊。
世の中を、ちょっと違った視点で見てみようという方、
ぜひどうぞ。





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2006年12月21日

補給戦―何が勝敗を決定するのか   




「欧米の戦争・戦略関係の大学、
陸軍士官学校などでは必ず文献リストのトップに挙げられる名著」
アマゾンの読者レビューより)

翻訳本としては長い間絶版状態が続いていました。
内容も深く、また読み応えあり、
文庫にしては飛びぬけて高い値段ですが、
それだけの価値のある一冊です。

戦争というと、どうしても戦車とか、戦闘機とか、
兵士の勇敢さがクローズアップされがちです。

でも、それらをスムーズに機能させるのは、兵站、
つまり「軍隊を動かし、かつ軍隊に補給する実際的方法」
がうまくいくのが最低条件。

16世紀からノルマンディー上陸作戦まで、
ヨーロッパで行われた軍事活動を、補給の面から分析しています。

16世紀のヨーロッパの軍隊は、ものすごい大集団だったんですって。

家のない人たちの集まりで、
兵士、兵士の家族、召使、商人などが集団で動いていた。

オランダのある伯爵には、942台の荷馬車をつれて、
そのうち129台が、幕僚とその荷物だったのだとか。
なんだかのんびりしてますな。

その当時、補給部隊などを軍隊が持つことはなく、
基本的にはその場で調達するのが常。

だから、集団である軍隊が一箇所にとどまることができず、
食料と馬のえさを求めて、
戦場を移動するのが当時の軍隊行動の基本だったんだって。

それにしても、この馬のえさというのがクセモノらしいですね。
たくさん食べるし、集団だし、なくてはならないし。

そんな中で、ナポレオンは軍需品や、
食料の倉庫をつくり、輸送隊を作った。
ただ、道路事情の悪さから、効果は今ひとつなかったみたい。

ナポレオンのロシア遠征の失敗はロシアの冬の寒さのせいと
世界史の授業では習いましたが、

実際には、
・ロシアの道路事情の悪さ
・物資輸送路としてあてにしていた川が浅すぎて、
 補給がうまくいかなかった

など、補給面での失敗もあるようです。
でも、実際には現地調達がうまくいって、
それほど飢えはなかったみたいですが。

20世紀にはヒットラーがロシアに遠征していますが、
彼もロシアの道路事情には苦労させられたらしい。

ヒットラーの時代には、軍隊に自動車が登場しますが、
・タイヤが足りなかったこと
・ロシアで現地調達したガソリンが、
 ドイツ軍の自動車には適さず、精製施設がさらに必要だったこと

上記の点で、自動車を生かしきれたとは言いがたいそうです。

戦争っていうのはつくづく、大規模な消費活動なんだと
実感させられる。

素人の私が読んでも、何の役にも立たないし、
理解もできてはいないと思うけど、大変知的で、
飽きない一冊でした。

お正月の長期休暇に、少し時間のある方はいかがでしょうか。




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聖書の謎 聖書の疑問




出典がはっきりしなくて申し訳ないですが、
ヨーロッパの道徳教育の基本はキリスト教。
日本では、それにあたるのは武士道である」
みたいな話を聞いたことがあります。

ブッシュ氏は、演説でしょっちゅう神という言葉を使うし、
昨日見たサッカーの試合でも、
選手は自然に十字架をきっている。

キリスト教圏の人たちにとって、
キリスト教の教えは日常に溶けこんでいるんですね。

この本の帯に、
「『ダ・ヴィンチ・コード』『十戒』『インディ・ジョーンズ』。
あの言葉も、こんな事実も聖書がルーツだった!」
という言葉があって、これで強烈に興味がわいたんです。

確かに、映画を観ていても、本を読んでいても、
キリスト教が背骨にない人間には理解しがたい部分というのはある。

それは、キリスト教を背骨に持った人が創ったものだからなんだろうな、
というのはうすうすわかってた。

いつか聖書を読んでみたいと思ってたものの、
できなかった私にはすごく面白かった一冊。

項目ごとに分かれていて、ちょっとした辞典みたいなので、
気軽に読めるのもよし。

聖書で出てくる地名、有名なところも解説あり。
イエスが生まれたナザレ、
ノアの箱舟がたどり着いたアララト山、
エルサレムの丘のひとつで、
イスラエルの王ダビデが他民族から奪った土地、シオン。

ちなみに、その後、シオンとはエルサレム全体を指すようになり、
イスラエルの民に与えられた土地という意味になったのだとか。

また、
モーゼが海を割った十戒の有名なシーンや、
湖の上を歩いたり、水をワインに変えたキリストの奇跡も、
「聖書のハイライト」として説明されている。

ダ・ヴィンチ・コードで、
ヒロインが水の上を歩こうとするシーンがあるけど、これが由来なのね。

また、今日一般的に言われていることと聖書の実際と違う点も
いくつか書かれています。

モーゼが、十戒という映画で海を二つに割りますが、
これは実際には「葦の原」だったんだそうです。
うーん、ちょっと迫力がないなあ。

まが、イブが食べたのは、
別にりんごとは聖書には書かれていないんだとか。
「食べてはいけないもの」というのが、聖書の言葉だそうです。

知ってたら、きっと映画や旅行が楽しくなる。
そんな知識がたくさんの本でした。




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