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2008年06月26日
中山可穂という作家を、
知ってはいたけど手に取ったことがなかった。
読んでみようという気になったのは、
メールをやりとりしている方に教えてもらったからです。
今まで私は、どこか今の小説をバカにしていたところがある。
あざとい感動量産型、映像化を見据えた娯楽型。
楽しいけれど、それなり、それなり、と考えていたのだ。
ああ、違うんだな、と思った。
こういう小説を書いている人はいるんだな、と思った。
人の狂気、恋愛、読んでいて、
現実から乖離しそうになる緻密な文章。
寡作な作家さんだそうですが、
なるほど、こういう文章を書くというのは身を削ることだろうと得心がいく。
タンゴをモチーフにした短編5編。この作品に2年を要したそうだ。
本日は、表題作になっているサイゴン・タンゴ・カフェをご紹介。
雑誌記者の孝子は、取材のためにベトナムのハノイを訪れていた。
仕事を終えて、
しばらくは有給休暇をとって旅を楽しむつもりである。
そのカフェを見つけたのは偶然だった。
ハノイの市街にある、小さなカフェ。
タンゴの曲がかかるその店のオーナーは、
日本人の小説家の女性だった。
彼女、津田穂波はもう20年そこに住んでいるという。
日本からは失踪するようにして消息を経っていたが、
今でもコアなファンを持っている。
孝子の上司も、かつて穂波を担当していたことがあり、
その行方をずっと追い続けていた。
穂波は、美しい恋愛小説を書くが、寡作な作家であった。
長く筆を折っていたが、
ある日、狐塚という女性編集者が彼女の元を訪れる。
穂波は同性愛者であった。そのことは世間に公表してある。
そして狐塚も同じセクシュアリティであることを穂波に告白する。
穂波は狐塚の中に美しい湖があると言い、
狐塚はその湖で穂波を憩わせてあげたい、と言う。
こんな恋愛の表現があるだろうか。
編集者と作家として、人間として、二人は愛しあい、
一つの作品を生み出す。
しかし、その後狐塚は編集者であることをやめ、穂波は失踪する。
狐塚は、編集者としての洋々たる未来を捨てたわけであり、
穂波にしても、
作家としての新境地を拓いたばかりの出来事であった。
さまざまな憶測が飛んだが、二人はこの20年、
ついぞ文学界に姿を見せることはなかった…。
タンゴを踊ることで愛情を交換する。
この作家がどうしてタンゴに惹かれたのかは私にはわからないが、
しかし、恋愛小説にタンゴの味付けというのは、
非常に深いものだとわかった。
まあそれにしてもあれですわ。
文章そのものが美しい作品なので、
本当はこういうあらすじの紹介って野暮なのよね。
ぜひ、本を手にとってご堪能くださいませ。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年06月18日
渡辺早季という女性の手記という形で語られる物語です。
上巻
早季が育ったのは、神栖66という町だ。
7つの郷からなる町で、人口はおよそ3千人。
水路が張り巡らされ、人々はカヌーで行き来する。
成人人口の約半数が教育関連の仕事についており、
子供たちは豊かな自然とともに穏やかに生活していた。
どうやら、この世界は現代から数千年後、
いったん文明が滅びたあとらしい。
人々は呪力という超能力を備えており、
子供たちはそれを会得してから小学校を卒業する。
早季の友達は4人。真理亜、守、覚、瞬だ。
真理亜は遠い祖先が外国の人らしく、赤い髪をしている。
実は他にも友達がいた記憶があるのだが、
どうしても思い出すことができない。
とにかく、5人は仲良く成長し、
全人学級という中学校では同じ班として呪力の勉強を続けている。
彼らの社会では、
妊娠に及ぶ行為以外の性的接触が禁止されていない。
むしろ奨励されている。
同性愛もタブーではない。
覚は瞬を愛し、早季も瞬に恋をしつつ、真理亜と情交を結んでいる。
ある日、5人はカヌーに乗って校外学習に出かける。
彼らは禁止された区域に入り、
古代の図書館の端末だという不思議な生き物に出会う。
その生き物、ミノシロモドキは、
古代の人間は皆が超能力を持っていたわけではないという。
超能力を持った人間が現れ、
持っていない人間を虐殺した過去の歴史を知り動揺する5人。
彼らが性的接触を禁じられていないのは、ストレスを和らげ、
人間が持っている攻撃性を低めるためだと説明される。
逃げ出す途中、バケネズミという
人間ほどの大きさのげっ歯類に襲われ、
覚と早季がつかまってしまった。
バケネズミは、人間に仕えるものだ。
下等なげっ歯類だが、ある程度の知性を持っている。
町で労役をし、人に逆らわない限
りはコロニーでの生存を許されている。
逆らったときにはコロニーは全滅させられるのが定めである。
早季たちを襲ったのは外来種であり、
人間に忠誠を誓うスクィーラというバケネズミに救われ、
いったんは無事に町に帰ることができた。
しかし、異変は続く。
ある日、瞬の呪力の暴走し始め、
町の人々が恐れていた「業魔」に堕ちてしまう。
呪力が理性で抑えきれなくなり、
攻撃性を持った人間のことをそう呼ぶのだ。
瞬の存在は町から消され、彼に淡い恋心を抱いていた早紀も、
愛し合っていたはずの覚も、彼の記憶を失ってしまう…。
下巻
渡辺早季には親しい友人が3人いる。
友人たち。真理亜、覚、守。
もう一人誰かいたはずなのに思い出すことができない。
早季たちは昨年校外学習に出かけ、そこで禁忌の知識を得た。
禁止されている地域で、
ミノシロモドキという古代の図書館の端末から聞いたものだ。
かつて人間は凶暴性を備えており、互いに虐殺しあった。
早季たちには、同類を殺すと
自らも死に至るというプログラムが組み込まれている。
町の人たちは、人間に備わっている攻撃性を異常に恐れているのだ。
そのため、異変が起きた子供を
人知れず抹殺していることに早季たちは気がついていた。
そのような知識を得たものが許されるはずもなく、
まもなく守が「排除」の対象になる。
町から逃げ出す守と、彼を助けるためについてゆく真理亜。
早季と真理亜は再び会うことはなく、
大人になった早季に真理亜たちの死の知らせが届く。
夏祭りの日、神栖66はバケネズミの襲撃を受ける。
なんとそれは、かつて早季たちを助けた
スクィーラが率いる軍だったのだ。
下等動物とさげすんでいたバケネズミたちは、
町の水路すら利用する、見事な作戦のもとに攻撃を加えてくる。
しかし、バケネズミには呪力がない。
呪力で対抗しようとした人間たちだが、
バケネズミ側に呪力を使う人間がいるのを知り、
町は恐慌状態になった。
呪力を持ち、攻撃性を備えた人間。
悪鬼と呼んで恐れていたものが目の前にいる。
呪力で人間を虐殺している様子に、町は絶望にとらわれる。
決死の思いで町を脱出した早季は、死の都市東京へ向かい、
呪力に対抗するサイコ・バスターという
古代の武器を手に入れようとする。
ヒルやダニに襲われながら、
なんとかそれを手に入れた早季のもとへ、悪鬼が現れる。
赤い髪の少年、それは真理亜と守の子供であった。
絶望する早季に、懐かしい声がささやく。
少女時代に恋をした少年、瞬の名前を、早季は思い出す。
読んでいて、その世界観に打ちのめされる。
バケネズミには嫌悪感を抱くが、彼らにも言い分がある。
生殺与奪を人間に握られ、
コロニー同士の戦争でさえ事前の許可がいる。
逆らったら皆殺しである。
そのような中、バケネズミの解放を願って立ち上がったスクィーラ。
だが、兵士を薬で中毒にさせるなど、
残虐性は受け入れられるものではない。
しかし、そのような背景があることで、
人間たちの傲慢な正義が醜くみえるのも事実である。
また、ここではあえて書かなかったのだけど、
バケネズミがどうして知性を持っているのか。
消えていった、超能力を持たない人間はどこへ消えたのか。
それを知ると、人の醜さに、まさに反吐が出そうになる(失礼!)
人間の業を、いやというほど見せられる作品。
力作。これを読まないのはもったいない。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年06月13日
映画化されるんですって。
有名な作品なので、ご存知の方も多いと思います。
中学生になったまいは、学校へ行くことができなくなってしまった。
祖母の家に預けられることになったのだが、
母が電話口で話していた言葉がまいの脳裏から離れない。
「生きにくい子」「扱いにくい子」
実際に自分でもそうだと思う。
だが、祖母は
「感受性の強い自慢の孫。あなたは魔女の子孫だから」
と言ってくれた。
祖母はイギリス人である。日本に憧れていて、
英語教師としてこの国にやってきた。
一人暮らしをしながら、鶏を飼い、ハーブを育て、
いわゆるスローライフを実践している人である。
祖母の母には不思議な力があったそうだ。
そして祖母も魔女の修行をしている。
まいはそれに惹かれ、自分もその修行をしたいと祖母に告げる。
魔女は、自分のことは自分で決める。
強い意志を持たなくてはいけない。
そのために、決めたことを地道に粘り強くやり続けること。
第一歩として、規則正しい生活をしなさい。
そう祖母は言う。
今まで2時まで起きていたまいだが、
自分で決めて11時に寝て、7時に起きる生活を始める。
鶏の産んだ卵を取り、ハーブティをいれ、
祖母と二人で野いちごを摘む。
大きな鍋で煮てジャムにするためだ。
シーツを洗濯するにも、庭で大きなたらいの中で足で踏んで洗う。
家に洗濯機がないのだ。
二人でシーツをねじって絞るのだが、
生き生きとした暮らしの描写がすばらしい。
ついでに言うと、ジャム作りの場面もまた素敵だ。
摘んできた野いちごを大鍋に入れてかまどにかけ、薪で炊く。
なんつーか、カントリーライフへの憧れを
存分にかきたててくれる物語なのである。
途中、鶏が夜のうちに何かに殺される事件が起きる。
生き物のばらばらになった死体にショックを受けるまい。
そして祖母との語り合いの中で、まいは死について考える。
冷静に読むと、やや消化不良の感は残る。
家事にほぼ一日を費やす祖母と、仕事を持っている母との軋轢。
無作法な隣人への誤解がうまく解消していないこと。
だが、思春期の少女が、
豊かな自然と生活に触れて人生を考えるという、
とてもとても心温まるお話であることは確かである。
中学生のお子さんがいたら、女のお子さんだったら特に、
大人からの贈り物として渡してあげたい一冊。
多分どこの図書館にもあると思うので、週末にはぜひ。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年06月11日
一応小説としたけど、
文学としては別にどうってことはない。
というより、出来が悪いと言ったほうが正しい。
キャラクターは紋切り型、状況説明のための台詞が多く、
リアリティはない。
アマゾンの説明書きには
「科学的に検証した完全シミュレーション・ストーリー」とある。
なるほど。
人間を描く、とかそんなんと違います。
鳥インフルエンザが人間に感染し、
パンデミック(ある感染症が爆発的に流行すること)を巻き起こす、
パニック小説みたいな感じのものでした。
東南アジアの諸国では、鶏が貴重なタンパク源である。
多くの家で飼育されている。
鳥インフルエンザが人に感染する事例は1997年、香港で起こった。
以来各国の政府は対応に追われてきたが、
鶏が貴重なタンパク源である東南アジアの諸国では、
鶏を駆逐するのは難しい。
2007年、東南アジアの架空の国、
ゲマイン共和国で鳥インフルエンザの大流行が起こる。
中でも、強毒性と言われるH5N1型のものが人から人へ感染する。
日本でも、心ある関係者が政府に働きかけてはいたが、
対策は十分ではなかった。
空港で検査、ウイルスが日本へ入るのを阻止しようとするが、
大量の人の流れを止めるのは実質的に不可能である。
商社の若者、雑貨店の店主がそれぞれウイルスに感染しており、
とうとう鳥インフルエンザウイルスは日本に上陸した。
このウイルスは、潜伏期のうちでも体外に排出される。
つまり、症状が出ていない、元気な状態に見えても、
感染者からウイルスが「出ている」わけだ。
うわー、めちゃくちゃでんがな。
しかも、咳などから空気感染するため、大量の感染者が出る。
新型なので免疫を持っている人間もいない。
病院は下痢、嘔吐、喀血の患者たちがあふれるが、
薬の備蓄もなくなすすべがない。
感染力の強いウイルスは、入院患者たちにもたちまちのうちに入り込んだ。
人々は家にこもることになり、
食料の不足にも悩まされることになった。
日本中に大流行したウイルスにより、実に120万人が犠牲になったのである…。
病院の医師、空港の検査官、行政に関わる人、一般市民。
これらの登場人物の目を通してパニックが描かれている。
最後も救いようのないもので、読んでいて空恐ろしくなる。
著者は研究者の方だそうだ。小説家ではない。
この事態をわかりやすくするために
小説という手法を使ったんだろう。
登場人物にはリアリティはないが、物語はリアルで恐ろしい。
一読されてみても損はない。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年06月09日
「母べえ」というタイトルを決めたのは、
山田洋次監督だそうだ。
もともとは「父へのレクイエム」というタイトルで、
女性ヒューマン・ドキュメンタリー大賞を受賞した作品。
山田監督は、満州で亡くなった竹内浩三という詩人をモデルにした映画を撮りたいと考えていた。
そしてその資料を多く持ってい著者に会う。
もともとの知己だったこともあり、
あの時代の参考にと渡された原稿に監督は目を通した。
著者は父のことを書いたが、山田監督の頭には、
戦争を耐える母と娘たちのことがイメージとして浮かんだ。
だから、父ではなく母が主になるタイトルなんだろう。
野上家では、それぞれの名前に「べえ」をつけて呼び合っていた。
姉は初子だから初べえ、著者は照べえ。
母べえとは母親のことである。
昭和12年、ある冬の朝。父が特高に連行される。
家族はまだ眠っている時間だった。
跳ね起きた父の足の白さが未だに忘れられないと著者は言う。
父が逮捕、拘禁されたのは治安維持法によるものである。
外国の書籍をたくさん持っていたことは文中から伺える。
共産主義者だったということなのだろうか。
とにかく、思想の自由が保障されている現代では
ありえない罪のために、野上家では父親のいない生活が始まる。
父と母は頻繁に手紙を交換している。
家族を気遣い、本を差し入れてほしいと書く父。
しかし本を差し入れにいっても、
書き込みなどがあると警察がつき返してくる。
仕方がないので、家族総出で書き込みを消しごむで消す。
同居している叔母さんの恋人が手伝ってくれるのだが、
「俺の目はみなさんのような節穴と違うからね。レンズが良いの」
などと冗談をいい、なんだかほのぼのした雰囲気である。
大人にとっては陰鬱な思い出なのかもしれないけど、
これ、語り手が子供というのがとてもいいんだよね。
また、著者の末っ子らしいおっとりした性格も、
この物語がホームドラマとして読まれるのに一役買っていると思う。
戦争が激しくなり、父からの手紙はところどころ
検閲で抹消されている(多分墨で塗られているということだと思う)。
それでも、著者は父に手紙を書く。
「みんなが父ちゃんが帰るのを首を長くして待ってるからね」。
そして、手紙を出してきた帰り、一通の電報を受け取る。
「ノガミイワオ ケサ シキュウ シス」
ネタばれを覚悟でいうと、実際には父は亡くなっていないそうだ。
作品を応募する際に、多少のフィクションは可となっていたので、
ドラマチックなラストにしたようだ。
これを不服とする意見がアマゾンのレビューに載っていた。
同意する部分もあるが、
私はそれでも、死ななくてよかったと思った。
長い文章ではないのですぐに読める。本編もさることながら、
山田監督の寄せた文章がいい。
これだけでも読む価値ありの一冊。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年05月28日
私だってそうそう暇ではないわけだ。
こういう小説は勘弁してほしい。
続きが気になって本が手放せない。
最初に注意書きをしておいてほしかった。
と、思ってよく見たらありました。注意書き。
「警告 この先では、不穏当かつ非倫理的な出来事が発生し得ます。
それでも良いという方のみ、この先にお進みください」
なぬー!そんなこと書かれたらよけいに気になるじゃないか!
しかも、この警告はこんな条件のアルバイトに
つけられたものだったのだ。
「年齢性別不問。一週間の短期バイト。
拘束時間は24時間。時給は1120百円」
1120円ではない。1120百円。分かりやすく書くと11万2千円である。
大学生である結城は車が欲しかった。
コンビニでバイト雑誌を立ち読みしていたところ、
絶世の美女に声をかけられた。
浮世離れした彼女と雑誌をめくり、このバイトを見つける。
彼女は最初からこれを探していたみたいだ。
怪しいことこの上ないが、結城は思い切って応募してみたところ、
見事採用。当日モニターとして集まったのは12人。
例の彼女も参加していた。
彼らを採用した者は言う。
「違法行為があっても<機構>が全責任を負う。
犯人と探偵にはボーナスが出る」と。
連れて行かれたのは人里離れた洋館の地下。
食堂、娯楽室、個室、そして霊安室がある。
食堂には12体のインディアンの置物が。
個室に入ると、その部屋の主しか開けられない箱があった。
結城がそれを開けると火かき棒が入っている。
「ミステリー小説『まだらの紐』に登場した火かき棒は、
殴殺の武器になる」というメモも添えられていた。
どうやら12人はそれぞれ
ミステリーにちなんだ武器を手に入れたらしい。
何かの犯行を(多分この場合は殺人を)行えばボーナスが出る。
しかし、黙って過ごしていても相当の金にはなる。
何も起きるはずはない。
そう考える結城たちだが、
参加者の一人が死体で発見され、事態は急転直下…。
ミステリーなのであんまり書けないんですが、おもしろいです。
誰が犯人なのか、機構の目的は何なのか。
クローズドサークルという手法の、
ミステリーの古典的構成ではある。
わかっていてもぐいぐい引きこまれていく。
12人の人間が、少人数ながら派閥を作っていくさま。
誰がどんな武器を持っているのかわからない不気味さ。
また、その武器が微妙に殺傷能力が低いという絶妙さ。
こういうことも上手だけど、読者が読みながら指摘しそうな事柄を
登場人物に言わせてしまうのがすごい。
犯行を犯さなくても金は十分。クローズドサークルだという指摘。
こういうことをされると、
登場人物の視点と自分の考えが近いので、
これまたのめりこんでしまう。
ぞくぞくしっぱなし。ミステリーファンだけでなく、
秀逸な小説をお探しの方にこれは絶対にオススメ!こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年05月21日
俺はとにかく冴えない男だ。
ガキの頃からいじめられっこだった。
大人になっても変わらず、仕事もうまくいかない。
そんな俺が一流の広告代理店の社員募集に応募した。
ただの社会見学のつもりだった。それがなんと、採用。
それも月給20万、年棒3000万という破格の扱いだ。
え?おかしいだろって?
俺の待遇は、表向きは一般社員。その実は被取締役、
とりしまられやくという役職。
広告代理店にはエリートが集まっている。
皆自信過剰で自己主張が強く、
いじめられ役が必要だと経営者は判断した。
つまり俺の仕事は皆のストレスのはけ口になること。
名前も、羽ヶ口信男に変えられた。
一週間に最低3度は遅刻し、叱られ、
皆にバカにされるのが俺の仕事。
いつものことだからへっちゃらだ。
だが、俺にいじわるをしない人間が二人いる。
好青年を絵に描いたような三木と、
沙紀ちゃんというかわいい女の子だ。
偽善者面したいやなやつらだ。
ま、他の人間が俺の悪口で結束を固めたみたいなのでいいとしよう。
社内を十分に不快にさせた俺は、
外の人間にも接するようになった。
俺の失敗を補うべく、部内の結束はさらに高まる。順調だ。
しかし運命ってのはわからないもので、
俺を気にいってくれるクライアントが現れた。
俺の適当で不器用な広告案が、なぜだか大ヒットしてしまう。
こりゃあまずい。被取締役としての仕事にならない。
いじめられるべき人間が、
いつの間にか引っ張りだこの広告プランナーになってしまうなんて。
またいじめられっこに戻るべき時に、俺は大きな仕事を回される。
それは、「いじめ撲滅キャンペーン」のCM制作だ。
悩んだ。だがいじめられてきた俺だからこそ、できる仕事がある。
役職を守るよりも、この仕事を成功させたい。
俺はそう考えた。
そんな俺に、好青年の三木があることを打ち明けた。
「俺も昔、いじめられっこだったんだよ」
三木の協力を得て俺が考えたのは
「いじめられっこだって世にはばかる」というコンセプト。
過去にいじめられていた人が、
世の中にはたくさん活躍している。
いじめを受けた過去は消せなくても、
それをばねにしてがんばっている人がいることを伝えたい。
このCMは大成功。
俺は生まれて初めて達成感というものを味わった。
TBS・講談社 第1回ドラマ原作大賞受賞作。
おかしくて、最後は思わず涙ぐんでしまう。
失敗、成功、自己の成長という構成はまさに王道。
ついでに沙紀ちゃんとのロマンスもこの小説の王道ぶり(?)に
拍車をかける。
もうめっちゃくちゃありがちなパターンなんだけど、
被取締役というのが面白いじゃありませんか。
読後感良し。
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2008年04月25日
小学生限定で応募できる、12歳の文学。
その受賞作品集。
小説を書くなんて小難しい作業を小学生の子がやってしまうのだから、
その労力には素直に感心したい。
収められているのは9編。
大賞と、私が個人的に好きなものをご紹介したいと思います。
大賞受賞作品 ヘチマと僕と、そしてハヤ
ハヤというのは同じクラス、同じ班の友達。
人前でちんちんを出してふざけるような、ひょうきんな男の子。
まあ一人はいますね、こんな子。
物語は授業で(なのかな、とにかく一緒に)
ヘチマを植えるところから始まる。
ヘチマが成長にあわせて、
キャンプに行ったり好きな子の話をしたり、
いろいろなエピソードが展開していく。
ハヤは転校生だった。妹が重い病気で、
アメリカで手術を受けている間、
祖父母のもとに預けられていたのだ。
両親もアメリカに渡っている。
ある日、ハヤが再び転校していくことになった。
さよならも言わずに去ったハヤ。
妹の手術は失敗だったのだときいた。
最後、ハヤはもう一度主人公の学校に転校してくる。
再会の喜びで終わるのは後味がいい。
ひょうきんで明るい冒頭、転換というつくりはうまいが、
あざとさを感じるのは私だけか?
微妙に崩れた口語体も、わざととは思うが、
携帯小説を感じさせてちょっとなあ。
もう一遍。 ふしぎな町のまっかなもみじ
「しおや」から「たるみ」の目医者さんに行く途中、
主人公の乗った電車がふしぎな町にとまる。
そこで、主人公はたんぽぽの「はさみのりえんぴつ」に出会う。
「はさみのりえんぴつ」は、町に季節の絵の具を塗りたいと言う。
季節は秋。赤い色を塗りたいのに、赤色が足りない。
主人公の持っている赤がほしい。
主人公は、お気に入りのまっかなTシャツを着ている。
その赤をくれと言われて悩むが、承諾する主人公。
「はさみのりえんぴつ」に赤を吸収され、Tシャツは白くなった。
色を固定するために、二人は童謡の真っ赤な秋を歌う。
塩屋、垂水というのは神戸市に実際ある町の名前です。
そこを通る電車からの光景が、上手に描写されていて
素直に物語に入ることができる。
たんぽぽの名前もいい。何より文章が素直なんだな。
そういう意味でいい作品は他にもある。
お金持ちのれいこお嬢さん、通称れんこんとの交流を描いた桜街道。
(これは文句なしにおもしろかった。なぜれんこん?)
なぞの女の子との出会いを書いたバッタなど。
背伸びなんかせんでええんだよ。
どう書いたって自分の中にしか作品世界はない。
等身大の感情を素直に書き出すことは、
実はのたうちまわるほどしんどい。
そのしんどさが、小説を書く自虐的な愉しみだと思うんだけど、
どんなもんですかいの。
選者、あさのあつこ、伊藤たかみ、西原理恵子などの評、
受賞者のコメントも掲載されている。
選評は西原理恵子のものにほぼ同意。
装丁、紙の質などはとてもいい。きれいな本に仕上がっている。
最後に収められている作品には、
タレントの堀北真希主演さんの写真が
コラボレートされた挿画が使われている。
文句なくかわいい。
ちょっと辛口になりましたが、
それでも、こうやって何かを書こうという意欲のある若い人がいるのはうれしいし、頼もしい。
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2008年04月22日
あたしは、不倫に破れて自暴自棄になっていた。
死んでやる!
深い絶望を感じたそのとき、目の前がぴかっと光って気を失った。
目が覚めるとそこにあったのはおかめ顔。
しかもあたし、十二単なんて着ちゃってるし、
ギネスに乗りそうなロングヘア。
どうやら平安時代にタイムスリップしてしまったみたい!
高校の頃読んだ源氏物語を思い出して、
なんとかやり過ごすしかない。
だけどあたし、源氏物語きらいだったのよね。
光源氏なんて、子供を自分好みの女に仕立て上げるロリコン色魔野郎じゃない。
そんな話、どこがいいんだか。そう思ってたはずなのに、
なんとこの世界では、あたし、源氏物語の作者なのよね。
いや、作者というのはちょっと違う。書いているのは香子さま。
彰子さまというお姫様の家庭教師をされている方。
あたしは、その香子さまにネタを提供する、
いわばブレーンってところ。
こんなお話。「あたし」の一人称で、
現代女性の目を通して源氏物語の裏側をさぐるというものだ。
有名な夕顔、葵の上、末摘花のお話の、現代版パロディ解釈といったところ。
今回は末摘花のエピソードを。
末摘花といえば、鼻の赤い、ユニークな顔立ちが有名。
ところが、あたしが実際に会ってみた末摘花は華奢で色白、
かわいらしい少女だった。
貧乏で恥ずかしがりや。
その彼女には位の高い男性が言い寄っている。
この時代、男性の経済的援助がなければ女性は生きていくことができない。
それならば、恥ずかしがりやの姫君のかわりに、
あたし、人肌脱いじゃおう。
奮闘するあたしだが、末摘花には他に愛する人がいた。
それは、そばで控えている葛野という女性である。
そう、少女は、男性と契りを結びたいとなど思っていなかったのだ。
しかしそれでは彼女の生活はどうなる?
一計を案じたあたしは、少女に入れ知恵をする。
男性が訪れた夜、色白の彼女の花を冷やして赤くし、
そのおかしな顔を見せた。
不器量な女性にびっくりしたものの、憐れに思った男性は
末永く彼女の面倒を見てやることにした。
そうして、末摘花のお話は、
香子さまの手によってユーモラスに仕立て上げられたのだ。
さまざまな恋愛に直面し、「あたし」自身も成長する物語。
ラスト、現代に戻ったあたしは思う。
死んでやるなんて間違ってる。人は死ぬのだ。
気を失っていた間、案じてくれた人たちのためにも、
死がやってくるまであたしは生きる。
文体が口語調なので気楽に読める。
「あたし」のバイタリティに元気をもらえる一冊。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年04月15日
結論から言うと、
私はあんまり好きじゃなかった。
だけど普段本を全く読まない夫が熱中し、
転げまわって喜んでいる。そういう本、なのか。
MMとは怪獣の規模を著す単位である。
読み方はモンスター・マグニチュード。
怪獣のサイズから予想される災害の脅威度を数字化したものだ。
世界各国には怪獣が頻繁に現れる。そういう設定の世界。
日本で怪獣に対応するのは気象庁特異生物対策部、略して気特対。
いまどきの若者風だが、実は仕事熱心な涼。
ちょっとどじな女の子、さくら。
美人科学者の悠里。
仕事のストレスで胃が痛い、最高責任者の久里浜。
彼らが気特対のメンバーである。
なんかパトレイバーみたいだな。
暴走するエビの群。放射能を浴び、
アフリカから飛んできたコウモリの変種。
巨大な女児の怪獣。
気特対は怪獣から日本を守るべく日々奔走している。
しかし、この小説の世界では、
怪獣が現れるのは日常の普通の出来事である。
怪獣の規模、発生場所が一般市民には警報として知らされるが、
予報が間違っていたら非難されることもある。
パトレイバーみたいなんだよなあ。
さて、5編収められている小説だが、
最終話がクライマックスになる。
日本に、九つの頭を持つ竜の怪獣が現れた。
規模はMM9。かつて存在しなかった大きさだ。
これは日本古来から伝わる神話の竜、ヤマタノオロチではないか。
色めく気特対。
その気特対のオフィスに、ある団体が乱入し、鎮圧しようとする。
それは、科学者悠里の知己だった男だ。
彼は自分の正体を妖怪だと告白した。
妖怪はかつて存在していた。いまもしている。
しかし、それは伝説や昔話としてなかったものにされている。
怪獣だってそうだ。
いつか、テレビの連続ドラマだと思われてしまうかもしれない。
存在を忘れられることは苦痛だ、そうだろう。
怪獣が存在しないものなら、気特対だって…。
神話の中で、ヤマタノオロチを制するのは巨人、
それも女性である。
そうだ、つい先日出現したではないか。
人間の女児の容姿をもった怪獣が…。
皆さん、お忘れではないですか?
さっきさらっと書いてしまいましたが、
巨大な女児の怪獣、彼女こそがヤマタノオロチと対決できる
神話の女性だったのです。
著者はと学会の方。
「物理法則に従えば、そもそも体重100トンを超える生物が
地上で直立歩行できるわけがないのである。
しかし、この重大な謎をいまだ生物学者は解き明かしてない」
なんて文章もある。
科学なんて関係ねえ!怪獣が存在する、それが現実!
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話題の小説系
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2008年04月07日
福岡県と長崎県を結ぶ県道263号線には、
三瀬峠という峠がある。
そこで、若い女性の死体が発見された。
女性の名前は石橋佳乃。
彼女を殺害したとして警察に逮捕されたのは、
長崎県の土木作業員、清水祐一であった。
だが、佳乃の同僚は、
佳乃が最後に会ったのは彼女の恋人、増尾圭吾だと証言した。
実際に、佳乃を殺したのは祐一である。
これは文頭でも述べられている。
しかし物語は、増尾という男を佳乃の殺害現場に置くことで、
どちらが本当に殺したのか、
中盤までよくわからない構成になっている。
ミステリーとしての要素が小説を盛り上げる。
と同時に、祐一と増尾という同世代の男性を対比しながら、
世の中の不条理、人間の強さと優しさ、孤独を
著者は書こうとしている。
佳乃と祐一は携帯電話の出会い系サイトで知り合った。
彼について、佳乃は生前、「
セックスだけが上手で、退屈な人」と言っていた。
一方増尾は資産家の息子である。佳乃は同僚に、
増尾と付き合っていたと言っていたが、事実はそうではない。
佳乃が一方的にメールを送るといっただけの関係であった。
祐一は、幼い頃母親に捨てられ、祖父母の家で暮らしている。
裕福な暮らしではない。無口で車だけが趣味という青年だ。
友人は祐一の性格を評してこう言う。
「祐一はグラウンドにもう何日も落ちたままのボールのようなもの。
子供に一日中使われて、転がって、
また翌日には他の誰かに蹴られて…。
でも、それが苦痛じゃないんですよ」
祐一は、佳乃を殺害した後、出会い系で光代という女性に出会う。
光代は30歳。結婚する予定もなく、
双子の妹と二人で暮らしている。
祐一と光代はお互いに強く惹かれあい、
光代のすすめで逃亡をくわだてた。
ラブホテルを泊まり歩きながら、
見えない明日にあがく二人だが、そんな生活が続くわけもなく、
警察の手に落ちてしまう。
逮捕されるとき、祐一は
「俺はお前が思っているような男じゃない」と、
光代の首に手をかけた…。
祐一は、増尾のような「勝ち組」の人間ではない。
ずっと人のために犠牲になるような生き方をしてきた若者だった。
一方増尾は、佳乃の死すら
友人との笑い話にして友人に話すような振る舞いをする。
一体、悪とは何なのか。それを問いかける作品である。
佳乃、祐一、増尾を中心にして、いろいろな人物が登場し、
事件を語る。一人一人の人生が丁寧に描かれているのもよい。
ずっしりと何かが残る。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年03月20日
やられた〜!
いやあ、女子高生を描いた短編集なんだけど、これはいい。
収録は7作品。その中で、
私の好きな2つのあらすじを簡単にご紹介します。
・忘れないでね
美奈の父親は転勤族のサラリーマン。
美奈も、転校を何度もくり返してきた。
転校生である美奈が学校で友達に選ぶのは、
ちょっと浮いている子ばかりだった。
友達のいない、一人でいる子。
そんな子なら近づくのが楽だからだ。
嫌われている子と友達になるけど、
いつも自分はその子たちを置き去りにして転校する。
逃げられるのだから、いやな子と一緒にいるのも
我慢しておけばいい。
でも、今回はちょっと失敗だと思っている。
もう父親が転勤することはないのに、
またいつものくせなのか、
クラスで嫌われている真琴と友達になってしまった。
大学受験だけが真琴から逃れられる道だと美奈は思う。
成績の悪い真琴と、同じ大学を受けたものの…。
別れ際に真琴が言う。
「美奈に話しかけてもらった時、あたしすんごく嬉しかったよ。
美奈が居てよかった」
・ゆうちゃんはレズ
ゆうちゃんは大粒のマシュマロのような女の子だった。
明子は後輩のゆうちゃんから告白される。
「あたし、先輩が女の子だからじゃなくて、
明子先輩だから好きなんです。
ただ一緒にいて嬉しくて、ちょっとどきどきして、
もっと話してみたいなって。
あんまり考えなくていいから、
あたしともう少し一緒にいてくれませんか?」
そして、明子はゆうちゃんとメールをしたり、勉強をしたりする。
頬に軽いキスも受ける。
しかし、大学の入学式を控えたある日、
ゆうちゃんはささいな事件をきっかけに明子に別れを告げた。
男性の教師に憧れる生徒が明子の友人として登場するのだが、
それがまた絶妙。
どう絶妙かというと、ゆうちゃんの先輩への恋心と、
「ゆうちゃんが自分を好きな気持ち」を
好きになってしまう明子の心理、
これがうまく友人の恋に重なって描写されているからだ。
まだ恋を知らない、恋に恋している未熟な年頃の心情が、
とても上手に書かれている。
うそやろ〜。こんな上手な作家さんがいたなんて。感動!
女の子の残酷さ、未熟さ、純粋さ、
そんなきらきらした感情が、たくさん描かれている短編集。
女子高生の方にもおすすめしたいが、
かつて女子高生だった大人の女性に読んでもらいたい。
そして、その女子高生に憧れ、
悩まされたかつての男子高校生にも。
要するに、みんな読んでみたらどうだい、ってことだ!こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年03月16日
第138回芥川賞受賞作品。
ストーリーはいたってシンプル。
主人公は大阪出身で、現在は東京で暮らしている。
一人暮らし。どうやら会社員らしい。
夏の暑い時期、主人公も休みなので多分盆の時期なんだろう。
姉の巻子とその子供、緑子が上京してくる。
主人公のアパートに泊まって、
巻子は豊胸手術を受けると言っている。
その母親に、娘の緑子は何か思うところがあるらしく、
ここのところ直接口を利くのを避けている。
用事があるとノートにペンで字を書いて母に示す。
文章が非常に特徴的。
「わたしは一瞬迷ったが、なあ、緑子は喋らへんだの、と訊くと、
緑子はちょっと間をおいて頷くので、
それは巻子に対しての何らかの抗議的な?
すると<別に>と書き、続けて<そんなんちゃう>と書き、
喧嘩?と続ければ首を振って…」
ってな感じ。とにかく読点までが恐ろしく長く、
時々地の文に関西弁が入ってくる、
ちょっとばかり疲れる文章である。
まあいいや。とりあえず読みすすめると、
巻子がこれまたちょっと困ったお母さんで、
銭湯に行っては人の体を眺め回し、「私の胸、どう?」と妹に尋ね、
翌朝は一人で出かけてしまって戻ってこなくなったりする。
こいつにも疲れる。
娘の緑子は、主人公と花火を買って母親の帰りを待っている。
遅くなって戻ってきた母は、
離婚した元の夫に会ってきたとほろ酔い加減である。
緑子が感情を爆発させ、台所に捨ててあった
賞味期限切れの卵を自分にぶつけて割り、卵まみれで叫ぶ。
「む、胸をおっきくして、お母さんは、何がいいの
私を産んで胸がなくなってもうたなら、しゃないでしょう
あたしは、お母さんが心配、お母さんが、大事」
豊胸手術を受けた人間が、自殺しているというデータを
いつの間にか手にしていた緑子は、母を心配していたのだ。
巻子も卵を手にとって、自分の体にぶつける。
お母さん、ほんまのこと言うて、という娘に泣きながら応える。
「緑子、ほんまのことってね、あると思うでしょ
でも緑子な、ほんまのことなんてな、ないこともあるねんで」
巻子。場末のホステスで、生活はぎりぎり。
深く物事を考えている風でもなく、
娘の教育に熱心というわけでもない。
だが、この親子の間の感情の揺れに、心を動かされる。
文章が独特だし、主人公の生理のことなど、
かなりリアルで男性にとっては
グロテスクに思えるだろう描写もある。
しかし、私はこの作品が好きだ、と思った。
胸がふくらんでいく。生理が始まる。女になっていく不安と、
母の豊胸手術。
思春期の女の子の心の揺れが、私には覚えのあることで、
読み進むうちに緑子が愛しく思えてくるのだ。
最後には、へんてこな文章が気にならなくなっている。
読んでいる今はまだ寒い三月なのに、
じっとりと汗ばんでくる気がするから不思議。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年03月04日
今日はまず、本の表紙を見ていただきたい。
価格は1000円、文章は横書き。
話題のケータイ小説を、
新堂冬樹が書いてみましたということらしい。
楽しかったでしょうね、こういう企画。
いや、私も読んでて楽しかったです。
とはいえ、中は絵文字もなく行間もつまっていて、
一般的な携帯小説とはちがう。文章も三人称で語られている。
どうせだったらぐだぐだ女の子の一人称で、
「殺人マシーンのあたしが恋をしてしまった…。
相手は…やっぱり殺し屋のヘリオス!キャハ!」
くらいのノリでもよかったのに。なーんてね。
さて、内容はというと、さっき書いたとおりのものだ。
主人公のアリサは、5歳のときに家族を皆殺しにされた。
家族を殺したのは、青い蝶のペンダントをした男。
天涯孤独になったアリサを引き取ったのが小野寺という男だ。
彼は殺し屋、アサシンを養成し、
殺しの仕事を引き受けるというビジネスをしている。
過酷な訓練を積んだアリサは、優秀な殺し屋として成長した。
コードネームはバレンタイン。
ある日、小野寺はかつて小野寺と一緒に仕事をしていた
門馬という男を殺すことをアリサに命じる。
門馬はアリサの家族を殺した黒幕なのだという。
復讐心に燃えるアリサ。
しかし、門馬には四天王という腕利きの殺し屋がいる。
アリサはヘリオスという男とチームを組んで門馬に向かっていく。
ヘリオスは殺し屋には見えない男だった。
アリサにも、「女のコは素直じゃないともてないぞ!」
などという軽口をきく。
しかしその腕は一流で、
次第にアリサはヘリオスに心を開いていく。
この辺の過程がまた、
「あるある!どこかで見た見た!」というお決まりのパターン。
「こんな気持ち、感じたことがなかった」
「殺し屋として生きてきて、初めてのやすらぎ」みたいな描写が
最高に快い。お好きな方はぜひどうぞ。
四天王との戦いもなかなかハード。
ゴルゴ、ガゼル、スパイダー、ゼウスという名前の四天王。
それを弱い順に倒していく、
つまりだんだん難易度が増していく少年ジャンプの漫画的展開で、
これまたお好きな方にはたまらない構成になっている。
敵の奇襲を受け、謎の少年に助けてもらいながら
門馬に肉迫する二人。
しかし、二人の前に立つゼウスは人の心を持たない、
生まれつきの殺し屋だった。
ゼウスとの戦いで、致命的な傷を負うヘリオス。
死が迫る瞬間、ヘリオスはアリサに二つの大きな告白をする。
アリサに恋をしてしまったということ。
そして、アリサの家族を殺した青い蝶のペンダントの男の正体…。
ラスト、たった二つしか残っていない銃弾で、
アリサは小野寺に立ち向かっていく。死の覚悟をして。
いつの間にか門馬は殺しの対象からははずれてしまっているが、
それはまあいいや。
ちょっとちゃかして書いちゃったけど、面白かったです。
アクションシーンも充実してるし、
トラウマを負った二人が打ち解けてゆくシーンも
ありきたりだけどいい。
新堂ファンならとりあえず手にとってみたい一冊。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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交通事故で妻子を失った雪藤は、
いまだその痛みから立ち直れずにいる。
仕事場でもミスを連発してばかりだ。
そんなある日、雪藤は不思議な女性に出会う。
落とした定期入れを拾ってくれた天美遥。
彼女は雪藤のことを何も知らないはずなのに、
あなたがかわいそう、と言って泣いていた。
数日後、遥の働く喫茶店を訪ねた雪藤は、
遥が不思議な力を持っていることを知る。
人の物に触っただけで、
持ち主が何を考えているのかがわかるというのだ。
共感を寄せてくれた遥に信頼を抱く雪藤。
同僚の女性を通して知り合った雑誌の編集者と、
彼女を会わせることにする。
遥は両親を亡くしていた。医師だった父の志を継いで、
人の役に立つことがしたいと考えていた遥。
金儲けなどには興味がないが、マスコミを通じて訪れる人に、
遥は真摯に対応する。
遥の能力は本物だった。やがてたくさんの人が集まり、
彼女を支たいという人が自然に集団を作り始めた。
宗教などではない。雪藤はそう思うが、
だんだんと宗教団体の趣を帯びてくる遥の支持者たち。
会の運営には経費がかかる。持ち寄りで済むはずもなく、
訪れる人からお金をとる、
また、スポンサーを得ることなどもしながら
だんだんと会はまとまっていく。
会社をやめ、「コフリット」という名前のついた
集団のまとめ役になる雪藤。
彼の他に、笠置という男もいつの間にか
コフリットにやってきて、重要な発言をするようになった。
雪藤は、如才ない笠置に信頼を置くことができない。
美しい遥の容姿だけに惹かれてやってくる人間。
会を大きくするために間違った手段に走る若者たち。
そんな人間が、雪藤は許せない。
雪藤にとって遥は、自分を救ってくれた神であった。
純粋な思いは結果、
まわりの誰に対しても不信感を抱くことにつながっていく。
孤立する雪藤。
そして最後は一気に破綻へなだれ込んでいく。
破綻劇の鍵を握る人物は、
最初から伏線が張られているのでこれは読んでのお楽しみ。
遥の失踪、雪藤の落胆。
しかし作者は、最後に優しい結論を用意してくれている。
人は弱いな。寂しいな。
そんなことを感じさせてくれる。読み応え十分。
感情を動かされたい、
小説の世界にどっぷりはまりたいという人がいたら、
最近では一番おすすめなのがこの小説。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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話題の小説系
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2008年02月15日
惜しくも受賞を逃したが、
前回の直木賞の候補作品だったそうだ。
北海道を舞台にした短編小説5編。それぞれ独立した作品だけど、
主人公が前の小説の登場人物と関わりがあるという設定なので、
最初の作品から読んでいくことをおすすめします。
・ちりちりと…
堀口誠はもう帰るまいと決めていたはずの故郷に戻って来た。
函館で事業を営んでいたが、共同経営者の友人に裏切られ、
破産しての帰郷だった。
自殺を思うが、父親が5千万近くの金を持っていることを
知人に聞かされる。
母と妹を亡くして以来、父は山奥の小屋で隠遁生活を送っている。
留守中に忍び込み、母と妹の墓に隠していた金を見つけるが、
戻ってきた父親に銃で撃たれてしまう。
・みゃあ、みゃあ、みゃあ
母親と二人暮しの美恵子。彼女は以前、堀口の父の愛人だった。
母は痴呆が始まっており、口汚く美恵子をののしる。
居酒屋で働く美恵子は、
以前から土屋という男に言い寄られていた。
笑顔が爽やかな土屋に惹かれた美恵子は、
ある日彼に体を預ける。
しかし、母の存在を知った土屋は、
美恵子と交際することはできないと言う。
交際を断られ、施設に入ることを拒否する母に疲れた美恵子は、
飼っていた猫を箱に入れて川に流す。
・世界の終わり
土屋智也。父の女癖が原因で、母と妹は出て行った。
犬のレオだけが心の支えである。
雅史という男に、半ば脅されて買わされたスクーターに乗って、
智也は町外れの開発予定地に出た。
そこでレオが骨を見つける。
骨を探すことに熱中する智也。夜中まで探していたところ、
警官に尋問され、ナイフで刺し殺してしまう。
智也は、骨を集めることで、世界の終わりがくると信じていた。
・雪は降る
知恵遅れの少年、智也にスクーターを売りつけたことを、
雅史は後ろめたく感じている。
しかしそのおかげで手に入れた車で、
憧れの先輩、美穂を函館まで送っていくチャンスに恵まれた。
どこか憂鬱そうな美穂。バッグに赤い色の何かがついている。
途中で入ったコンビニで、
雅史は美穂の弟が何者かに刺殺されたことを知る。
・青柳町こそかなしけれ
安衣子の夫、保はギャンブルが好きで
たびたび安衣子に暴力をふるう。
親友の恵理も同じような境遇で、
恵理は交換殺人を言い出すまでに追い詰められていた。
ある日、恵理の大事にしていた犬を、恵理の夫が殺してしまう。
彼を殺して、代わりに保を殺すから。
そう泣く恵理の言葉を聞いて、保は心を入れ替える。
犬の葬式の日、来なかった夫に激怒した保は、
彼をなぐって入院させてしまった。
犬を殺したことも、暴力をふるわれていることも、
恵理は警察には言わなかった…。
主人公たちは皆、人生に絶望している。
その苦しみとか、やるせなさとか、
作者はそういうことが書きたかったようだ。
どれを読んでもため息が出る作品ばかり。
ここからは勝手な感想です。馳ファンは回れ右?!
正直に言うと、人間の絶望と焦り、
あがきを描いた短編集というなら
鷺澤萌の「F」の方をおすすめしたい。
破産(ちりちりと)、老人介護(みゃあ、みゃあ、みゃあ)、
近親相姦(雪は降る)と、ありがちなんだよなあ。
おまけに、雅史と美穂の会話。違和感があるんだよなあ。
若い子は携帯の電源のことを「バッテリー」とは
言わないと思うのよこれまた…。
同じ、年老いた母を背負う娘の話にしても、
車で京都まで墓参りに連れて行ったらすべてうそだった、
という話が鷺澤Fにはある。
最後のどんでん返しが、あちらの方が鮮やかな気がする。
すみません。生意気で。
ただ、不夜城以来、多分だけど馳氏に寄せられてる期待、
暴力とアンダーグラウンド満載の作品をどうぞ!ってなところから、
別の境地に行こうとしている感じはする。
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話題の小説系
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2008年02月14日
いいじゃないか、いいじゃないか!
描写よし、不思議あり、多少展開が読めるものの、
ストーリーよし、文句なし!
新進気鋭の若手作家、万城目学の「鹿男あをによし」。
ドラマになっているそうですね。
理系の大学院生の主人公は、同僚の昇進を阻むミスをしてしまった。
教授の命令により、奈良の女子高で教員として働くことになる。
期間は9月から12月まで、二学期の間だけだ。
就任一日目、堀田という女子生徒が遅刻をしてくる。
「鹿に乗って通学しているが、駅で駐禁をとられてしまった」
と言われ、真に受けてしまう。
からかわれたことに気がついた主人公は、
生活指導の教諭に訴えるが、
それを堀田は密告だとばかりに反抗を始める。
クラスの生徒が皆敵に回る中、ある日主人公は
鹿が自分に話しかけてくるという体験をする。
鹿は言う。
お前は鹿の「運び番」に選ばれた。
サンカクを手に入れろ。
サンカクは狐の「使い番」が持ってくる。
何がなにやらわからず、悩む主人公に
学校では新しい仕事が与えられた。
剣道部の顧問をやれというのだ。
断ることもできず、顧問として参加した会議で、
次の大会の優勝者に送られるプレートが三角であることに驚く。
しかもその会議の場所は「狐のは」という名前の料亭。
三角の優勝プレートを手に入れるべく、
剣道の達人であった掘田を部に迎え、大会へ臨む主人公。
剣道大会の描写は秀逸。立派なアクションシーンといって
差し支えない、と私は思う。
躍動感あり、お決まりのピンチもあり、
はらはらどきどき、最後はスカッという文句なしの展開。
そうして手に入れた三角のプレートだが、鹿は違うと言う。
そしてその日から、主人公の顔が鹿に変化していく。
鹿の言うサンカクとは、
卑弥呼が持っていた三角縁神獣鏡という宝物だった。
それを手に入れなければ、富士山が大地震を起こし日本は壊滅する。
邪魔をする鼠の使い、謎の狐の使者。
堀田まで鹿に変わってしまったこのピンチを、
主人公はどうするのか…。
かりんとうが好きな同僚の教師、
奈良の町の風景、
ポッキーが好きという鹿。
全体的にユーモラスなのもいい。
万城目ワールドにひたっているのが楽しい。愛すべき小説。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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美術の専門学校に通っているオレは、
先生のユリと付き合ったがふられた。
はい。あらすじおしまい。
ああ、困ったな。今日は書くことがないや。困ったな。
映画化したこと、タイトルと著者の名前が印象的なことがあって
読んでみたけどなんだこりゃ。
文字は大きく行間ばかりでスカスカ。
専門学校生と39歳の女のセックスが書かれているが、
たいして盛り上がりもしない。エロくないんだ。
ユリも参加した飲み会の帰り、
「君のことが好きなんだよ」と言われたオレ。
絵のモデルになり、セックスもしてしまう。
ユリにはアトリエがあり、週の半分はそこで泊まっている。
夫のいる家には残りの半分しか戻らない。
焼きそばを作ったり、化粧の薄い顔を見てみたり、
ユリは肉が苦手だったり、
若い子にはない腹の丸みが好きだったり、
オレは次第に彼女に惹かれていく。
だが、セックスは上手ではないと思う。
(彼が上手か下手かは知らないが、描写が下手なのは確実)
家に行ったときにユリの夫に会うが、夫は別段何も言わず、
三人で食事をする。
最後、ユリは学校をやめ、夫とミャンマーに旅行に行く。
割り切れないオレ。切ない。こんな終わり方。
葛藤も、執着もない。あっさりしてることこの上ない。
言葉や台詞が印象的といえば印象的か。
ユリがニベアを塗らないのでかかとががさがさだとか、
夕日がきれいでまぐろの切り身みたいだとか、
電話なんて温度だ、とか。
かっこつけんでええからもっと人間を書け!!きちんと書け!!
愛も、恋も、欲も、性も、そんな生易しいもんじゃないぞ!!
非常に美しい画面の、まったく内容のない映画を見せられた気分。こちらのブログがあなたのメールBOXに届きます。
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