2011年09月08日

史上最強の内閣








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2011年08月24日

竜が最後に帰る場所








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2011年07月08日

下町ロケット








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2011年05月31日

シューマンの指







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シューマンの指  奥泉 光
¥ 1,680  講談社 (2010/7/23)

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ミステリとあるけれど、個人的には青春小説として楽しんだよう
な気持ちでいる。

天才と凡才。モーツアルトとサリエリみたいな、愛憎半ばの関係
が面白かった。

主人公は「私」。彼の一人称で語られる。

私は公営団地に住む、ごく平凡な高校生だ。ピアノが好きで、家
には防音壁のある部屋がある。父があつらえてくれたもの。家族
は暖かく見守っている。

その私の前に、ピアニストとしての将来を嘱望された永嶺修人が
現れた。普通の高校なのに。いぶかりながらも次第に親しくなる
二人。

親しく? それは正確ではないかもしれない。天才的な修人の言
葉に、私はいちいちうなずくだけだった。劣等感と尊敬と愛情。
ないまぜになった気持ちで私は修人に対している。

このとき、修人の口を借りてシューマン論、薀蓄が語られる。お
好きな方にはたまらないだろう。といって、無知な私でも十二分
に楽しめた。

そもそも私はこの手の薀蓄は、最初から「皿」と割り切って、あ
まり拘泥しはしないのだ。小説における薀蓄は、料理を乗せる皿
みたいなもの。美しければ嘆息するが、といって、食らうのはそ
れではないと考えている。

さて。修人にしても、友と呼べるのは私しかいないようだった。
天才の性だろうか。人を寄せ付けない狷介さがあった。神経質な
一面もある。

彼は人前でピアノを弾こうとはしなかった。だから私が彼の演奏
を耳にしたのは、生徒がいなくなった夜の学校でのことである。

忘れ物を取りに帰り、偶然から、音楽室でピアノを弾く彼を見た。
完璧だった。「演奏されてしまった音楽は、もはや不完全」。
修人はよく口にしたが、その夜、彼はシューマンを確かに自分の
ものにしていた。

そのとき、学校には美術教師も残っていた。彼と二人、聞きほれ
ていると、怪しげな人影がプールサイドで動くのが見えた。

女子高生が殺されて、プールに浮かべられていた。必死で手当て
をほどこすが、生き返らせることはできなかった。

数年後、私は修人の恋人である女性の別荘に招かれる。修人と例
の美術教師、私の妹もいた。そこで修人は、私に事件の真相を語
り始める。

犯人は自分。自分は心の病気なのだ。錯乱した彼は、己の指を切
りとって暖炉に投げ入れる。修人の指は失われた。私の目の前で。
見間違えるはずはない。

後、医師になり、結婚と離婚を経験した私は、あの夜のことを一
人で振り返る。修人の告白が、偽であったのではないかと考える。
指は失われなかった。私はだまされた。裏切られたのだ。


告白→どんでん返し→私失踪の後、さらなるどんでん返しという、
なんだかすごい怒涛の展開だった。

帯の文句は伊達じゃない。心底から思わされた一冊だ。










「オルフェウスの窓」を思い出したのは私だけじゃないはず!!




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2011年05月23日

六月の輝き








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六月の輝き  乾 ルカ
¥ 1,470  集英社 (2011/1/26)

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今思い出してもじんわり泣ける。表紙のイラストを見ても涙がに
じんできて困る。この人、こういうのうまいよなー。

美奈子と美耶、二人の少女の友情と成長を描いた物語。短編集。
二人を取り巻く人物が、それぞれ主人公となり、さまざまな視点
から二人の人生を浮かび上がらせている。

小学生の美奈子。美耶のカッターで手を切ってしまう。そのとき、
美耶は不思議な力で美奈子の傷を治してしまった。

美耶の家庭は破綻している。父は働いておらず、母がパートで生
活を支えている。だが娘の力を知って、父親はそれを利用し、金
儲けをしようとたくらむ。

しかし美耶は、治癒の力を持っているわけではなかった。時間を
もとに戻すだけ。怪我をする前に、病気にかかる前に。傷を「な
かったこと」にすることはできない。

ある夜美奈子の父が倒れた。彼女の母は動転し、美耶に助けを求
めようとする。だが強欲な美耶の父に阻まれ、その救いは得られ
なかった。

美奈子と美耶は幼馴染だ。特別な友情があるのだと信じていた。
美耶が優しいことも、美しい魂も、美奈子は知っていたはずだっ
た。だがその事件を機に、二人の間には溝ができてしまう。

同級生の女の子、繁華街の男、難病に冒された少年。彼らとの関
わりの中で、美奈子と美耶は傷つけあいながら、だが離れられず、
結び合ったまま大人になってゆく。

やがて高校生になる頃、美奈子の母が病に倒れた。美耶は懸命の
看病をする。美耶は美奈子の母が好きだった。「おばちゃんは、
……してくれたから」

ほんのささいなことなのに。皆当たり前に享受し、看過してゆく
ことなのに。美耶はこうやって、小さな幸せを大切に育んで生き
ているのだろう。

美奈子の母の最期の望みをかなえることで、美耶は己の命の時間
を縮めてしまった。美耶も病床に伏せる。

美奈子は足しげく見舞いに通った。美耶の母は娘を省みることが
ない。埃まみれの部屋に寝かされた美耶は、もう立ち上がること
さえ困難になってしまった。

美耶がずっと願っていたこと。美奈子はそれを思い出し、精一杯
の方法で美耶を送る。

幼い頃、美耶に尋ねたことがあった。この世で一番大切なものは
なあに? 

子供だった美耶は、恥ずかしくてそれが答えられなかった。だが
その死の淵で、白く積もる埃の上に、そっと答えを書き残した…。


あかん、また泣けてきた。今私のそばで誰かリコーダーを吹いた
ら、号泣して暴れますよきっと。

弱くて悲しくて、無力な人の命の輝き。そういうの、うまいんだ
よなー。

損なし。良作。









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2011年05月11日

小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団








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小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団  瀬名 秀明
¥ 1,470  小学館 (2011/2/25)

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劇場版アニメとして公開された「ドラえもん のび太と鉄人兵団」
の書き下ろし小説版。著者は「パラサイトイブ」などでおなじみ
の瀬名秀明さんだ。

あらすじをざっとご紹介。ご存知の方も多いとは思いますが、毎
度ながらのネタばれですので、今から読む、観るという方はその
点ご注意くださいませ。

スネ夫とジャイアン、人型の大きなロボットで遊んでいる。スネ
夫のいとこが作ってくれたもののようだ。のび太はうらやましく
て仕方がない。

例によってドラえもんに頼む。もっと大きなロボットが欲しい。
ドラえもんは怒ってしまい、どこでもドアで北極へ出かけてし
まった。

のび太も追う。そこでボール状の物体と、大きなブロックのよう
なものを発見、家に持ち帰る。ドラえもんが出してくれた、組み
立て式のロボットかと考えたのだ。

事実、それは巨大なロボットだった。だがドラえもんの持ち物で
はなかった。二人は組み立ててみたくなった。

場所を確保するため、ドラえもんは「逆世界入り込みオイル」を
出して「おざしき釣り堀」の中に上下がさかさまになった世界を
作った。鏡のような輝く水面に、オイルを塗って飛び込めば、そ
こに移ったさかさまの世界に入り込むことができるのだ。

巨大なロボットが組み立てられる。そこに赤い髪の美少女、リル
ルが現れる。リルルはロボットで、ロボットばかりの国の斥候
だった。

人間を狩って奴隷にするため、ロボットの国から兵団が攻めてく
るのだという。

リルルをさかさま世界に閉じ込め、のび太とドラえもんは現実に
戻ってくる。助けを求めなければならなかった。

だが、大人は誰も信じてはくれなかった。味方になってくれたの
は、友達のスネ夫とジャイアンだけだ。彼らは静香ちゃんの家の
風呂から、さかさまの世界に入り込み、そこへロボット兵団をお
びき寄せようとする。地球への被害を少なくするためだ。

静香ちゃんには知らせないつもりだった。女の子だから。守らな
ければ。しかし静香ちゃんは、入浴しようとしたときに、風呂が
鏡面になっていること、さかさま世界につながっていることを知
る。のび太たちの後を追いかけてくる。

そこで彼女は、傷つき、倒れたリルルに出会う。のび太がさかさ
ま世界を閉じたときに、爆風で吹き飛ばされたのだ。懸命の看病
をする静香ちゃん。

鉄人兵団が迫ってきた。のび太たちは、少ない武器で懸命に戦う。
腕につける空気銃やひらりマント、不利を悟っての必死での防御
だ。心細いけれど、誰かがどっしりかまえてなけりゃと、ジャイ
アンの言葉がみなの胸を打つ。

一方で、リルルは戸惑いを覚えていた。人間など、奴隷に等しい
愚かな生物だと思っていたのだ。

ロボットの国は、人間に絶望した神に作られたのだと聞かされて
いた。同類同士で殺戮をくり返した、愚かな人類の轍を踏まぬよ
うに。

ロボットたちも、不毛の歴史をくり返してきた。身分の格差、圧
制、差別、宗教戦争。そんなものの後に、平等になったロボット
たちは、新たに奴隷の階級を必要としたのだ。それが人であった
はずなのに。その奴隷に、助けられてしまった。

リルルは静香ちゃんとともに、ロボットを作った神に会いに行く。
タイムマシンに乗って、創造者の下へ出向いて行く。

リルルの話を聞いた創造者は嘆いた。争いをなくしたかったから、
ロボットの国を作ろうとした。他者を思いやる心を、授けておく
べきだった。

神はたった今そのとき、始祖となる二体のロボットを作ろうとし
ていた。回路を変えて、思いやりの心を与えようとする。しかし
それは、リルルの存在そのものを脅かす行為であった。

神が力尽きて倒れたとき、リルルがその後を引き継ごうとする。
自らは消えることとなっても、優しい未来がありえるのだとすれ
ば、それを望みたいと思った。

ロボットを完成させたリルルは「天使になりたい」と言い置いて
その場から消える。


大人の目から見た「ドラえもん」が、時にシビアに語られるのが
楽しくもあり、少し寂しくもあった。道具の説明とか、小説で語
られるには、こんな説明が必要なのねって思った。

また同時に、科学技術のあり方とはとか、人知れず世界を救うこ
との美しさだとか、お子様向けのアニメにはそぐわないことまで
考えてしまった私だった。

ま、ご時勢だものね。

それからやっぱり感動して少し泣いた。子供たちが大冒険を繰り
広げている間、心配して、懸命に探す親御さんたちの気持ちとか、
アニメではわからない、とても繊細な部分だった。

パーマン3号、星野スミレちゃんの登場も素敵。子供心に戻って、
素直に感動したい大人におススメの一冊だ。











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2011年04月21日

リアル・シンデレラ







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リアル・シンデレラ  姫野 カオルコ
¥ 1,785  光文社 (2010/3/19)

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表紙のイラスト。若い女性の裸の絵だ。乳房も、陰毛もさらけ出
している。小さな灯りを掲げ、伏し目がちに立っている。よく見
ると両の乳房はわずかに形が違っていて、ありのまま、女の姿を
描き出そうとしているように見える。

シンデレラの物語に違和感を抱く女性ライター。彼女は上司から、
かつて本当にシンデレラのようであった女性がいた、と知らされ
る。ライターは追う。関係者の証言を元に、その「リアルシンデ
レラ」、倉橋泉の生涯を探ってゆく。

倉橋泉。名はせんと読む。彼女は1950年4月29日、諏訪の「たから」
という料理屋で生まれた。母親は泉があまり好きではなかった。
ゴールデンウィークのはじめだから、誕生日も祝ってはもらえな
かった。

両親の愛情を一身に受けたのは、下に生まれた妹の深芳(みよし)
だ。体が弱かった深芳は、父母にかわいがられ、美しい娘に育った。

小さい頃から深芳の世話をさせられた。だが泉は、文句も言わず
に引き受けた。

泉は変わった子で、笑顔をあまり見せなかった。笑いはするのだ。
だがその前にぎゅっとこぶしを握り締めて、ぐふ、とくぐもった
笑い声をもらす。母からも、奇妙な子だと思われていた。

成長した泉は、高校進学のために諏訪を離れ、松本のとある名家
に住まうことになる。奥様から徹底的に礼儀作法をしつけられた。
習ったことは、大学ノートに書き付けておくのが泉の習性となっ
た。

戦前からの名家である。大きな会社を経営している。奥様は息子
と、泉を結婚させるつもりでいた。だが泉の母親は、その縁談を
喜ばなかった。

そして息子も。彼は泉の妹、深芳と恋に落ちていたのだった。

深芳は駆け落ちして恋を成就した。東京へ逃げたそのときに、世
話をしたのが冒頭に書いたライターの上司である。

その上司が、泉と深芳に関して、このような証言を述べている。

深芳は「オカイさん」と呼ばれていた。お粥さん、がなまってつ
けられたあだ名。ガールのスタンダード、とっても女の子らしい
女の子だった。

泉は違う。声をかけられない「ホーリーさ」、つまり、侵しがた
い神聖さがあった。美しい人で、気軽には触れがたい何かがあっ
た。

だが深芳は、御曹司と破局する。若い、突発的な恋だった。

泉も一度結婚をした。深芳の見合い相手だった男性とだ。しかし
こちらも破局を迎え、泉の夫は「たから」で働いていた奈美とい
う女性と再婚する。

そのころ「たから」は、泉の尽力もあって、立派な旅館に様変わ
りしていた。泉は客をもてなし、無農薬野菜を育てながら、夫と
結ばれた奈美を懸命に盛り立てる。奈美は女将の地位にあった。

幼い頃、泉は不思議な客に出会ったのだという。消えてなくなり
たいと願う泉に、それは傲岸不遜なのだと説いた。人一人、消え
ても世の中は変わらない。お前ごとき、懸命に生きるほか何がで
きるのかとその客は言った。

また客は泉に、わらじの編み方を教えた。片方だけのわらじを、
泉の手の中に残した。

泉はずっと、他人の幸福だけを願って生きてきた。報われること
はなかった。誰も泉を真に愛し、受け止める者がいなかった。

いや、いることはいた。泉のことを理解した男性はいた。だが泉
は、その心に気づくことがなかった。いつもいつも、人の幸せだ
けを願っていたから。


ラスト、悲しすぎるよ。こうじゃなきゃ、いかんのかな。

寓話とするには泉の周りがリアルすぎ、しかし泉だけがやたら人
間離れしている。

仙人を描いた話は私にはあわない。人でいい。もがき、あがいて
誰しもみんな幸せになってほしい。










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2011年04月18日

謎解きはディナーのあとで




あれ?
前の記事を見てください。


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謎解きはディナーのあとで








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謎解きはディナーのあとで   東川 篤哉
¥ 1,575  小学館 (2010/9/2)

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アマゾンのレビューが面白いね。ぼこぼこですやん。いややわ皆
さん、大人げおまへんで。2011年本屋大賞。

ユーモアミステリー。短編集。毒ワイン殺人、バラの中で眠る死
体、密室花嫁、謎のダイイングメッセージとその趣向は多彩。

その中から本日は、このメルマガの清廉可憐さ純情さにぴったり
の一遍、全裸で横たわる男の死体の物語をご紹介。全裸ですって
よ、奥さん。面白そうじゃございません?

宝生麗子は財閥宝生グループの令嬢だ。ブランド物のスーツで固
めた彼女の職場は警察署。身分を隠して刑事として働いている。

上司は風祭警部。彼も大企業のご子息だ。自動車会社の御曹司だ
が、こちらは隠さず、その権力をフルに生かして出世の道をまい
進している様子。麗子に気があるそぶりを見せる。

この二人がとっかかりの事件に出会う。だが謎はからまりあって、
麗子が相談するのが執事の影山という男。シルバーフレームのめ
がねをかけて、冷静に、揶揄するように麗子嬢に助言を与える。
全編この構図。

さてミステリーなのにネタばれなので、本日もお嫌な方はここら
でメールを閉じてください。いつもながら申し訳ないです。

麗子が殺人事件の現場へ向かう。マンションの一室。横たわって
いた死体は男性のもので、衣服を身に着けていなかった。真っ裸
の死体。

隣人の証言から、男がその日、女性を部屋に連れてきていたこと
が知れる。その女が犯人だろう。麗子と風祭は、男と交友関係が
あった女性を四人、ピックアップした。

男の身長は160センチ程度だった。隣人の証言によると、一緒にい
た女性はそれより10センチ程度、低く見えたという。では150セン
チほどの、小柄な女性をあたろうではないか。

まず第一発見者の女性に会う。澤田絵里。彼女は男と海に出かけ
たことがある仲だった。身長は160センチ。

二人目は斎藤アヤ。幼馴染で身長は高い。昔スカートめくりをさ
れた腹いせに、男をスッポンポンに、つまり全裸にしたことがあ
る。

三人目は代議士の娘だった。黛香苗。彼女も身長160センチ。しか
し四人目、森野千鶴が小柄で150センチだ。彼女が犯人であるか。

帰宅した麗子は、執事の影山にことの詳細を述べる。影山は呆れ、
こともあろうかお嬢様に「失礼ながら、やっぱりお嬢様はしばら
くの間、引っ込んでいてくださいますか」と。

全裸であった理由を考えよう。犯人は男の衣服が邪魔であったの
だ。その理由は? それはつまり、男がシークレットシューズを
履いて、身長をごまかしていたからである。

部屋に入るとそれが歴然。だまされたと知った女は激怒した。思
わず殺してしまい、犯行がばれるのを恐れて衣服を持ち去った。

ということは、証言からもう一度考え直す必要がある。男よりも
10センチ程度、女の背が低かったと証言者は話した。シークレッ
トシューズでかさ上げした男よりも10センチ低い。であれば女の
身長は、160センチであるはずだ……。


なんやな、そんなむきになって、ボッコボコにするほどじゃない
かなあって思ったで。ええやん、ユーモラスですやん!

ただ正直に言わせてもらうと、もともとミステリー愛好家でもな
いので、この本を1000以上出して買おうとは思わん。5本ほど入っ
て新書750円くらいなら買うかな、という感じ。(ファンの方、
ごめんね)

期待をあおる宣伝はあかんね。私自身、ある程度評判を知って読
んだからこそ、ゆとりの感想を持つことができた。

でなければなんとなく、金田一少年の事件簿くらいの凝った事件
があるのかと思って、はぐらかされて暴動起こしてたかもしれん。

と、いう感じ。寝る前に、楽に読むのが正解だと思う。であれば
心楽しく、いい夢が見られそう。素敵心地の一冊ではあるよ!

しかし蛇足ながら、今回は「今日はいい酒を飲もうと心に決めて
酒屋に入り、通の大将におすすめを尋ねたら、発泡酒を出された
ような気分」ではあった。読書まみれの通の店員が、秘蔵の一冊
を推薦するような賞であってほしいかな、と勝手な望みを抱いて
しまう。









2010年、私の本屋大賞ノミネートは「民宿雪国」、「BORN TO RUN」、
「南の子供が夜行くところ」あたりかなー。

こういう本がばちっと出てきて、ものめずらしさから手に取る人が出れば、
「あーっ!!! 本ってすげえ!!!! ぬあーっ!!!」と思うと思うんだけどなー。
トリコになると思うんだけどなー。
もったいねー。

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2011年04月12日

純平、考え直せ







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純平、考え直せ  奥田 英朗
¥ 1,470  光文社 (2011/1/20)

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ちょっぴり切なくなるエンディング。

二十一歳、純平はやくざの修行中。部屋住みなので自由はない。
威勢のいい兄貴、北島に心酔し、掃除や雑用に終われる日々だ。

あるとき組長から、鉄砲玉になるようにと言い渡された。名前の
とおり、純情な青年は二つ返事でその役を引き受ける。決行まで
三日、週末の夜を自由に過ごしていいと言われる。

安物の拳銃を手に入れ、いざ、焼肉屋に純平は入る。加奈という
女の子にナンパされ、クラブで遊んだ後にホテルへ。

加奈は派遣社員だった。まがい物を売る通販会社に勤めている。
週末の夜はこうした遊びに没頭して、ストレスを消し去る。いず
れは結婚して、子供を生んで、普通の暮らしをするつもりだから。
それまでの贅沢、お遊び。

その加奈は、純平が抱えている事情を知ると、ホテルの部屋から
ネットの掲示板にその旨書き込んでしまうのだった。

掲示板ではさまざまな人が、さまざまな意見を述べる。やめよと
言う者、やくざはゴミだから、ゴミ同士殺しあえばよいと書く者、
沖縄へ逃げて来いと言う輩までいる。

(この際に、いわゆるネット右翼が「沖縄は左翼反日」と書く場
面があり、いろいろ見てるんだなあと思った)

翌日未だ自由の純平は、回転寿司屋で不思議な老人に出会う。大
学教授だったという老人は、純平を師に仰ぎたいと言った。レー
ルの上を歩んできた人生、捨てて「グレたい」のだそうだ。

また純平は、同じく渡世稼業にある友人を得た。信也という。

関西人である彼は、自由が利かず、おまけに金回りもよくないや
くざ稼業を滑稽な口ぶりで嘆く。頭のいいやつばかりが出世する。
やくざ稼業も結局、格差社会なんだよ、なあ。

純平には父親がいなかった。母一人子一人の家庭だった。だが母
は、純平の面倒など一切見ようとはしなかった。いつも男の顔色
を見ていて、純平はけんかに明け暮れるしか、気持ちをやり過ご
すことができなかった。

地元に戻り、かつての不良仲間に会う。だが彼らは堅気としての
暮らしを着実に築いていた。小さな溝ができる。

母にも会いに行った。金の無心を警戒されるが、案じているそぶ
りは垣間見えた。

あきらめが肝心なのだと思う。自分だって、ちゃんと誰かが見て
くれていたら、やくざの道になんか、入らなかった。だが仕方が
ない。純平はあきらめることには慣れていた。

最後に、恋心を寄せている女性に別れを言いに行った。彼女は今
後、明るい光の中を歩いて行くのだろう。純平の手が届かない場
所に向かって。

いろんな人に出会った。娑婆とはしばらくお別れなのに。やくざ
の世界のせこさ、厳しさも知らされた。ほかに生きていく道はな
いのに。


最後まで飽きない。面白くすいすい読めた。ずっと楽しかった。

しかし読み終えた後、じんと心に残るものがあるね。さすがさす
がの良品良作。

やくざ稼業に憧れる若者には(いるのかな?)ぜひともおすすめ!
どの世界も厳しいんだってこと、身にしみてわかる気がするよ。










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2011年04月03日

俺俺






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俺俺  星野 智幸
¥ 1,680  新潮社 (2010/06)

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俺、水野均は家電量販店メガトンの正社員だ。ある日マック(マ
クドナルドのこと)で隣り合わせた客が、俺のトレイに自分の携
帯を置いた。持ち上げたとき気づいたが、そのまま持って店を出
てしまった。

その持ち主の母から電話がかかってくる。俺はつい、持ち主のふ
りをして受け答えをし、架空の事故をでっち上げてしまった。金
の無心をする。母は疑わず、俺の口座に90万を振り込んできた。

母が俺の部屋に来た。俺は一人暮らしだ。母は俺を大樹と呼び、
自分の息子と認識しているようだった。母を家に帰した俺は、そ
の後をひそかにつけて行く。母が住んでいる家には、俺が暮らし
ていたらしい形跡があった。

混乱した俺は実家へ戻ろうとする。久しぶりに出向く実家だ。

カメラマンを目指し、挫折した俺は実家から遠ざかっていた。気
まずいながらも戻ってみると、そこには水野均、つまりは俺がい
て、追い返される羽目になった。

その家の俺、水野均は公務員だった。

彼には兄がいたが、個性的な子供を望む両親の期待を背負って、
美容師を目指し、やはり挫折して失踪してしまっていた。俺には
兄弟はいないのに。別の物語が、その家にはある様子だった。

水野均、つまりは実家にいた俺と、俺は親しくなる。なぜなら俺
なのだから、何を話しても楽しいし、気が合う。俺は大樹と呼ば
れ、大学生、ナオとも知り合った。ナオも水野均の家に、俺だ、
息子だと言って押しかけていたらしい。

俺と均と大学生のナオ。みんな俺だ。俺ばかりの楽しい世界がく
り広げられる。

だがそのうち、誰もが「俺」になり始めた。気に食わない職場の
先輩も俺。客も俺。なんと女まで、俺だと認識され始めた。世界
中は俺ばかり。俺と他人の境界が消え始めた。

しかし俺は、俺と均とナオと、本当の俺の世界にこもっていたい
と考えていた。三人とも同じ考えだと思っていたのに、均がその
均衡を破る。ナオが殺され、俺たちはばらばらになった。

ふと気づく。殺人が、実は身近な犯罪であるということを。東京
ではたくさんの人が殺されている。だが報道では、あっさりとし
た事実だけが語られている。

妙だ。みんな俺であったはずなのに。それぞれには顔があったは
ずなのに。

俺は本来の俺になりたくて、高尾山を目指して電車に乗る。だが
満員だ。みんな俺なのだから、自分探しをするために、同じ考え
を持って高尾山行きの電車に乗り込んだのだ。

俺は高尾山にこもっている。たくさんの俺がそうやって、高尾山
に潜み、乏しい食料を奪い合っている。電車が途絶えたのだから、
そうしか生きる道がない。やがて共食いも始まった。

俺は殺された。俺は食われた。だが食っているのも俺であり、俺
は俺を生かすために食われているのだった。

俺は気づく。俺だけが、ではなくて、他者と分け合ってみたらど
うだろう。俺と他者は溶け合わず、俺はもう二度と、均やナオと
いったような、一心同体の友を得ることはできないだろう。

分かり合えないまま、しかし分け合うことはできる。共存するこ
とはできる……。


満員電車の中で、他者と自分の区別がつかず、一人の時間が持て
ない都会の人にはリアルで恐ろしい物語なのかも、と思った。

私は田舎住まいで、おまけにここの共同体の生まれというわけで
はないので、それほど他者と自分が溶け合う恐怖、というのは身
に迫っては来なかった。

だが小説としては面白かった。次どうなるんだろうと、ページを
めくる手が止まらない。単純に楽しかった。










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2011年03月29日

伏 贋作・里見八犬伝







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伏 贋作・里見八犬伝  桜庭 一樹
¥ 1,700  文藝春秋 (2010/11/26)

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祖父を亡くした浜路には、身内は兄しかいなかった。住まい慣れ
た山を降り、兄を頼って江戸へと向かう。小さなその背に負うの
は猟銃。十四の浜路は立派な猟師だ。

兄は江戸で一人暮らし。「伏」を狩って大金をもらうのが夢だ。
伏とは犬人間のこと。人と変わらぬ姿かたちで、すばしっこさと
残虐さを持つ。人を食らい殺す伏には、懸賞金がかけられていた
のであった。

里見八犬伝をベースにした冒険物語。山で育った少女浜路と、兄
の道節が大活躍する。

浜路は持ち前の勘で、吉原に潜んでいた女の伏を討ち取った。そ
のことを読売(新聞)に書かれて大慌て。書き手の滝沢冥土なる
男に、直談判をしに向かう。浜路の捕り物を、面白おかしく書く
なというわけだ。

冥土は滝沢馬琴の息子だった。馬琴の著作「南総里見八犬伝」は、
冥土が調べた物語が基になっているという。浜路相手に、冥土は
かつて阿波の国で聞いた、悲しい姫の話を語り始める。

阿波の国の領主には、伏という名前の姫と、鈍色という跡継ぎの
男児がいた。伏は剛毅で男勝り、鈍色はなよなよしく、体の弱い
子供だった。

あるとき、鈍色が犬を拾ってくる。その犬を伏が所望した。

鈍色は、親の愛情を一身に受けた伏姫が憎らしかった。犬は譲ら
ぬと言ったが、父の口添えを得た伏が、半ば強引に取り上げてし
まう。伏は犬に、八房という名前を与えた。

伏が成長した頃に、飢饉が阿波の国を襲った。それに乗じて隣国
の兵が殺到する。父は衰弱し、八房に敵将の首を取ってくれと頼
む。首を取ってきてくれれば、伏を伴侶として与えよう。

八房は敵将を倒した。約束どおり、伏は八房に嫁ごうとする。犬
を従えて、禁忌の森へと足を進めていったのだ。そこは名前が存
在しない森。人と獣が交われる森。八房と伏はそこで十年の月日
を過ごした。

十年後、救い出された伏姫は、その身に子を宿していた。それが
犬人間の伏のゆえんである。

冥土の話を聞き終えた浜路は、さらなる伏狩りに没頭する。何し
ろ相手は人を殺す、残虐な獣だ。

そして見つける。舞台役者の男の体に、伏のにおいをかぎつけた
のだ。浜路は猟師。獣のにおいを誤りはしない。

男は信乃といった。追う道すがら、二人は江戸の地下道に落ちる。
江戸にはお城に続く地下道が、あちらこちらに作られている。

信乃は語った。伏に親はいない。伏の寿命は二十年程度。子を残
したら、死ぬ運命にあるからだ。

信乃はかつて、伏の仲間たちに出会い、阿波の国まで旅をしたこ
とがあった。伏姫が八房と暮らした森にも出かけた。そのとき、
仲間は悲しい恋をしていた。燃え上がる獣の恋と悲しみが、信乃
の口から語られた。

だが、と信乃は言う。一瞬であっても、恋焦がれる相手に出会え
たことは、幸運だったのではないか。たとえ悲恋に終わっても。
自分にはまだその相手がいない。恋をいうものを知らない。

そうして、地上に出るとそこは江戸城。やんややんやの派手な捕
物があって、なんだかんだでハッピーエンド。楽しい物語だった。


しかし尻すぼみというか、肩透かしというか、ちょっと残念な感
も残った。浜路と信乃。何かあるのだと思ったのに、尻切れトン
ボで終わったような、ちょっと寂しい感じがしたな。

それからさ「伏は獣、殺したいときに殺す。残虐な生き物」とあ
るんだけど、それって犬じゃなくて猫っぽいよね。

でも猫人間というと、どうしてもあの、未来から来た猫型の人を
思い出してしまうしね。あんまり敏捷性はないような。
(あ、ロボットだったか)













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2011年03月23日

ふがいない僕は空を見た







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ふがいない僕は空を見た  窪 美澄
¥ 1,470  新潮社 (2010/07)

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いろんなところでえっちらおっちら話題の小説である。短編集。

「女による女のためのR18文学賞」受賞作ということで、性描写
はそれなり。だけどポルノではない。

5編のうちの、最初の二つをご紹介してみる。互いに関連してい
る。例によってネタバレなので、すみませんがよろしくです。

・ミクマリ
斉藤くんは高校生。12歳年上の女とのセックスにはまっている。
女はあんずという。本名は知らない。あんずは既婚者だった。

セックスのときはアニメキャラのコスプレをする。女がそう命じ
るからだ。女は絶頂に達すると「むらまささま」と斉藤くんを呼
ぶ。もちろん斉藤くんは、むらまさという名前ではない。

斉藤くんの家は助産院だ。母が開業している。父はいない。斉藤
くんは、母の手伝いをして、分娩中の妊婦の腰をさすったりする。

そんな斉藤くんは、松永という同級生に告白された。リスみたい
な可愛い子だ。二股をかけるわけにはいかないと、斉藤くんはあ
んずとの別れを決心する。

別れてしばらくして、町であんずの姿を見かける。あんずは子供
用の靴下を手に取っていた。子供、できたの? 尋ねるとあんず
は暗い顔をして、その靴下を元に戻した。

あんずのことが忘れられない。思い立って斉藤くんは、再び彼女
の部屋を訪ねる。するとあんずは、アメリカに旅立つのだと言っ
た。

子供ができない体だった。代理母に会うため、夫と二人で渡米す
る。いっぱいセックスをして、家に戻ると新しい命の誕生の場面
だった。生まれた子供と一緒になって、泣きたい気持ちになった。

・世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸

あんずがアニメにはまったのは、学校でいじめられていたからだ。
ぶすで、デブだったから仕方がない。母親はいなくて、父と二人
の家で育った。

要領が悪かった。勉強もできず、三流の大学に入った。男の人と、
たくさん付き合ったが体だけの関係だった。ヤリマンとののしら
れたこともある。

仕事を始めたが、やっぱり出来損ないだった。ストーカーだった
男と結婚し、ようやく安定した生活へ。

だが子供ができなかった。夫もあんずも、できにくい体だったの
だ。あんずだけが悪いわけではない。だが義母はあんずをせかし、
子供を作れと言い募るようになった。夫は義母に、言い返すこと
ができない。

ある日あんずは、出かけたイベントで斉藤くんに出会った。アニ
メキャラのむらまささまにそっくりだった。コスプレをさせての
セックスに没頭する。斉藤くんの手は優しかった。

彼から別れを告げられたときは、それも仕方がないと飲んだ。だ
が義母は、そんなあんずの行動を知っていたのだった。部屋中に、
監視カメラが仕掛けられていたのだ。斉藤くんとの情事はすべて、
義母にも、夫にも筒抜けだった。


後、この動画が出回ってあれこれ大変!というお話が続く。松永
さんや、斉藤くんのお友達、お母さんを巻き込んだお話。


読後感よし、筆力よし(ぐいぐい持っていってくれる、力強い語
りがすばらしい)、エピソードも面白い、ついでに言えば評判も
極上。

だけど私には今一つやったかなあ。なんか、一世代上の女の人の
ためのお話に思えた。仕事を理解してくれる息子、性の話もでき
るさばけた親子みたいな。子供の負担、大きすぎやろ。

ええ話なんよな。だけどちくちく、何か小骨のようなものが残る。

例えば彼女、彼氏のハメ撮り動画とか見て、そんな反応でいいの、
とか。セイタカ、もっと世界を呪えよとか。オカン、息子さん、
大変なことになってるのになんや他人事みたいでんな、とか。

基本的にみんないい人だった。いい人すぎる。まだきれいすぎる。

このいい人の連鎖が、口当たりのよさ、読後感のよさにつながっ
ているのだと思う。語りはいい。おすすめでないとは決して言わ
ない。だが、もう少し踏み込んでほしかった。まだやれるはず。

怒涛のセックス、助産院という設定の新鮮さで乗り切ったミクマ
リが一番よかった。後は連作にせず、まったく別の話を読ませて
もらいたかった。次作やな。期待値上げて待ってます。



追記6/17
いやでもやっぱりきらいやわー、この本。
最初の二作はまあまあ、読めるけど(それでも80年代の山田詠美
の劣化版やと思うけど)、最後二作が死ぬほどきらい。

特に最後のは醜悪極まりないね。著者の自己投影がひどすぎる。

この年代の女の人は難しいね。なんでそんなに、女であることや、
母であることに苦悩を抱かねばならんのかと不思議に思う。

守られることを必死で拒絶するくせに、守ってもらえないことに
も大変な不平を言う。本当に不思議な考え方をする世代だ。
そんな彼女らの人生最大の危機は不倫(笑)。


本当の切なさ、ふがいなさを味わいたい人にはこちらがおススメ。









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2011年02月16日

民宿雪国







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民宿雪国  樋口毅宏
¥ 1,470  祥伝社 (2010/12/1)

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こ、これはいったい何なんだ。問題作というより、怪作……。

いきなりのエロ、グロシーンに戸惑う。民宿雪国。ほのぼの人情
物語ではなかったのかと、表紙カバーに目をやると「雪」の字が
赤くにじんでいることに気づいた。……だがもう遅い。

スピード感あふれる文章と、謎が、解けるどころか深まってゆく
スリルで目が離せない。戦前に生まれた男を描いた物語なので、
タブーと思われる、差別的な表現も多かった。

正直に言うと、これはボツかな、と思った。こんなの人様にご紹
介したら、あらあらやーね、差別主義者のエログロ嗜好者だわと
思われて、回覧板もまわってこなくなるんじゃないか。

恐れたが、ラストのほのかな温かさと、あとがきの真摯な言葉に
勇気づけられて、ここに取り上げて見ることにした。なるべく穏
便にいってみます。

ジャーナリスト、矢島博美のレポートという形で語られる物語。
矢島の一人称は僕。彼は民宿雪国の主に救われた人の一人だった。

東北のある町、海沿いにある民宿雪国。主、丹生雄武郎は伝説的
な画家として名声を博していた。

雄武郎は戦前の生まれだ。父は軍人、母は後妻に入った女で、父
親からも兄弟からも、彼は手ひどいいじめを受けていた。兄弟は
先妻の子である。

雄武郎は軍人になり、ニューギニアで戦闘に参加し、シベリアへ
送られた。生死の境をさまよったが、無事帰国することができた。

戦後、教師であった野口という女と結婚する。生まれた子に、彼
は公平という名前をつけた。差別に苦しんだ彼は、子に正しい生
き方をしてほしかった。

公平は出稼ぎに出るが、新潟地震で被災し、死亡。後は民宿にこ
もり、己を癒すように絵を描き続けた。画商との奇跡的な出会い
があり、絵が世に出ることになった。絵は人々の心を癒し、世界
中から絶賛されることになった。

ここまでが表向けの略歴だ。だが矢島が調べたところ、雄武郎の
履歴にはたくさんのうそが盛り込まれていた。

雄武郎はシベリアへは行っていない。マスコミに流布するシベリ
アでの苦労話は、過去民宿を訪れた老兵から耳にしたもの。

また民宿には、裸の大将として知られる山下画伯が滞在したこと
もあった。そのとき描かせたモチーフが、雄武郎の絵の原型であ
ると推測される。

雄武郎は殺人鬼でもあった。彼をいじめぬいた父を虐殺していた。
兄弟もそろって呼び出し、口に出すのははばかられるような凄惨
な拷問をして殺した。

ニューギニア時代の上官も宿に呼んだ。もちろん殺害するためだ。

ニューギニア時代、彼には恋をし、結婚までした女性がいた。慰
安婦として働かされていた女だ。彼女の名は「雪」と言った。宿
の名にそれを冠したのは、雪が彼の最愛の人だったからだ。上官
によって引き裂かれた、悲しい恋の思い出だった。

雄武郎の人生は、昭和の歴史と深く絡まりあっている。ホテル王
と呼ばれた男は雄武郎を兄さんと呼んで慕っていた。テロを起こ
した宗教指導者は、雄武郎によってある詐術を学んだのだった。

雄武郎の最期のときに、矢島博美は付き添い、その人生を聞く。
伝説の画家、殺人鬼、闇市の帝王、そして一人の女性だけを真摯
に愛し続けた男。丹生雄武郎とはいったい何者であったか。


拷問あり、殺害あり、きつい性描写あり、男色あり、なんでもあ
り。

手に取るときはお気をつけて。








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2011年01月29日

苦役列車





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苦役列車  西村 賢太
¥ 1,260  新潮社 (2011/1/26)

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第144回芥川賞受賞作。

北町貫多は19歳。日雇いの仕事で生計を立てている。

自堕落な毎日だった。港の仕事でもらえる日給は5千円余り。一
日働いては、金がなくなるまで仕事を休むというのが、彼の日々
の過ごし方だった。

彼は中学を卒業したときに家を飛び出した。高校へは行きたかっ
たが、成績が足りなかった。努力もしなかった。彼の父親は犯罪
者である。がんばっても無駄だと、頭のどこかで考えていた。

中学校を出たばかりの少年が、働ける場所はほとんどなかった。
ようやく見つけたのが日雇いの仕事だが、これがよくなかった。
日銭を稼いでだらだらと過ごす癖がついてしまったのだ。

しかし、貫多の毎日に変化が訪れる。日下部という青年が、仕事
場にやって来た。彼も19歳で、専門学校の学生だった。

日下部は陽気な男で、たちまち貫多とも仲良くなった。うれし
かった。貫多には友達が一人もいない。久しぶりにできた話相手
に、貫多の心ははずんだ。

執拗に酒に誘うようになる。いつもは一人、安い酒場でちびりち
びりと飲むだけだが、相手がいると酒が楽しい。風俗にも連れ
立って行った。日下部はいやがったが、それはかえって貫多の優
越感を満たすものとなった。

のめりこんでいく貫多だが、二人の間には次第にずれが生じ始め
る。

日下部はまっとうな青年だった。仕事にも熱心で、たちまち難し
い作業を任されるようになった。待遇にも変化が生まれる。

また日下部には、学生としての暮らしがあった。ワンルームマン
ションに住んで、貫多のほかにも友達がいる。彼女もいるのだと
聞いて、貫多はショックを受けた。

貫多は一計を案じる。日下部の彼女に、友人を紹介してもらえな
いだろうか。そうすれば自分にも、まともな恋人ができる。日下
部がいる世界に、入っていけそうな気がする。

彼女と日下部、貫多は野球を見に行った。食事にも行く。酒が
入った貫多は、彼女に対して失礼な言動を取ってしまった。女性
を侮辱するような言葉を吐いてしまったのだ。

貫多はそういう人間だ。人付き合いができず、嫉妬深く、みじめ
で愚かしい。

そのうち仕事もクビになった。社員といさかいを起こし、いられ
なくなったためだ。

何もかもうまくいかない。相変わらずの日々が過ぎるだけだ。貫
多の希望はただ一つ、ある私小説家の作品を読むことだった。


電車で読んでいたのだけど、最後にぐっと、泣きそうになった。
前に座る女子高生が、いぶかしげな顔をしている。

お嬢さんにも読ませてあげたい、と私は思った。でも同時に、あ
んなお嬢さんが、この本を読んで泣くようなことがあっても、そ
れはそれでよくないとも思った。

私が親御さんならば、あの純粋なお嬢さんには、こんな本で泣く
ような人生は送ってほしくないと願うだろう。多分ね。

大人向けの一冊。酸いも甘いも、えっちらおっちら乗り越えてか
ら読もう。

文章が素敵。キレがいい。









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2011年01月26日

きことわ






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きことわ  朝吹 真理子
¥ 1,260  新潮社 (2011/1/26)

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第144回芥川賞受賞作。

貴子(きこ)と永遠子(とわこ)、七つ違いの幼馴染が、別荘の
後片付けをしましたよ〜、おしまい。


って感じだったけど、それだけで終わるのもさみしいよな。ぼち
ぼち筋らしいところを、がんばって書いてみようかな。

葉山のお話。永遠子の母は別荘の管理人をしている。その縁で、
永遠子は貴子と仲良くなった。

別荘は貴子の両親の所有である。貴子の父は外科医で、忙しくて
別荘にはあまり来られない。訪れるのは母の春子と義理の弟の和
雄、貴子の三人だけだ。

永遠子は幼くて知らなかったが、彼女が別荘を訪れるとき、春子
は交通費を支払っていた。七つ年少の貴子が、永遠子になつき、
そばにいたがったからだ。

だがその交流も、春子の死とともに途絶える。春子は心臓が弱
かった。

現在永遠子は40歳、結婚して子供がある。貴子は33歳、不倫の恋
に破れて父と二人暮らしである。その二人が、手放すことになっ
た別荘の片づけをする場面が描かれている。

過去と現在が行き交う。子供の頃遊んだ海の話、食事をした蕎麦
屋の話。歩いた道に道路反射鏡があったかしら、なかったかしら
と、二人は過去の思い出を語り合う。

永遠子はあるとき、母が父のほかに恋人を持っていたことを知ら
された。別荘の仕事は、外に出てゆくための理由だったのだと思
い至る。

貴子にも母の思い出がある。母春子は、心臓病を患っていたのに
タバコをやめられなかった。父は黙認していたようだ。

和雄は貴子の父を責めた。医者なのになぜ。別荘の片付けをしな
がら、封を切っていないタバコがワンカートン出てきて、和雄の
前では吸えなかったのだなと、貴子は母を思いやる。

片付けは一日では終わらず、貴子は別荘に泊まることにした。そ
の夜、かつての若い姿で別荘を歩く春子の姿を、貴子は目にした。

母は病に冒されていた。幼い貴子はいつも死におびやかされてい
た。母が亡くなったとき、ようやくその恐怖から解放された気に
なった。死者を縛り付けるものは生者なのかもしれない。

永遠子は一人家に戻った。帰り道、晩御飯の材料を買って踏み切
りにさしかかる。ぼんやり、電車が来たことに気づかなかった永
遠子だが、誰かに髪の毛を引っ張られて難を逃れる。

不思議だ。永遠子は子供を産んでから、ずっとショートカットな
のに。

翌朝業者の手を借りて片付けを終え、二人は弁当を広げた。永遠
子が作ってきたものだ。野菜の甘酢漬けがうまい。

そう言えば、父が蓮根を大量に買ってきていたなと貴子は思う。
甘酢漬けのレシピを聞いて、父のいる家に戻ってゆく。


文章は流れるようにきれい、冗長ではない。美しい環境ビデオを
見てるみたいだった。

それだけっつー感じもするけど、まああれや、偉い人にはきっと
わかるんやろな、そのよさが。こういう本は偉い人向き。

私にはちょっとよう、わからんかった。アホやもん、しょうがな
いな。腹の足しにはなりまへんわ。









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2011年01月21日

月と蟹





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月と蟹  道尾 秀介
¥ 1,470  文藝春秋 (2010/9/14)

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第144回直木賞受賞作。

主人公は小学生、慎一。父親をガンで失った彼は、母と二人、鎌
倉の祖父のもとへ身を寄せていた。貧しい暮らしだ。

祖父の片足は義足である。漁師だった昔、船の事故に巻き込まれ
たのだ。同じ事故で、慎一の同級生も母親を亡くしていた。

鳴海という。お金持ちで、人気のある女子児童だ。彼女のことが
あるせいか、慎一はクラスに溶け込めないでいた。慎一の友人は
ただ一人、春也という、大阪から転校してきた子供だけだ。

学校が終わると、春也と連れ立って海へ遊びに出かける。彼らの
楽しみは、ヤドカリを捕まえてあぶりだすことであった。ライ
ターの火を近づけて、熱くなったヤドカリが殻から出てくるのを
見て楽しむ。

あるとき二人は、岩の上にくぼみがあるのを見つける。ここでヤ
ドカリを飼うことにした。そこは不思議な場所だった。風が吹く
と岩がうなる。

ヤドカリをあぶって遊ぶ。残酷な楽しみがあった。金がほしいと、
何気なしに言いながらヤドカリをあぶると、ヤドカリは死んでし
まった。その日、二人は五百円玉を拾った。

ヤドカリを殺せば、願いがかなうのかもしれない。慎一はいつか、
ヤドカミさまという妙な名前でヤドカリを呼ぶようになっていた。

その頃、慎一は二つの悩みを抱えていた。親友の春也が、どうや
ら虐待を受けているらしいこと。もう一つは母が、鳴海の父と恋
愛関係にあるらしいということだ。

鳴海も気づいていたようだ。慎一に近づいてくる。やがて鳴海は、
慎一と春也と、三人で岩のくぼみに行くようになった。

鳴海が慎一の家を訪ねる。祖父も母も、普段と違う様子を見せて
いた。祖父は明らかに酒量が増えていた。祖父はあの事故のこと
を語り始める。

祖父は子供の頃、怪我をした友人を捨てて逃げたことがあった。
足をなくしたのはその報いかも知れぬ。

鳴海は逃げた。では母も、悪行の報いで死に至ったのか。祖父は
追い、転倒して頭に傷を負う。

また、鳴海が介在したことで、慎一と春也の仲にも微妙な隙間が
生まれていた。対抗心と独占欲。よどむ感情を抱えながら、二人
はヤドカリをあぶり続ける。その儀式だけが互いを結ぶもので
あった。

慎一は母を尾行する。決定的な瞬間を見た。春也は腕を骨折し、
虐待がのっぴきならぬ状態にまで進んでいた。ヤドカリを殺し、
ヤドカミさまに願いをこめる。

慎一は鳴海の父の死を願った。このとき、慎一は錯乱状態にあっ
た。春也が慎一のため、鳴海の父を殺すのではないかと錯覚する。
救うため、慎一は父が乗った車の前に飛び出した。ヤドカミと
なった春也が、父の車に潜んでいる想像をしたからだ。

慎一は一命をとりとめる。母と二人、鎌倉を去る。


まあくどい。長かった。100ページの短編くらいにしてくれたら
よかったのに、というのが正直な感想。疲れたわ。

ちなみに、表題の蟹というのは、父を奪ったガン(キャンサー)
と、ヤドカリの意味であるようだ。













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2011年01月13日

ミステリーの書き方





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ミステリーの書き方  日本推理作家協会
¥ 1,890  幻冬舎 (2010/12)

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なぜこんな本を読んだのか、自分でもわからないんです。だって
あたし、普段からミステリーなんて、そう読まないんですもの。

もちろん書く予定なんかもぜんぜんないわ。刑事さん、私の中の
虫が騒いだんです。たるんだ腹の中にいる、活字中毒の、虫。

手にとって、面白かったから読んでしまった。まるで光におびき
寄せられる虫のように。ハッ、わかったわ。私、虫なのね、虫並
みの脳みそしかないということなのねサヨウナラ刑事さん…。

と、まあ、崖から身投げしてもいいくらい、不思議なチョイスだ
と自分でも思う。でも面白かった。だからいい。

現代日本を代表するミステリー作家137人が、創作に対する思い
を語っている。

テーマはそれぞれにある。プロットの立て方だとか、キャラク
ターの描き方だとか。文体についての意見もある。しかし私の印
象としては「好き勝手しゃべってるなあ」という思いが強い。

皆書くことが好きで、こだわりを持っていらっしゃる。そのこだ
わりを、余すところなく語りつくしたのが本書と言っても過言で
はないだろう。二段組、480ページ。圧巻。

例のごとく独断と偏見で、コメントを取り上げてみる。

・冒険小説の取材の仕方 船戸与一

ストーリィもプロットも決めずに現場へ行く。写真も撮らない。
メモも不要。書くときも、完全に物語を決めて書き始めるわけで
はない。

取材の旅で出会った人たちをデフォルメした登場人物が、こうし
てくれと語りかけてくる。

・ブスの視点と気持ちから 岩井志麻子

世の中には四種類の人間がいる。1、人から好意を向けられてい
て、気づく人。2、気づかない人。3、人から好意を向けられて
いないことを、気づく人。4、気づかない人。

小説家に向いているのは3のタイプの人ではないか。

・書き出しで読者をつかめ 伊坂幸太郎

アマチュア時代に書いた文を例として。冒頭で読者を驚かせるこ
とに腐心した。本屋にずらりと並ぶ本の中で、自分の本を手に
とってもらえる工夫がしたかった。誰かに届けたいという思いが
ある。

・手がかりの埋め方 赤川次郎

ミステリーを書いて一番苦労するのは、トリックや、どんでん返
しを考えることではなく、手がかりをいかにして、読者の目につ
かないように、かつ記憶の隅にとどまっているように書き入れる
のか、ということ。


本当に、どの作家さんもプロットにも、トリックにも、文章にも
思い入れを持っていらっしゃる。「!」や「?」、「…」の使い
方にも、それぞれの個性があった。ミステリーファンなら読んで
損なし、の一冊。

トリックについての解説、綾辻行人さんのは、私にはよくわから
んかったけど、マニアックで面白い雰囲気はビシバシ伝わってき
たよ。

では最後に、帯に書かれている、東野圭吾さんの名言を。

「どうやって作品を生み出しているのか。一言で言えば、苦労し
て、です」

だよなあ! みなさま、楽しい作品をありがとうございます!







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2011年01月06日

歌うクジラ 下





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歌うクジラ 下  村上 龍
¥ 1,680  講談社 (2010/10/21)

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棲み分けがなされていたのだった。格差が広がり、不要の争いが
生まれたが、棲み分けがなされると、社会は平和になった。

不老の遺伝子、SW遺伝子を組み込まれた富裕層の人々と、労働者
階級に属する人たちは、互いに別々の地域に住み接触を持たない。
貧しい人々は裕福な暮らしを知らないため、そこに悩みも妬みも
持つ必要がなかった。

アキラたちが訪れた労働者階級の町は「羊バス」と呼ばれていた。
その背後にある山を越えると、向こうは富裕層の住む地域だ。ア
ンジョウに導かれ、アキラ、アン、サブロウは未知の領域へと足
を踏み入れる。

金属の円盤の隙間から入り込んだそこは、人工的に無菌状態に置
かれた区域だった。実験だったのだという。

だが無菌状態で人が生きていけるわけもなく、そこに入れられた
大半の人が死んだ。生き残ったわずかな者が、水耕栽培で稲を
作って暮らしている。富裕層のための食べ物だ。

この社会では性犯罪が大きな問題となっている。下層階級は精神
安定剤でコントロールされており、平穏であるが、上層の人たち
の間ではその犯罪が耐えなかった。むしろエスカレートするばか
りだ。

無菌空間をさらに奥に進むと、性的欲求を覚えただけで全身が痛
むICチップを埋め込まれた男たちがいた。そこでは裸の女が見世
物としてさらされ、しかし男たちは触れることができない。

アキラはその場所で、アンを犯したい衝動に駆られる。彼は必死
で「想像」した。アンを犯して殺せば自分の旅はここで終わりに
なるだろう。具体的に未来を予見し、そうしてはいけないのだと
自らの衝動を押さえ込む。

欲望に打ち勝ったアキラのもとへ、サツキという老女が現れる。
かつてアキラを性的玩具として買ったことがある女だ。

彼女の案内で、アキラは一人上層の人たちが住む地域を進む。

動物として、原始に戻ることで理想社会を築こうとした人々の集
団を見た。病気になった老人たちが集められる洞窟にも入った。

老人の介護をしているのはロボットだ。ロボットの手で消毒され、
排泄を処理され、ただ生きているだけの姿にアキラは衝撃を受ける。

アキラの目的は、富裕層の男、ヨシマツに会うということだ。彼
に会うため、アキラは宇宙エレベーターに乗って地球の外へ出た。

選ばれた者たちは宇宙空間で暮らしていた。とうとう、目的の男、
ヨシマツに会ったアキラはこの世界の謎を知らされることとなる。

ヨシマツはSW遺伝子を持っている。人類の支配者と呼ぶべき人物
である。ヨシマツはかつて、性犯罪がはびこる社会を正すために
科学の力を用い、重大な損失を社会に招いた。

命を生む営みを、ヨシマツたちは制御しようとしたのだ。だがそ
れは失敗に終わり、女たちは子を宿すことがなくなった。

ヨシマツは命の誕生を、科学の手が及ばなかった下層階級の女た
ちに託そうとする。彼女らに自分たちの子供を生ませようとした。

アキラはそのような経緯で生まれた子であるという。ここまで来
るよう仕向けたのもヨシマツである。生まれた地から離れ、困難
を乗り越え、ヨシマツにたどり着くよう仕組まれていたと言うの
だ。

ヨシマツがそれを欲した理由。それはヨシマツがアキラの命を
乗っ取ろうとしたためだった。ヨシマツはもはや、体を失い脳し
か生きていない。ヨシマツの脳との同化を迫られたアキラは……。


管理社会と個、希望と絶望、暴力とセックス。村上龍さんらしい
物語だった。文章も濃く、緻密で体力勝負って感じで、ほんと、
堪能させていただいた。ありがたい、幸せだわ。

「恐怖は逃げれば逃げるほど追いかけてくる。向かい合えば自然
に消える」なんて、いつもの龍さん哲学も満載。お好きな方はぜ
ひどうぞ。

ただちょっと描写はグロテスクなので(私は気にならなかったけ
ど)、その辺は一応覚悟なさっておいてください。

間違っても、あのオシャレエコなカバーデザインにだまされて、
「クジラ? かわいくね? スピリチュアルっぽい話じゃね?」
なんて、安易な気持ちでは触れないように。

悶絶卒倒間違いなし! いろんな意味で危険です。










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2011年01月05日

歌うクジラ 上








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歌うクジラ 上  村上 龍
¥ 1,680  講談社 (2010/10/21)

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2122年、タナカアキラは新出島を脱出し、本土へ向かおうとして
いた。

新出島とは九州北部に作られた島のことだ。昔、外国人を住まわ
せた土地にちなんで名づけられた。犯罪者が流される島である。
アキラは父の遺言を胸に、本土のある人物に会おうとしていた。

島にはクチチュという変異種の人間がいる。彼らはこめかみに開
いた穴から毒物を分泌する。アキラはクチチュの一人、サブロウ
という男と道行きを共にすることになった。また、アンという女
と知り合い、彼女の助けを得て本土へつながる橋を渡る。

2122年の日本は「文化経済効率化運動」なるものによって大きく
変えられていた。まず、非効率だからという理由で敬語が廃止さ
れた。

敬語を扱えるのは少数の人間しかいない。アキラはその一人だが、
それは父がサーバ管理というエリート職についていたからだ。父
のデータべースに触れることで、アキラは自然な敬語を覚えた。

だが、その父は殺された。「テロメア」を切られたのだ。

2122年は人の寿命を自由に操れる時代である。その発端となった
のは、2022年にハワイの沖でグレゴリオ聖歌を歌うクジラが発見
されたことだった。

そのクジラ、singing whaleは長寿の遺伝子を持っていた。略して
SW遺伝子。その遺伝子を組み込むことで、簡単に寿命を長くするこ
とができた。

同時に、命を永らえる遺伝子も発見された。その遺伝子、テロメ
アを切断されてしまうと、急激な老化が始まり死に至る。犯罪者
に適応される刑罰が、アキラの父にも下されたというわけだ。

本土に渡ったアキラはアンの導きのもとに、岡山を拠点とする反
乱分子の仲間に加わることになる。

反乱分子はもともと、外国から日本にやって来た移民たちである。
政府の圧制から逃れようとし、彼らは岡山にアジトを築いていた。

彼らの言葉は独自である。日本語からの独立を求めている。外国
人にとって難解である助詞をあいまいにすることで、彼らは彼ら
の言語を作り出そうとした。

「冗談ほどじゃないよ。おれたちがお前を信頼するから、絶対お
れたちが嘘を言うな」 移民の反乱分子達はこんな話し方をする。

アジトは自由だった。文化経済効率運動によって、日本の社会で
は食欲が悪とされている。楽しむ食事は罪悪なのだ。

人々は棒食と呼ばれるスティック状の食べ物を食べ、そこに入れ
られている精神安定剤によって管理されている。

だがアジトでは、メキシコ料理のナチョスが出された。アキラは
それを口にして不思議な興奮を覚えた。

移民たちは資金を得るために、ある取引を成立させようとしてい
た。だが時間に遅れ、中国人の罠に落ちる。移民たちは頭を割ら
れて殺されて、スープにされて食べられてしまった。

アキラを救ったのは、彼の脳に直接語りかけてくる謎の男の声で
ある。父の遺言にあった人物だ。アキラは彼に会わなければなら
ないし、彼もアキラをどこかで見守っている様子である。

生き残ったアキラはアンとサブロウを連れて、中国人の拠点から
脱出する。このとき、ネギダールという猿と人の混血女の飛行機
に乗って空を飛ぶ。この場面、爽快。

アキラは労働者たちの住む地域に下りた。劣悪な環境下で人々は
暮らしている。文化経済効率化運動の後、富める者は長い寿命を
手にし、いっそう裕福になった。だが貧しい人は命を削って働き
続け、希望のない生活を余儀なくされている。

ここでアキラはアンジョウという男に出会った。新出島にいた男
だ。アンジョウは新出島で、子供を裕福な老人に売っていた。性
の相手をさせていたのだ。

現れたアキラにアンジョウはおびえ、許しを乞うた。アンジョウ
は三人の子供と暮らしているという。子供たちは足に、歩くと痛
みを伴う輪をはめられていた。

以下下巻へ。







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