平日日刊話題の本の情報をお届けします。
自己啓発、料理、動物、経済、趣味のコレクション、
一緒に本を楽しみましょ♪
2006年11月20日
宮部みゆきの最新作。
今日はねたばれ気味なので、
読みたくない方は飛ばしちゃってください。すみません。
冒頭は、青酸カリによる無差別殺人事件。
コンビニの飲み物に混入されていたというものだ。
主人公は中年の会社員、杉村。
彼は大企業の社内報の編集部員だ。
彼の妻は、その会社の会長の娘。
とはいえ、彼女は経営に関与することはない。
その代わり、会長の援助の下、
経済的には不自由ない暮らしを営んでいる。
杉村は、最近まで編集部で働いていた
原田という女性の生い立ちを追っていた。
というのも、彼女は大変なトラブルメーカーで、
やめた後も、いじめやセクハラのせいだと
会社を訴えようとしていたからだ。
根も葉もないうそ、毒になる言葉を吐きつける
原田の過去を追っていた彼は、私立探偵に会いに行くことになる。
そこで、青酸カリの事件で亡くなった老人の孫に出会う。
現代社会の毒を描いた作品、ということですが、
この本にはさまざまな毒が出てきます。
等身大の自分を許容できなくて、
ほかの誰もが幸せそうに見えて、すべてを壊そうとする原田。
やりきれない不幸から逃れようともがく少年。
高度成長期に、いろんな工場が残した土壌汚染。
いろいろな見えない毒が絡み合って、ということなんですが、
こうやってあらすじを書いているとすんごく書きにくい。
独立している事件が二つあって、
それが本の中で同時進行で進んでいく、という形式です。
まず、原田の件。
彼女は、幼いころからうそをつき続け、
兄の結婚を破滅においやる。
仕事をしても、ありもしないキャリアをでっち上げ、
やがて自滅していく。
最後まで、人を恨むばかりで、
自分を何者かにしようという現代にはありがち(なのか?)
な破綻した人格です。
彼女の破壊行動が向かう先は、一見恵まれていそうな杉村。
会社への脅迫もすべてはそれが目的だった。
さて、青酸カリ事件ですが、孫の女子高生とともに犯人を追う杉村。
老人と交際していた身寄りのない婦人が犯人としてあがるが、
彼女はビルから飛び降りて死んでしまう。
女子高生の解説したホームページに寄せられた
「すみません」というメールから、
杉村はコンビニで働いていた少年に目をむける。
彼は、かつて彼の両親が工場を経営していた土地に住んでいて、
幼いころから体が弱かった。
寝たきりの祖母を抱え、どうしていいかわからず…。
そろそろやめておかないと、これから読む方に申し訳ないですね。
しかし。
しかし。
私は思うんだけど、これが新人作家の作品だったらここまで
評価されただろうか。
いや、評価はされるだろう。
ぐいぐいひきつけれられる内容、毒を描こうとした意欲作。
でも、一言こう付け加えられるはず。
「書きたい毒を盛り込みすぎて、本筋が見えにくい。
特に土壌汚染の話などはどうしても必要とは思えない」
お話としては面白いので、お時間のあるときに、いかがでしょうか。
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話題の小説系
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2006年10月23日
キノの旅は、文庫で10巻まで出ている人気シリーズ。
気になってたんですが、なかなか読む機会がありませんでした。
こちらの本は、シリーズ番外編、絵本みたいな薄い本です。
読みやすく、でもキノワールドがしっかりわかる、
なかなかお得な一冊。
値段が高いのはDVDがついているからです。
こちらの本は、物語の語り手が一人の旅人。
12歳のころ、彼はキノという旅人出会い、
旅人になりたいのだが、どうしたらいいかとたずねる。
キノは、黒い髪に茶色のコート、
パースエイダーという銃器をいくつも持っていた。
相棒はエルメス。ちょっとさめたしゃべり方をする、
空を飛ばない二輪車、モトラドだ。
(イラストではバイクのようなので、
しゃべるバイクみたいなものと理解すればいいかな。)
キノは、彼の生まれた国に来て、
その国の初代大統領の記念館を訪れていた。
かつては旅人だった、初代大統領。
不必要に神聖視されている様子を、エルメスが皮肉っている。
記念館の奥にひっそりと飾られているのは、
きれいに磨かれたモトラド。
もう話をすることはないと、案内の女性は言うが、
エルメスはモトラド同士で話をしてみたいという。
女性が出ていった部屋で、飾られたモトラドは話し始めた。
「走るための自分が、こんなところにいるのは地獄だ」
記念館から出たキノは、旅人になりたいという子どもの問いに、
こっそりあることを教えた。
それから数年後、努力して警官になった彼は、
記念館の警備につく。
年に一度の大掃除の日、モトラドを盗んで、彼は旅人になった。
走るためのモトラドを、ぴかぴかに磨き上げて
満足している人たち。
旅の話をするのに、旅人なんかになるんじゃない、
としかる両親。
正しいことをしていると思ってる人たちに対する、
無言の問題提起があるような気がする。
キノという旅人、
外部者の目を通して
人間の矛盾を描き出す短編集ということですが、
世界観がしっかりしてるのがいい。
イラストも好き嫌いがあるとは思いますが、
かわいらしくて見やすいです。
人気があるのもわかるなあ。
それぞれが独立している話だそうなので、
気楽に集められそうです。
私も読んでみようと思っています。
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話題の小説系
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2006年10月19日
オダギリジョー主演で映画になっています。
著者はその映画監督。
映画は観ていないのですが、小説だけでも十分楽しめます。
ミステリーとしてもなかなか。
この季節にはぴったりの一冊でした。
舞台はある地方都市。
小さなガソリンスタンドを経営する一家のお話。
主人公は、頑固な父に反発して東京に出、
カメラマンをしています。
スタンドを継いだのはおとなしい兄。
華やかな主人公の暮らしと違って、
地味な兄の生活がしのばれます。
登場人物のモノローグというかたちでお話はすすんで行きます。
法事で家に帰った弟。
支配的な父に素直になれず、
法事の席でも怒鳴りあってしまう二人。
間を取り持つように、兄は弟をドライブに誘います。
スタンドで働く女性、智恵子も一緒に。
幼馴染の智恵子は、数年前からスタンドで働いていて、
もはや家族の一員といってもいいほど。
なんとなく、ぼんやりと、兄のお嫁さん候補と
周囲は認識しています。
けれど、智恵子は、実は以前弟と交際してたことを兄は知らない。
高所恐怖症の兄。
つり橋をわたる二人。
橋から落ちる智恵子。
目撃者の弟。
兄は自分と智恵子の関係を知っていた。
事故として処理されようとしていた事件を、
弟、智恵子、父、弁護士、スタンドの従業員が、
それぞれ語ります。
弟に対する嫉妬、葛藤。
智恵子をつり橋から、兄は落とした。
最後、刑務所から出てくる兄を迎えに行く弟の姿がいい。
ただ、ちょっと残念なのは、私の読解力の問題もあるとは思う
のですが、決定的な場面がないということ。
なので、最初、事故として終わらせようと積極的だった弟が
どうして、真実を話したのか。
ちょっと、ちょっとちょっと、あいまいなのが、
計算の上なんだろうけど、すっきりしなかったです。
読まれた方、いかがでした?
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話題の小説系
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2006年10月17日
小学生くらいの頃、
このシリーズはずいぶんと読みました。
なつかしい!
新作かと思って手にとって見るとびっくり。
3人ともしっかり中年になっていました。
元気たっぷりで、リーダーシップあふれるハチベエ、
おっとりした、ちょっと太った少年モーちゃん、
勉強ができる優等生のハカセ。
個性がバラバラな3人が、無人島に流されたり、
株式会社を作ってみたり、大活躍するシリーズでした。
舞台は稲穂県という架空の県の、花山第二小学校。
全部で50巻、発行された人気児童書です。
小学校6年生だった彼らも、もう40歳。
かつて、わくわくしながら読んだ私ですが、
読み進むにつれてなんだかがっかり。そして、ちょっと切なくなりました。
ハチベエはおうちの八百屋をコンビニにしました。
商店街もかつての活気がなく、店を閉めるところも。
大阪で鉄工所に勤めていたモーちゃんは、会社の倒産とともに
故郷に帰ってきましたが、仕事もなく、アルバイトをしています。
ハカセは、学校の先生になったものの、
やる気のない同僚に戸惑っています。
ああ、どんなトラブルにも負けなかった彼らも、
現実には勝てなかったのね。
ハチベエがすっかり女好きの中年になってるのに…泣けた。
さて、ストーリーはかつての怪盗Xが現役復帰して、
3人組に挑戦状をたたきつけるというもの。
Xは、アメリカに渡りセキュリティーの会社で起業していたらしい。
Xに狙われた名画を守るために、
3人は徹夜で絵を守ったのですが…。
すっかり生活にくたびれた3人ですが、ちょっと、ちょっとだけ
かつての輝きを取り戻す。
本のカバー裏に、今まで発行された全巻の表紙が印刷されています。
これが懐かしい!
全く余談ですが、釣りキチ三平の著者の方は、
平成版の三平くんを書いてくれ、といわれていったんは断ったそうです。
サラリーマンになった三平くんが、くたびれはてて、
余暇に釣りをやっている姿なんてみたくない、と思ったからだとか。
ズッコケ3人組は大人になりましたが、
三平くんは永遠に少年のままのようです。
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話題の小説系
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主人公敦は、脚本家を目指す30歳の男性。
現在、自動販売機の補充のアルバイトをしている。
トラックに同乗している女性は、離婚経験のある水城という女性。
今日でトラックを降り、総務へ移るので、
6時に仕事を終えるべく懸命に街を回っている。
敦は、近々離婚届けを出すことになっている。
水城との会話で、過去を振り返るというストーリーだ。
結婚相手の女性は智恵子といい、学生時代からの付き合いである。
脚本家を目指す敦は、卒業後、就職をしなかったので、
二人の生活を支えていたのは智恵子の働きだった。
智恵子もそれを望んでいたはずだった。
が、しかし、智恵子は職場での人間関係につまづき、
二人の間に生まれていたひずみが、智恵子を苦しめる。
次第に病的になっていく智恵子。
必要でもないアナウンサー養成セットみたいなものを買ってきたり、
家に遊びに来た敦の友人が、
歯ブラシを使ったといってわめきだしたり。
「あっちゃんばかり好きなことしてずるい」
かといって、敦だって好きなことばかりしていたわけではない。
次第にわかってくる自分の才能の限界。
自分の夢に寄りかかってくる智恵子を、
支えきれなくなっていたのも事実。
二人は離婚を決意し、以前にデートした場所を巡る。
ここで、お互いのいやなところを笑いながら言い合うんだけど、
なんとも、なあ。
ちなみに、夏の時期に
自動販売機の補充を日のあるうちに終えるのはとても難しいことらしい。
たくさん売れますもんね。
それにこだわる水城は、実は今日、
再婚相手と食事をする約束があったからだった。
離婚する敦と、再婚する水城。
最後に浮かび上がる対照も、作者なりの「しかけ」なのかな。
ラストシーンで、社にもどった敦は、社員に
「遊んでるんじゃないぞ」と声をかけられます。
今までだって、そう、脚本家を目指していた結婚生活だって
「遊んでいることなんてなかった」。
若い夫婦の挫折。すれ違う男女の思惑。
それに加えて、主人公が30代のフリーターというのが
とても現代らしい小説。
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話題の小説系
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昨年映画になった、
フライダディフライでおなじみのゾンビーズシリーズです。
ゾンビーズというのは、都内のある
落ちこぼれ男子校に通う男の子たちのグループ。
命名の理由は、
「偏差値が血圧だったら死んでいるから」というのと、
「殺しても死なないから」。
主人公はお嬢様高校に通う女子高生、佳代子。
家庭教師に来てもらっていた、大学生の彩子が自殺する。
あこがれの女性だった彩子の死にショックを受けた佳代子。
彩子と親しかったという中川という学生に会ったことから、
佳代子に危機がせまる。
中川は、彩子の死に関係があり、
佳代子がその証拠を持っていると勘違いしているのだ。
襲われた佳代子を偶然助けたのが、ゾンビーズの面々でした。
親友をなくしたばかりの彼らは、
「理不尽な力で親しい人を奪われた」佳代子に同情し、
自殺のナゾを解くべく、動き始めます。
フライダディフライでも、主人公の鈴木さんが、
彼らとつき合うことで、平凡な日常、戦わずに生きてきた自分と対立し、
新しい世界を切り拓く様子が描かれていますが、
今回もそれは同じ。
作者の熱いメッセージがこめられています。
大学で開かれる学園祭の裏で動く巨額のお金。
それを手にするのは、実行委員長である中川。
彩子の死の真相は、中川の野望に基づいた陰謀のせいであった。
それにしても、この作品でも彼らは元気です。
作戦指揮官の南方。
佳代子に戦いを教える喧嘩の達人朴舜臣。
女性に強い情報屋、アギー。
いつもハズレくじばかりひく山下。
偏差値が低く、また人種的なことでも、
日本社会では、システムの外にいる彼ら。
その彼らが、システム自体から
自由に生きようともがいている姿勢が、
佳代子を変えていきます。
ラストシーン、学園祭の大学に乗り込んだ佳代子は、
中川の手によって教室に監禁されてしまいます。
体育会系の学生と戦って、佳代子の窮地に現れるゾンビーズ。
かっこよすぎ。
女子高生を主人公にすることで、
どんどん前に走っていく男の子たちと、
がんばってみても、一緒には走って行けない
女の子の切なさも描いています。
ユーモアあふれる文章、ハラハラドキドキの展開、
そして何よりキャラクターの魅力に、文句なし、楽しめる一冊です。
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話題の小説系
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2006年10月03日
田舎の町の中学校の終業式から、物語が始まります。
同じ中学に通う5人の男の子たち。
幼馴染だけど、家庭環境とか、将来のこととか、
そろそろ一緒ではいられない時期にさしかかっているのを
うすうす気がついている。
いつもどおり過ぎていくはずだった夏休み。
だが、鳥羽の家で事件は起こった。
父親との口論をきっかけに、なぜか友人たちとの
「東京」への家出が決まった。
ちょっと不良っぽいファッションが好きな鳥羽。
母子家庭の長男前橋。
裕福な家庭の子どもで、あだ名がガリ勉という坂神。
家の商売をつぎたくない三浦。
明るい口調の、軟派少年森崎。
初めての大都会に戸惑う5人。
5人にとっては東京は、ただの東京都ではなく、
何かを変えてくる町に思えたんだろうな。
宿がないので、ホームレスのいる公園に泊り込み、
そこにいる人たちの姿を見る。
空き缶拾いをして、初めて仕事の意味を知る三浦少年。
なんとか建設現場の仕事にありつき、
5人は閉館間際の旅館に宿を取ることに成功。
おかみさんや、現場で働く人たちとの交流で、
子どもだった5人はちょっとだけ大人の世界を知ることになる。
家に帰って、それぞれが家族との和解にいたるシーンが
さわやかです。
エピソードがたくさんの割に、
ちょっと言葉が足りないところが難という感じがします。
出版社さんとの兼ね合いによるらしいですが。
まだ若い著者さんです。
今後のますますのご発展を期待、楽しみにしています。
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話題の小説系
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宮崎あおいさん主演で映画になっています。
主人公中原みすずは、幼い頃母親に捨てられてから、
親戚の家をたらいまわしにされて育った。
最後に引き取ってくれた家も、決して愛情豊かな家ではなく、
居場所のない思いを持って過ごしている。
良家と言われる家の男性と、駆け落ちのようにして結婚した母。
親戚の、母に対する憎しみを転化されるようにして育ちます。
ある日、新宿御苑で男に襲われそうになったことが
トラウマになっている。
そんなみすずだが、喫茶Bにたむろする学生たちには
仲間として受け入れられていた。
時代は学生運動の盛んな60年代。
学生運動にのめりこむ若者もいれば、
Bに居ついている「不良」学生もいる。
コルトレーンやマイルス・デイビスを論じる学生たちに
時代の空気を感じます。
私はもちろんその時代を知らないんだけど、
うっくつした、不安な感じがよくわかり、
小説の中に引き込まれます。
この小説も回想劇で、ナラタージュのときも思ったんですが、
活字の選び方がいいですね。
細い明朝体で、なんとなしに寂しい、
はかなげな感じが本全体から出ているのもいい。
Bにいつもいる学生の中で、
リーダー格の二人が岸と亮。
岸はある日、みすずにある計画を持ちかける。
警官のふりをして、現金輸送車をのっとるというもの。
昭和の大事件でありながら未解決の、あの3億円事件です。
初めて人に必要とされた喜びに、
けなげにも一生懸命単車を練習し、地理を覚えるみすず。
みすずに対して、ある感情を抑えている岸。
初恋、というよりも、ほんとうに純粋に、
岸に向かっていくみすずがなんとも言えず切ない。
雨の降っていた当日、警官に変装したみすずは、
輸送車の前にたちはだかる…。
みすずに恋をして、
不器用なアプローチのため自殺する男と岸の関係。
そして岸の、不器用で、当時のインテリらしい恋。
亮とみすずの関係。
最後に種明かしみたいにいろんな人間関係が
どっと明るくなるところも、
ある程度読めはするものの、
小説としてのうまみになっている。
それと、お気づきの方もいらっしゃるでしょうが、
主人公と作者の名前、同じなんです。
手記というかたちをとっているのかな。
心をしっとりとさせたいときに、手にとって損なしの一冊。
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話題の小説系
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2006年09月14日
第135回直木賞受賞作品。
帰り電車の中で読んでいて、涙ぐんでしまいました。
6つの短編集です。
どれも、あんまり器用でない人たちを描いている、
切ない作品でした。
簡単に概略を。
器を探して
ケーキを作らせたら天才的なヒロミと
主人公は、ヒロミを支える秘書的な女性。
クリスマスイブ、恋人とのディナーを予定している彼女は、
突然岐阜県への出張を命じられる。
次の新しい作品を載せる器を探してきて、というもの。
器を探すという地味なテーマですが、
最後は読後感もすっきりした素敵な作品。
犬の散歩
捨て犬の飼い主を探すというボランティアをしている女性が主人公。
犬にかかる費用を捻出するために、スナックで働いている。
子どものいない夫婦とその義理の両親、スナックに来るIT社長。
みんな優しい人間で、おかしく、ほんわかした一作。
守護神
大学の社会人クラスでは、
レポートを代筆してくれる女性のうわさがあった。
単位を落とさないために彼女を探す主人公。
だが、彼女が代筆を引き受けるのは、
彼女なりのポリシーに見合う人間のものだけ。
行き詰る会話から、
本当の自分の目的を取り戻すシーンがおもしろい。
タイトルの守護神って、二宮金次郎のストラップなんですよ。
ちょっと欲しいかも。
鐘の音
一番好きな作品。
回顧録というかたちで物語は進みます。
芸術家肌で、人付き合いもうまくなく、
周囲に溶け込めない仏像修復業の男。
ある寺で、ひとつの仏像に心を奪われる。
あまりの思い込みがかえって親方の反発を招き、
とうとう修復の大事な部分からははずされてしまう。
仏像よりも寺の鐘を愛する村人に、いらだつ男。
そんな彼は、
付き合っている女性から子どもができたと打ち明けられる。
世俗を厭い、仏像にすがる彼。
その思いあまってか、修復の最後の日、仏像の指を折ってしまう。
それがきっかけで、修復の仕事を捨てることになった彼。
かつての同僚を訪ねた彼が、かの仏像の真実を知ります。
それは、実は仏像ではなく観音であったこと。
指を欠いたことで、結果的には女性と結婚し、
子どもを育てたのは観音の思し召しであったに違いないという同僚。
「子どもを殺さずにいてよかったと思うんだ」と答えた男は、
もうかつての純粋で不安定な青年ではありませんでした。
別れ際に、今からどこへ行くのかとたずねられた男。
この最後のせりふで、電車の中にもかかわらず涙してしまいました。
「おれは昔から鐘の音ってのが嫌いだった。
いまから、娘の鳴らすウエディングベルってのを
ききに行かなきゃいけないんだよ」
あと二編はAに続きます。
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話題の小説系
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思わず二回に分けてしまった、
風に舞いあがるビニールシート。
短編集で、どれも味のある作品なので、
お手すきの折にご一読いかがでしょうか。
力不足ですが、概略をご紹介です。
ジェネレーションX
クレーム処理のために、
取引先の若者と県外に車で出かけることになった主人公。
となりに座った彼は、車に乗ってからずっと携帯で友人と話をしている。
どうやら、週末に同級生が集まる会の打ち合わせをしているらしい。
集まれない同級生がいるらしく、
携帯はひっきりなしになっている。
若者と携帯というシチュエーションにいらだちながらも、
話の内容に引き込まれていく主人公。
かつての野球部のメンバーが集まり、野球大会をするのだが、
出てこられないという友人がいる様子だ。
主人公は実はもと野球部で、甲子園出場をした選手だった。
「大人になっても、その日だけは子どもでいたい」という
若者に共感する主人公。
「シラケ世代って、何考えてるのかわからなかったんですが、
かっこいいっすよ。」という若者にとっても、
主人公はジェネレーションXだった、という話。
ほのぼのした一本。
風に舞いあがるビニールシート
表題作。
主人公は国連事務職員として東京の事務所に勤務している。
かつての夫、エドが、アフガニスタンで勤務中に死んだという
ショックから立ち直れずにいる。
一年に一度しか会えないこと、
いつも危険にさらされているフィールド職員を待つ不安から、
離婚していた二人だが、
かえってそれが主人公を苦しめていた。
東京で、内戦のない平和な国で、夫婦生活を送りたい主人公。
安定や、平和から逃げるようにフィールドに出て行くエド。
お話の最後の方で、
エドが家庭というものに何の希望も持てなかった理由も、
少し描かれている。
エドの最期をきくことで、
主人公はフィールドに出ることを決意する。
押さえても押さえても、風に飛ばされるビニールシート。
フィールドで行う活動が対処療法にしかならないことを、
エドがたとえたせりふ。
これがタイトルになっている。
泣きたいとき、感動したいとき、気分を変えたいとき、
手に取るならこの一冊。
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2006年09月07日
ニュース番組で、連日北朝鮮関連のニュースが流れています。
本のタイトルにもあるイージス。
ニュースでもこの言葉がきかれますが、イージスとは何ぞや。
ネットで検索したところ、
「イージスシステムとはレーダーで目標物を察知し、
それを処理(攻撃)するシステムの1つ。
コンピュータにより発見直後から多数の目標物に対し、自動的
に兵器を選んで対応するという点でより防空能力が高い」(オールアバウトより)
ストーリーは、このイージス艦について発表した
防衛大学生の論文から始まります。
経済発展だけを遂げ、中身のない日本を守るイージス艦は
「亡国の盾」であるというもの。
彼を危険視した防衛庁の秘密組織ダイスは、
彼を事故に見せかけて謀殺します。
それにつけこんだ北朝鮮の工作員、ヨンファは、
彼の父親であるイージス艦艦長宮津とともに「いそかぜ」を乗っ取る。
アメリカ軍が偶然にも作り出したグソーなる爆薬を、
首都に打ちこむべく、いそかぜは東京を目的地として進む。
高級士官によるクーデターを阻止すべく立ち上がったのは、
いそかぜを何より知っている専任伍長の千石だった。
いそかぜに潜入したダイスの工作員、如月行とともに
士官、北朝鮮の工作員と戦う千石。
とうとう、いそかぜはその姿を東京湾に現した…。
映画にもなっている大人気作です。
(ちなみに、映画だけを観たら消化不良になります)
この小説のおもしろいのは、
それぞれの登場人物の背負う過去が、とても密に描かれていること。
仕事に逃げることで、家族から孤立する千石。
優秀な兵士ではあるが、孤独を抱えている如月。
政治家、自衛官、ダイスの工作員や長官、北朝鮮の工作員も
単なる悪役ではなく存在感をもって描かれている。
どうしてこの小説をもう一度、と思ったかというと、
ヨンファの(映画のCMで、中井貴一が言ったキメ台詞)
「よく見ろ、日本人。これが戦争だ」。
この台詞が、今の日本に突きつけられているような気がして。
クーデターを起こしたいそかぜに対して、
他の自衛艦が攻撃できず、ミサイルを打ち込まれるシーンがあります。
「そちらから撃つことはできまい」と、
かつての友軍攻撃のスイッチを押す宮津。
戦力でありながら、
それを否定され続けた自衛隊の皮肉をついているようです。
戦争はもちろん反対。
でも、危機感を持つことを、ちょっと忘れていなかったか、
と思うのです。
まあ、福井さんの作品には、彼の国家感というか
思想がたっぷり行をつらねていて、
実はその辺を読み飛ばすことも多い私なので
あまりえらそうには言えないのですが。
グソーが発射されるまでのハラハラドキドキを楽しみつつ、
ちょっぴり北朝鮮とか、日本に対しても考えさせられる本。
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話題の小説系
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もともと涙もろい私。
読むにつれて、ほんとうにぼとぼと涙を落としてしまいました。
フランスでベストセラーになった本だそうです。
著者、ティムは、3歳で母親に電柱に縛られ、捨てられます。
母が去ったあと、アルコール中毒になる父。
イコロイインディアンの血をひく勇敢な男性でしたが、
妻に捨てられたストレスを、
暴力というかたちで子どもにぶつける日々。
やがて再婚したものの、虐待は日々ひどくなります。
足の骨を砕かれ、ソーシャルワーカーの手で
病院に入れられたのが4歳。
誰の見舞いもなく、7歳までを病院で過ごします。
他の子どものお見舞いのプレゼントの包装紙をこっそり手に入れ、
それだけを心の支えにしていたという悲しい日々。
退院したものの、行く場所もなく孤児院に入ります。
そのとき、近くにあった美しい白い家に、
彼は「幸せの家」と名づけました。
架空のものに慰めを見出すものの、
実際の救いはなく、やがて少年院に。
まわりの大人のひどい仕打ちに、脱走するものの、
仕事もなく売春をしたり、悪い仲間と付き合うようになります。
転機となるのが、人間味のある判事との出会い。
初めて彼に人間として接してくれた判事のために、
更正するために石工の仕事を始めます。
それから、ボクシングをはじめ、
チャンピオンになるものの精神的には満たされない日々。
彼の人生を救ったのは、クリスチャンの人々でした。
社会的に恵まれない人たちの暮らす共同体に入り、
愛すること、赦すことを教えられます。
神父さんたちの赦しに触れて、戸惑い、
何度も昔の自分に戻りそうになるが、
決して自分の弱さから目をそむけず、
精神的に立ち上がる主人公の強さ。
そういう人間をだめにしてしまう大人たちの恐ろしさ。
涙なしにはページをめくれませんでした。
やがて、上流階級の娘と恋をし、
立場の違いに戸惑いながらも結ばれる。
その娘は、彼が幼い頃心の支えにしていた「幸福の家」の娘だった。
実話なので、きれいごとだけではなく、
著者の葛藤がありありと描かれている。
性欲、復讐心、ぎこちない両親との面談。
愛すること、赦すことの大事さと大変さを教えてくれる本。
マザーテレサの逸話も出てくるのですが、
クリスチャンにはこんな心の立派な人が、現在もいるんでしょうか。
どうしたらこんなに強くなれるんだろうか、
とふと自省もした一時でした。
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話題の小説系
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2006年08月31日
ずいぶんと古い小説なんですが、
映画化されるときいてご紹介させていただくことにしました。
私、この小説大好きなんです。
映画は、主演がTOKIOの国分太一さんだそうです。
主人公は着物を着た落語家なんですが、どう演じるのか楽しみですね。
登場人物がユニークで、涙あり、笑いあり、最後はほんわかする、
「元気になれる」小説。
不器用ながら、恋愛も最後はハッピーエンドで、
やさしい気持ちになれることうけあい。
さて、ストーリーはというと。
主人公は、今ひとつ伸び悩んでいる落語家三つ葉。
どこをどうしていいのかわからず、成長できずにいる彼に、
落語教室の依頼が舞い込んできます。
集まった生徒たちは、みんなおしゃべりに問題を抱えています。
あがり症のため、テニスコーチの職を失いそうな従兄弟の良。
関西弁のせいでいじめられている小学生の竹林。
(舞台は東京です)
無愛想のせいか、
恋がうまくいかないクロネコみたいな女の子、十河。
解説者として第二の人生を歩みたい、元プロ野球選手の湯河原。
みんな、不器用で、根はいい人なんだけど、
いや、いい人すぎるせいで饒舌に口が回らない。
「あんた、しゃべりのプロだろう」ということで
集まる4人ですが、三つ葉にできることは落語を教えること。
それぞれの問題が浮き彫りになり、
少しずつへんてこなチームワークが生まれてきます。
竹林のために野球を教える湯河原だが、
野球で見返そうとする試みは失敗。
余計に孤立してしまった彼は、
クラスメイトを落語の発表会に招待します。
関西出身の小学生と、東京で劇団女優だった十河の、
「まんじゅうこわい」東西対決がクライマックス。
結局最後まで、みんな饒舌にはならないんだけど、
それぞれに少しだけ前進していく。
さて、若い落語家さんの知人、友人がいらっしゃる方、
おられます?
私はぜんぜん知らない世界だったんですが、
この本には落語界の様子もよく書かれていて、こちらもおもしろい。
人間関係に疲れてしまったとき、もしかしたら登場人物の誰か
に自分を重ねて読めるかもしれません。
そうしたらきっと、最後には明るい何かが見えるはず。
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話題の小説系
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福井晴敏さんといえば、
亡国のイージス、ローレライなどのヒット映画の原作者。
日本を憂い、自衛隊をテーマにした作品をヒットさせています。
その福井さんが、今度はガンダムをテーマに本を書いています。
文庫が先に発売されたようで、こちらは愛蔵版、ぶ厚い単行本です。
テーマは、アニメ作品でもあるターンAガンダム。
シャアもアムロも亡くなってから2000年。
核兵器で一度滅亡寸前になった地球は、
科学技術を忘れた人間が畑を耕しながら過ごしています。
宇宙に殖民していた人たちは、ひっそりと月に人工都市を作り、
いつか地球に還る日を待っていました。
地球環境を調べるために、
体内にセンサーを埋め込まれて地球におろされた
ロラン・セアックという少年が主人公。
他の仲間二人と地球に降りたロランは、
鉱山主の家庭に拾われ、仕事をしています。
ある日、月から月の人ムーンレィスたちが
宇宙船に乗って地球に降りてきます。
月の女王ディアナは、平和的な地球殖民作戦を願っていますが、
いろんな人間の思惑から、地球側と月は戦闘状態に入る。
今回も、たまたま主人公が、隠されていたターンAガンダムを
見つけ、乗り込みます。
女王ディアナと瓜二つの娘、鉱山主ハイム家の令嬢キエラが
入れ違い、事態を複雑にさせていく。
アニメは見ていないので、違いがあるのかわかりません。
が、ディアナの地球降下作戦が、
時を越える恋愛に起因するものであったり、
地球側の指導者グエンが、
ひたすら闘争を目指すのが過去のトラウマであったり、
人間の業みたいなものが書かれています。
黒歴史、と呼ばれている過去の地球の歴史や
懐かしいララァのせりふ、
ロランが実はニュータイプだったりと、
ガンダムの歴史はつながっているんだ、と思わせるエピソードが
沢山でおもしろかったです。
そして、福井作品には必ず出てくる爆薬「グソー」も
お目見え。
まあ、うちのだんなに言わせれば、ガンダムはファーストガンダ
ム以外は存在しないそうで。
ガンダムに「インスパイアされた」
福井作品として読むのが正解のようです。
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話題の小説系
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2006年08月28日
昨年大ヒットした恋愛小説ですが、ようやっと読んできました。
ナラタージュ。
回想という意味だそうです。
実際に、結婚を控えた主人公が
ひっそりと思い出す20歳の恋を描いた小説でした。
主人公泉は、婚約者とともに新居を見に来ている。
なぜ結婚しようと思ったのかとたずねる泉に答える婚約者。
「きっと君は、この先、誰と一緒にいても
その人のことを思い出すだろう。
だったら、君といるのが自分でもいいと思ったんだ」
高校時代、演劇部に所属していた泉は
社会科の教師、葉山に恋心を抱いていた。
葉山は結婚に失敗し、泉の気持ちを受け入れられないという。
だが、過去から開放されない葉山は、
気持ちの通じ合う泉を、特別に感じている。
卒業式、泉にキスをするが、
それでも教師と生徒の関係を壊すことはしなかった。
それから数年後、演劇部の発表会のため、
OBが集まることになった。
泉も久しぶりに葉山と会い、かつての気持ちが蘇える。
だが、葉山は決して一線をこえてこない。
互いに惹かれあっているのは周りも気がついている。
が、泉は告白してくれた小野と付き合う。
葉山の影に苛立ち、傷つけあう小野と泉。
そして、高校生の自殺をきっかけに
自分の気持ちにウソをつけなくなった泉と葉山は結ばれる。
しかし、葉山は実はまだ妻と離婚しておらず、
最終的には妻を選ぶ。
二度と交わることはない二人。だけど一生忘れない恋。
ひっそりと、だけど密に恋しあう二人。
文章よし、しとやかに降る雨のような小説です。
× × × ここから本音トーク × × ×
30代の自分には受け入れづらい小説でした。
ここから読みたくない人は読まないでください、すみません。
文章はうまい。今の若い人の文体ではなくて、
本当にしっとりにおいたつような描写で読ませます。
でも、葉山という教師にどうしても感情移入できないの、
おばさんは。
嫁姑関係でしくじった葉山。
嫁さんが姑を殺そうとするまで姑の肩をもち続けるって、
これは最悪でしょ。
それをトラウマに持って、
女子高生に「甘えていたんだ」って、
それはダメ!
壊れそうな、とか一生に一度の、
とか言うほどの重い恋愛としては小池真理子の「恋」の足元に及ばず、
純愛というなら村山由佳の「天使の卵」の方が
恥ずかしいくらい楽しめる。
この小説を好きという若い人を、否定しようとは思わない。
だけど、これと同じことをしようとしていたら、止めちゃうよ。
もっと幸せになろうよ!って。
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話題の小説系
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週末に、ちょっとしたお出かけに、
かばんのすみに入れておきたい一冊。
手帳くらいのサイズ、厚みながらなかなか贅沢な本です。
「東京湾景」の吉田修一。
「対岸の彼女」の角田光代
「池袋ウエストゲートパーク」の石田衣良
エッセイスト 甘糟りり子
「イギリスはおいしい」の林望
「海猫」の谷村志穂
恋愛小説の大家 片岡義男
「センセイの鞄」の川上弘美
これらの、今もう思いっきり旬の作家さんたちが
車をテーマに書い短編小説集です。
こんな思い切ったことを誰がやったのか。
これ、自動車メーカーの日産が
TEANAのホームページで連載したものだそうです。
こんなオシャレな宣伝なんて、日産、
役員報酬がむやみやたらに高いだけのことはありますね。
ちぐはぐな性格の夫婦を描いた話。
失恋した姉とドライブに行く話。
本を読むためだけに旅に出た男の話。
娘を嫁がせて、二人だけになった夫婦の話。
短編小説って、短くて、登場人物も少なくて、
場合によっちゃあ小説に登場する背景も少なくて、
だけど読み終わったときには感情の小さな波がぽわっとできる。
どの小説にも、感情がふるえる一瞬があって、さすがさすが、
と思いながら本を閉じることができます。
久しぶりにドライブにでも行くかな。
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話題の小説系
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2006年08月23日
ライトノベルというジャンルがありますが、
表紙の絵を見るとそんな感じ。
かっこいい戦士と、金髪のかわいい王女、馬、剣。
いやあ、もう、わくわくする要素が全部詰まっています。
舞台は架空の大陸ミュールゲニア。
主人公レインは、平民出身だが、
その無敵の強さでサンクワールの騎士としての地位を得ている。
だが、その口の悪さから王とは折り合いが悪く、
敵国ザーマインとの戦では謹慎を命じられた。
だが、それは戦いに勝ち目がないと踏んだレインが
仕組んだことだったのだ。
レインの予想通り敗走するサンクワール軍。
王が殺されたことを知った王女シェルファは、
城を出、初恋の人であるレインのもとに向かう。
魔法の力で、敵軍に囲まれた親友を助けたレインは、
ザーマイン軍を国から追い出すために、
王女を旗印に戦いを仕掛ける・・・。
まあこんな感じのあらすじです。
「ぶっちゃけ」なんて言葉を騎士が使っちゃったり、
文章が口語っぽくて、そこは私としてはマイナスをつけたいところ。
頭が古臭いのかもしれないけど、
やっぱり文章を書くにはそれなりの言葉というものがあると思うから。
若い人の小説だな、という感は否めない。
ただ、口が悪いが戦略家であり、悲しい過去も持つレイン。
貴族で、人がよく平民であるレインとも親しくするラルファス。
いつもにこにこして人のよさそうな部下と、
美人なんだけどやや難ありの騎士。
王女もぼけっとしているようで、ものすごいチカラを持ってる、
などなど、登場人物がとてもはまりやすい設定になっている。
多分、長い間構想を練る期間があって、
たくさんのサイドストーリーもあるんだろう。
キャラクターがそれぞれしっかりしているので、
読んでいても飽きなかった。
作者は吉野匠さんという方で、
ホームページで小説を連載しはじめます。
そこで20万ヒットを誇ったというから、
この小説がどれだけ支持されたかたわかると思います。
なんせ無名の作家さんなんですから。
最後に正直な感想。
田中芳樹のアルスラーン戦記、これが好きな方にはおすすめ。
レインはもう続編2も出ているし、
アルスラーンの続編を待つよりこちらを読んでみてはいかがでしょうか。
というか、私も待ってるんですが。アルスラーン。
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話題の小説系
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2006年08月22日
もうご存知の方も多いと思います。
日経新聞の連載小説が単行本になりました。
あらすじはこんな感じ。
昔、ヒット作を出したものの、今ではいい作品も書けず、
作家としては過去の人である村尾菊治55歳。東京在住。
富山のおわら風の盆という祭りで、京都に住む人妻冬香と出会う。
二人は京都で結ばれる。
やがて、夫の転勤ともに東京に居を移し、二人の関係はより深く、
そして逢瀬は頻繁になった。
まあ、こんな感じのことが、ありったけの性描写で語られる。
下着は白がいい、いやつけないほうがいい。
ブランデーをたらしてみたり、浴衣の胸元に手を入れてみたり。
エロ雑誌に載っている、
あんなこともこんなことも繰り広げられる。
子どもをほっぽり出して、菊治と会うことをやめない冬香。
母親を巻き込んで、箱根旅行にまでも行ってしまいます。
えーと。
私、一応女性なんですが、ここまで恋愛中心に、
人間はなれるものなのか。
自分をかんがみてみると、はっきりいってそれは無理。
さてさて、そんな恋愛(?)街道まっしぐらの二人ですが、
突然の冬香の死によって、後半、二人の愛が世に問われます。
例によってセックスの途中に「殺して〜!」と叫ぶ冬香。
それまでにも、類似したことは言ってるのですが、
とうとう菊治は強く首を絞めすぎ、冬香は死んでしまいます。
それから、逮捕され、裁判にかけられる菊治。
法廷で二人の関係を「録音した」
ボイスレコーダーの記録を聞かせる菊治。
しーんと静まり返る人々。
そりゃあひくわ〜!
美しいが冷静な検事(女性)にも妄想を膨らませる菊治。
そして、
好きな男に素敵な愛と技巧で抱かれれば、
女はエクスタシーに導かれる。
これを理解できない男は女をエクスタシーに導いたことがない。
エクスタシーの頂点で死ねた冬香は最高の幸せだ。
それなのに菊治は殺人という罰を受けるなんて、理不尽で不当だ。
この論法で、菊治は法律の矛盾を訴える。
もうここまで来ると笑えます。
最後は8年の実刑を食らって、
「冬香、ここが君の与えた愛の流刑地なんだね」
前にメルマガに書いたときは、役者さんは役所広司さんという
うわさがありましたが、豊川悦治さんに決まりましたね。
私としては古谷一行がよかった、と今になって思いました。
みなさまの考える菊治、冬香役がありましたら教えてください。
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話題の小説系
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2006年08月11日
アメリカに行ったとき、
荷物の検査で上着はもちろん、
靴まで脱がされたのには閉口しました。
おまけに本当に小さいはさみまで没収されてしまって。
私みたいなのがこんな小さいはさみで
テロを起こすことができるとでも思ってるんだろうか…。
その点、メキシコは鷹揚だった…。
2001年のことだから、もう何年たつんだ?
遠い国のことだけれど、9.11のテロは、
今でも私たちの生活にその影響を落としています。
石油の値段は上がりっぱなしだし、
イラクでは戦争がまだ続いている。
飛行機に乗るのにも、持込できないものが増えたし、
空港はやたら厳重だし。
リービ英雄さんは、アメリカ人で、日本語で小説を書いています。
著書には、「英語で読む万葉集」など。
この本は、小説のかたちをとっていますが、
ほぼ著者の実体験といっていいと思います。
アメリカへ里帰りする飛行機に乗った著者。
禁煙でいらいらしているところへ、
飛行機がNYの空港に降りられないというアナウンスを受ける。
「アメリカは攻撃されました」と、
悲痛な口調のアメリカ人パイロットと、
事務的に今後の予定を述べる日本人フライトアテンダント。
結局、アメリカへの入国が禁止され、カナダの空港に降りる。
目的地ではない場所で過ごす数日の様子を書いています。
身内は無事だったものの、妹の知り合い、自分も知っている
女性がテロの犠牲になったことにショックを受ける。
文章自体がやや散漫としてるような気がする。
印象を、つらつらと書き連ねているような感じの本でした。
だからこそ余計に、テロからうけた衝撃を思わせます。
アメリカ人にとって、
9.11は「自分の国が始めて他国に攻撃された」事件です。
その後の反応がやや過剰防衛的に思わなくもないですが、
一アメリカ人の反応、心象を知るのにはおもしろい一冊。
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話題の小説系
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2006年08月04日
すばる文学賞受賞というふれこみと、
日常の中の戦争を描いたということで、
以前から気になっていた本。
読む機会があったのでご紹介です。
主人公はごくごく普通のサラリーマン。
何気ない生活の中で、ふと目にした広報誌で、
こんな記事を見つける。
となり町との開戦のお知らせ
開戦日 九月一日
終戦日 三月三十一日(予定)
開催地 町内各所
となり町を、通勤途中に通る彼は、
開戦の日も何事もなく会社に到着します。
いったいどこで戦争をしてるんだろうか。
周りには何の変化もないまま、次の広報誌に目を通します。
そこには「戦死者12人」の文字が。
やがて、となり町を通る彼に偵察部隊の指令が町から届きます。
会社を休むのには補助金が下り、
辞令を交付する当日には印鑑をお持ち下さい、
というなんだかとても役所的な指令。
拒否する理由もないまま、主人公は偵察隊として、
役所の役員の女性ととなり町に引越します。
中盤まで読んでも戦闘シーンはなし。
なんというか、戦争なんだけど、40年前に予算を組んで始まった
戦争という事業を淡々と、事務的にこなしていくという描写。
戦争推進室をつくり、室長を置き、
実際の戦闘に関してはコンサルティング会社が動いている。
二人で住む家に関しても、敵地拠点偵察業務から食事の作成まで、
業務分担表を作る徹底振り。
これはいわゆる「お役所仕事」に対する皮肉小説なのか?
そんなこんなでページが過ぎていく。
戦争の理由も、「予算を組んでいて、承認されたのだから」
とかいう変な理由。
んん??
二人がほんの少し恋愛感情みたいなものを持ち、
主人公の上司が、実は外国で特殊部隊にいた、というところく
らいがおもしろいところ。
しかし、全体的に見て描写不足である感が否めない。
これ、映画になるそうですが適当な恋愛映画にしないように。
だいたい、主人公と公務員の女性が肉体関係になるんですが、
そこにいたる心理もよくわからない。
著者は公務員の方だそうですが、
「物語の設定上、それが都合がいいので」という感じで
寝る二人のこの情熱のなさもきちんと描くこと!
結局最後まで、ぴしっとした印象の残らない本でした。
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